八月の街

■八月の街

人の流れが　やわらかに揺れている
生まれたありかを確かめるように
友だちも　少し騒がしい隣人も
都会の空気をひきつれて　帰っていく

今朝の街は匂いをとりもどし
幼い頃の気配を思い出す
私と父と母がいて
おどけた弟に笑いころげた日々

一年にたった一度だけ
心の中で　思い出を転がせる
胸のどこかがチクッと痛んで
素直な私が再生される

私を許してくれるなら
私を見つけてくれるなら
大事な大事な誰かさんを
あきらめてもいいと　思える朝

人が再び戻るまでは
この街はしばし　追憶の場所
いつもの道にたたずんで
遠い景色をよみがえらせる

懐かしい人よ
心震える日々よ
たしかな姿をよみがえらせて
そして　静かに消えていけばいい