隠れ家-かけらの世界-

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「ごくごく普通」って…~『アメリカン・ビューティー』~

2007年04月28日 16時19分01秒 | 映画レビュー
アメリカン・ビューティー』(1999年)
-第72回アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞(スペイシー)、撮影賞の主要5部門を受賞-


●これが「ごくごく普通」っていうのも怖いような
 アメリカのごくごく普通の家庭の崩壊…。どこの解説にも、そう書いてあるけど、アメリカの普通の家庭ってこうなの?と聞きたい。わからないし。
 「仕事にもちょっと疲れて、家庭でも軽視されてる中年の夫+ちょっと外目を気にする、少々エキセントリックなやり手の仕事ウーマンな妻+背伸びしつつ父親を嫌悪するティーンエイジャーの娘」とくれば、アメリカに限らず日本のドラマでも「典型的な…」と宣伝されそう。
 解説やコピーには、軽く表面をなでただけのものが往々にしてあるものだけど、この「ごくごく普通」もその類でしょうか。

●リメイクなら、小日向文世さんで(笑)
 それでも映画自体はおもしろかった。深刻な内容なのに、適度に(いや、かなり)コミカル。異常にコミカル?
 なんといっても、主人公の夫レスターを演じるケビン・スペイシー(この作品で、アカデミー主演男優賞らしい)がいいよね。いい年なのに(って思われちゃう?)、妄想壁が最高。娘の友達の美少女に恋をして、頭の中はそれでいっぱいになる。ちょっと言い寄られると、もうすぐにその気になっちゃうような。こんな妖しげな父親は娘としたら No thank you. だけど、中年男の標本としたら研究の余地はありそう?
 日本でリメイクするとしたら、絶対に小日向文世さんですな(DVDでちょっとだけ日本語版を聴いてみたけど、声が彼そっくり。まさか吹き替えしてないでしょうねえ)。軽くて、ときどき急にキレて周囲を戸惑わせる。平凡なんだけど、内面にちょっと狂気をしのばせているような。
 妻のキャロリンを演じたアネット・ベニングもいい! きれいで賢くて、うるさくて勝手でわがままで。見ているにはおもしろいけど、こんな母親だったら、私はきっととっくに家出してる(笑)。
 こんな夫婦がいる家庭が「ごくごく普通」なの~? いや、まいったな、という感想です。娘のジェーン(ソーラ・バーチが小生意気で、でもけっこう深くて、そういう娘をステキに演じている)は、ひょっとして、「ごくごく普通」かも。アメリカではわからないけど、少なくとも日本にはいそうだな。
 その三人に、隣人の親子(威圧的な軍人の父親と、IQ高めという感じで世の中をなめて生きてるドラッグ売人の息子)やキャロリンの浮気相手の不動産王、そしてジェーンの友人でレスターを惑わせる美少女アンジェラがからんで、物語がスピーディーに進行する。

●コミカルなだけに…
 恋に落ちたことをきっかけにして、レスターはつまらない日常に反旗をひるがえし、上司を罵倒して会社をやめ(そのあとファーストフードでの気ままなアルバイトを選ぶところが、なんか秀逸だな)、アンジェラとの「いつか」を想定して筋トレに励む。
 女二人にびくびくしていたレスターは、言いたいことを言い始め、ときには激昂して怒鳴ったりする。びっくりして口を開けたままの妻、椅子に座りなおす娘。
 結局、レスターの夢はかなうどころか、最後は隣人の軍人男に銃で撃たれて死んでしまうのだけれど。
 一応は一生懸命に家庭を築いたって、必死で稼いで富を手に入れたって、心は満たされず。かといって、自分の意のままに生きようとしても、周囲との軋轢を生むだけ。
 ああ、家庭とは家族とは、一体何なんでしょうねえ、という映画なのか?
 うーん、ちょっとへこんできた。コミカルだったからよけいに、悲惨な THE END だな。


 「アメリカン・ビューティー」って、アメリカで開発されたバラの一種で、真紅の切花用の花のことらしい。
 そういえば、主人公の妄想シーンで、必ず真紅のバラの花びらが毒々しく舞うし、主人公の妻は庭で赤いバラを栽培してた。
 そういうことを知っていて観たら、またちょっとおもしろさが違っていたかも。

 また、隣人の軍人マッチョ男はふだんからホモを毛嫌いする発言を繰り返し、自分の息子とレスターがそういう関係に陥ったと誤解して抗議に行くわけだが、はからずもそこで、自らにそういう性癖があることを暴露してしまう。そこがなんだか悲しかったというか、「今風」だな、なんて思ってしまったのです。

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