ロック : 酒 車そして女

好きな音楽や本、映画などについてのエッセイ

Radiohead: in rainbow

2008-01-27 23:57:43 | Weblog
Radioheadの新作いいですね。

最近、不思議な男に会いました。また、最近、イスラムに関する本を読んでいます。この二つがくっつくと、なぜかRadioheadに行ってしまう。なんか滅茶苦茶ですが。

 その男はヨーロッパの人で、私の女友達の友人。東京の居酒屋で会ったのですが、死人が息をして歩いているようなひどく顔色の悪い人だった。こういうことを書くと、私の素行が疑われそうですが、彼は本国ではかなりのヤク中らしい。顔色の悪さはそのせいか?
 「俺がやっていることは、ヤク、売春と、全部イリーガル(違法)」とビールを飲みながら不敵に笑う。そういう言い方をするなんて、「なんか、かっこいい」と少し思いました。
 しばらくして、彼は「俺の頭の中にはアメリカのチップが埋まっている」とか言い始めた。最初は冗談だと思ったのだが、彼の表情はまじめ。私がきょとんとしていると、私の友人が「いや、彼はそう思い込んでいるだけなのよ」と日本語でフォロー。彼は日本語が分からないので、我々の日本語の会話は彼にとっては暗号みたいなもんで、彼が英語で「ロシアがそのうち攻めてくるぞ」とか言っている間、我々日本人は精神分析をしていた。まあ、つまりなんらかの精神疾患ということなんだが。

 イスラムの教祖ムハンマドは40歳まで普通の人だった。メッカの山で瞑想していたら「アッラー」の声がきけるようになった。預言が妻をはじめ一族の間で評判になり、彼は小さな都市国家を指導し、その後あれこれあって教えは中東地域一帯に広がる。しかし、そもそも彼が聞いたのはいったい何なんだろう?現代的な解釈をするならば、「アメリカのチップ」論議とどれほど違うのかということになる。

 Radioheadの曲は、極論をすれば「ここはどこ?私は誰?」みたいな世界がテーマである。
 日本の作家の村上春樹が「海辺のカフカ」でRadioheadを出しているように、トム・ヨークも村上を読んでいて共感しているとインタビューで語っている。
 トム・ヨークは確か「ねじまき鳥クロニクル」のことを語っていたのだが、この小説では東京・世田谷の「穴」にこもった主人公が空間を越えて、ある男を「殺害」する。
 村上さんの小説ではこのような「不思議」な現象が多発する。私が知るところではこの「不思議」な現象そのものは直接議論されず、文学的には「現代人の心の不安」と解釈されているのかもしれない。
 トム・ヨークさんの歌詞やRadioheadの音楽の世界観も「底知れない孤独」とか「現代人の心の不安」といった言説でしか語られていないと思う。
 しかし、ある視点(と、ぼやかしておこう)に立つならば、それをリアルに感じる人が山ほどいるようで、今回、そのヨーロッパの男を目の当たりにして、トム・ヨークさんにしろ村上さんにしろ「あっちの世界の話と関係してるのかな?」と思ったのだった。
 


トレインスポッティング

2008-01-06 23:45:32 | Weblog
映画のトレインスポッティングが公開されたのは1996年。地元の場末のきったない映画館で観た記憶がある。当時、この映画はかなり話題になっていて俺もえらい感動したんだが、作品としての評価は今となっては少々疑問な部分もある。
しかし、このサントラは今でもたまに聴くし、素晴らしいと思う。

実は、このサントラを買うまで俺はロックをまったく聴いていなかった。
ロックを聴きだしたのは中学生のころからなんだが、大学を卒業したあたりからロックのミュージックシーンがつまらなく感じられた。で、俺はレゲエとかブラジリアン・ポップスやボサノバにはまってしまい、「英米の民族音楽」であるロック以外に豊穣な世界があったんだなみたいなことを考えていた。
それで、たまたま映画を観て、サントラを買ったんだが、あまりの格好良さにまたロックに戻ってきた。何がよかったのかうまく説明できないが、俺がロックというかポップスを無視している間に、なんというか世界の秩序とか社会構造がまったく変わってしまったことをこのアルバムは気付かせてくれたんだと思う。アンダーワールドのボーンスリッピーの衝撃はすごかった。感覚が麻痺してしまうような音楽で、その後、時間がたってから「なんでこんな音楽が生まれたんだろう」とか、「なんでこの音楽はカッコイイんだろう」と考えた。その結論は「イギリスは壊れている」。俺、なぜか壊れているものに興味があって、後追い的に90年以降のイギリス、アメリカのバンドのアルバムを買うようになって、俺がロックを無視していた間にかなりの数のいいバンドが出ていることが分かった。
 まあ、しかし、ずっとロックを聴いていたとしたらサントラを買ったような驚きはなかっただろう。

