インナーチャイルド「内なる子供」と訳される。
具体的には子供時代の頃の記憶や心情、感傷の事を指す。
7年前心が壊れてカウンセリングを受けていた。
長い長い出口の見えない自分と向き合う時間。
インナーチャイルドを癒す必要がある。
その頃から言われてきたことだった。
一年間本気でインナーチャイルドに会いに行った。
祖母の大きな家の玄関にいつもつまらなそうに座ってる自分。
よく日焼けして白いワンピース。頭は男の子のように短く。
とにかく笑わない。さみしそうに誰かを待っている。一人。
いつ会いに行ってもずっと同じ場所にいて私を見ない。
それでも毎日会いに行った。声をかけて遊ぼうとしたり。
時には一緒にキツツキをぼーっと見てみたり。
花かんむりを作ったり、神社に散歩にでかけてみたり。
友達数人と一緒に遊んでみたり。
大好きなぬいぐるみの話をしたり。
大好きな絵を描いてみたり。
彼女はずっと笑うことなく。淡々と私についてきた。
何も話したくなさそうに。泣くでもなくとにかく無表情のまま。
何か月もそうして。。。
私はだんだんくたびれてきた。彼女に会うのがいやになった。
『この子はなにをやっても笑わない。断固だ。手におえない。』
そして私はその子のそばから離れた。何年も。忘れた。
今日。怖くていやだなと思いながら彼女に会ってみた。
変わらず祖母の家の玄関に白いワンピースで日焼けして…。
私が泣いてしまった。
ごめんなさい。
ずっとそばにいるって言ってごめんない。
彼女は泣きもしない。変わらない顔で私なんて見ていない。
認めてほしいんだね。
すぐにわかった。ここにいることを知ってほしいんだこの子。
毎日一生懸命にがんばっていることを認めてほしいんだ。
でも誰もいないんだね。
誰も見てくれないんだね。
男の子のような髪型にお父さんがした日。
鏡の前で「きれいな子に産んであげれなくてごめんね」とお母さんが頭をなでた。
「大丈夫。気にしてない。」泣きそうになったけど笑っていった。
自分は人が見てかわいくもない。つならない子なんだ。
習い事はだめだと言われていたから一人でバスケ、テニス夜になるまで。
誰も教えてくれないけどがんばっていた。
時々大人が見て笑う。我流でまちがっていて笑っている。
絵が好きだったけど。見てくれる人がいなかった。
おばあちゃんの家で黒板に泳いでる絵を描いた日。
『まあなんて上手』と祖母がうしろで言ってくれた。
うれしくて何回も何十回も黒板を消しては描き消しては描き…
祖母を呼びに行った。見てこれ見てこれ。
ただ一人いつもほめてくれる従妹がいた。
元気だ。賢い。かわいい。
おねえちゃんに会えるのが祖母の家に行く夏休み。
おねえちゃんは突然お嫁に行ってしまう。
さみしくてさみしくて。泣いているのに誰もいなかった。
一人だった。もう誰も私をほめてくれない。
それが夏の。
祖母の家の玄関だったんだ。
この子はそのおねえちゃんが遊びに来るのを待っている。
そのあと、おねえちゃんは結婚した人とそして子供とここに来ることになるのに。
ばかだな…そう思って泣きながらあきれて見ていた。
ばかだな。私がそばにいてもなんにもならなかったんだね。
頑固なやつ。信じた人しか待たない。
認められたい。今も自分の中に濃すぎるくらいある欲求はここからなんだ。
そして少々じゃ満足もしない。でもこの子強い子だ。甘えない。
何をしてあげたらいいか。毎日毎日ほめてあげても多分だめだ。
そばにいてくれてありがとうとも言わないだろう。
でも数年前にお手上げだと思ったのに今はわかる。
そしてバカだなとあきれている。
今の自分自身はこの子とそっくりなことにもあきれる。
地道だけどこの子をほめてあげようかな。
たぶん見透かされるから本心でほめてあげたいときに。
この子が満足そうな顔をしたり得意気な顔をしたり。
それができたら、今の自分はきっと少しつらくなくなるのだろう。
自分が大事だと今感じている人。
それはほんとに大事なのか。ほめてくれるその言葉が欲しいだけ。
離れてしまうことへ恐怖も。認めてくれる人がいなくなることへの恐怖。
私がこの子を認めてあげる毎日は私が私を認める毎日。
誰かを待たなくても。大丈夫。自分はいつも一緒だ。