2013.10.9(水)
『TRUE WEST~本物の西部~』
at 世田谷パブリックシアター
作 サム・シェパード
演出 スコット・エリオット
出演 内野聖陽/音尾琢真/菅原大吉/吉村実子
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2013/09/true_west.html
週半ばの水曜日。
先日、どこかの記事で、昨今は昼の部の芝居のチケットがよく売れていると書いてあったな。
たしかに演劇でもライブでも女性の動員数のほうが多いし、まして演劇の場合はチケット代も高くて若い世代には敬遠されがちだし。
週半ば夜の部は残念ながら満席ではなく、二階席、三階席には空席が目立った。
■行ったり来たりの兄と弟
アラスカ旅行に出かけた母親宅の留守番がてら、そこで執筆にいそしむ作家の弟。
そこを訪れる兄との久々の対面。兄は弟とはまったくタイプの異なる、粗野で肉体派の男。
その二人が、映画化の可能性のある作品の執筆にからんで、その立場を主張したり、あるときは二人の立場が逆転したりして、濃密な時間が過ぎていく。
使いやすそうにコーディネートされたキッチンとリビングで、男二人が繰り広げる暑苦しい芝居。
母親が穏やかに暮らしていたであろう、その明るくて整然とした空間が、芝居が進むにつれてどんどん息子たちの匂いと発する言葉と息遣いに姿を変えていくさまがヘンに愉快。
自分勝手な兄の言動に振り回されていたかに見えていた弟が次の場面では息を吹き返したかのように、強い言葉を発しながら兄を押さえつける。会話の主導権が兄と弟の間で行ったり来たりするおもしろさ。
たたみかけるように連なる言葉はただ勢いのままに発せられるように見えて、実は人が生きていくうえでのさまざまな表情を軽く語っていたりする。
会話劇のおもしろさを見せてくれた舞台。
■本物?
幕間に聞こえてくるのはコオロギの鳴き声、ときどきコヨーテ?の遠吠え。
これがなぜか効果的に響く。これってなんだろう?
昔は子どもらがわくわくする遊び場がそこらじゅうにあったようだけど、いまはもう気どった家々が並ぶ堕落した街・・・という雰囲気が兄弟の会話から垣間見える。
西部の砂漠で暮らしを語る兄、そのうち、自分も西部に行くのだと強く言い始める弟。
そこには「本物」があるのか。そう信じようとしているのか。
弟に首を絞められて、息つきたか・・・?と思わせた兄が突然起き上がった瞬間が芝居のラスト。
この兄弟は争いを続けながらも「本物の西部」を目指していくのか…そう思わせて暗転となる。
■母の目には?
最後の場で帰宅した母が登場する。
激しく争う、息子たちを見て、母はまるで幼い息子らを前にしているかのように、優しく言う。
「何をしているの。ケンカをするなら表でやりなさい」
それを聞いてわかるのだ。この兄弟はまったく違うタイプの大人に成長したようだけど、でも、大昔の幼い頃と変わらぬ諍いをいまだに続けているんだ、と。諍いはイコール戯れでもあるんだけど。
内野・音尾の兄弟がっぷりの芝居は見ごたえがある。
(「とんび」も記憶に新しいけど)
物語の派手な展開はないけれど、行き来する言葉の迫力は十分におもしろい。
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