ストゥージス:ストゥージス

2008-01-06 23:11:43 | Weblog
以前、バンドをやっていたとき、メンバー集めに苦労した。
俺は社会人になってからロックが急にやりたくなり、俺自身が素人だったので、昔からバンドやっていたような人になめられた部分もあったのかも。しかも、オリジナル曲もやろうとなると、人それぞれ趣味が違うので、なかなかいい人が現れない。以前、誰かが「メンバーを集めるのは結婚相手をみつけるより難しい」と言っていたけど、俺の場合もそうだった。(まあ、場合によりけりなんだろうけど)

こんな経験があるので、このバンドのファーストアルバムがいかにすごいか良く分かる。3曲目のWe will fallという曲なんて「こんなのいったいどうやって作ったんだろう」という気がする。イギー・ポップが「こういう曲作ったんだ」とか言ったときのメンバーの反応とはどんなものだったんだろう?普通は引いてしまうと思うんだが、多分イギー・ポップは押し切ったんだろうな。アルバム全体にイギー・ポップのわがままがあったような印象を受けるし、こういうファーストアルバムを出したレコード会社もすごい。

Can : Future days

2008-01-06 04:31:09 | Weblog
カンというかつてドイツで活躍していたバンドのこのアルバムに入っているBel Airという曲が非常に好きだ。20分ほどの長い曲で、この曲を十分堪能するのは時間がかかる!!!(といってもつまり20分なんだけど)。
 ボーカルはダモ鈴木さんという日本人。ダモさんのボーカルはへたうまだという評判らしいが、俺はそうは思わない。かなり上手なんじゃないかと。
 このアルバムが作製されたのは1973年みたいで、この時期に日本人がロックの歴史に名を残したバンドにいたのが不思議だし、その後、彼に続く日本人ボーカリストが世界では一人もいないのが不思議(しいて言えば、オノ・ヨーコさんなんだけど)。

 ロックを聴いていて、なんとなくカンに行き着いたんだけど、かなりはまりました。今のテクノとかプライマルスクリームがやっていることに陸続きな感じがする。もともとジャズをやっていたような人が集まってできたバンドのようで、ジャズ的なものがベースにあって、ロック的な世界にのめりこんで陶酔しているようなやばい感じ。コード進行的にはよく分からないんですが、普通ではありえないようなコード進行が突然入ってきて、いい意味で音楽が壊れているような感じがなんともいい。ドラムもかなりやばくて、ジャズぽいと言えば、そうなんだろうけど、それだけじゃ説明できないものがある。

ユリイカ ジム・オルーク

2008-01-06 01:47:56 | Weblog
これは個人的に単にヘーと思った話。
ジム・オルークを知ったのは数年前だと思う。
 当時、俺はバンドをやっていて、作曲もしていて、「知らない曲」が聴きたかった。知らない曲というのはへんてこな曲という意味で、なんでもよかった。なんで、へんてこな曲が聴きたかったかというとヒットチャートに乗るような曲があまりにつまらなかったから(今でもそうだけど)。自分の世界を広げたいという意味もあった。
 で、友人に薦められてジム・オルークのユリイカという作品を買ったんだけど、俺的には最初の曲を聴いただけでもういいやという感じ。当時としては、求めているいる作品とのベクトルが違っていたんだと思う。

それから月日が流れて。
 
たまたま青山真治監督の「ユリイカ」という映画をDVDで観た。この映画は簡単に言えば、バス・ジャックに運転手と乗客が遇って心の傷を負い、一般的な言い方をすればそこからどうやって立ち直るかという話。この映画については記憶がさだかじゃないんで、正確な評論はできないが、最後の場面で俺は映画の音楽に釘付けになった。
 九州の田舎のバス運転手が最後の場面で音楽を流す。確かラジカセで。その音楽が素晴らしかった。これぞ俺が求めていた音楽であった。それが誰の作品か知りたく、俺はDVDの最後の出演者とか演奏音楽とか出てる「字幕」を目をこらしてみていたら「ユリイカ ジム・オルーク」とあった。

 いやいやいやいやいや(と松本人志的リアクション)これ俺持ってるやん!自分の部屋のCDコレクションを探しまわり、「ユリイカ」を聴いてみたら、うわーーこの曲じゃーーーーーと感動しまくり。
 俺的にジム・オルーク評価は1から10まで跳ね上がりました。
 しかし、なんで買ったときジム・オルークの良さに気付かなかったんだろう。映画がよかったせいなのか、映画にはまっていたのか。
 そもそも、この映画のタイトルはなぜ「ユリイカ」なんだろう?哲学的「分かった」という意味なら、そうかな?という感じなんだけど。ジム・オルークのユリイカを最後に演奏したかったという意味なのかなとも思ったりもしてみる。そうじゃなくても、この曲はこの映画全体を背負うくらいいい曲だと思う。