2015.6.30(火)
【草 枕】
at シアタートラム
作 北村想
演出 寺十吾
出演 段田安則/小泉今日子/春海四方/山田悠介/浅野和之
http://www.yomiuri.co.jp/culture/stage/theater/20150529-OYT8T50030.html
久しぶりのシアタートラム。
あの狭い空間と固めの椅子が大好きなんだけれど、一緒に行った相方はあの椅子がちょっと苦手らしい(初めて知った)。
漱石の『草枕』をモチーフに、主人公の画工(段田)が山を歩き、例の温泉で出会った那美(小泉)との会話を通して、「美とは?」「美の強さとは?」と自問自答しながら追及していく。
『草枕』の内容や設定を忠実に追っている部分もあり、「智に働けば~」の有名な書き出しの部分がテロップとして舞台上に示され、その進み具合で主人公の内面の試行錯誤が進んだり戻ったりしていくさまが、その時間の流れとともに私たちに明らかになる。
舞台の最初と最後の場面で、主人公は『草枕』の那美のモデルとなったとされる女性、前田卓(つな)(小泉)をモデルに肖像画を描いている。
最初の場面では、「今の自分の技量ではあなたの美しさを描けない」と言って旅に出るのだが、最後の場面では、
「美の強さの前にあるものがわかった。それは憐れだ。自分ではなく人に対して抱く『憐れ』だ」
と言い、それによって、那美の美しさも卓の美しさも描くことができる。
それに対して、卓の言う、
「よい旅ができなのですね」
という、ある意味、小説『草枕』に忠実なしめくくりで、短い舞台が終わる。
台詞も、流れも、役者の動きも、すべてムダなものをはぎとったかのような進行で、短編小説のような舞台はカーテンコールとなる。
1回限りのあっさりしたカーテンコールのあと、心地よい段田さんの声で舞台の終了が告げられる(始まりの説明も段田さんでした)。
私は久しぶりに、潔く、無駄を排した、とても気持ちの良い舞台を観たように感じた。
セットがいい!
墨絵のような背景に照明で降る雨の激しさ。
黒子のみなさんが作り出す空間の変化。
蒸気機関車が出発するときの迫力とノスタルジックなライト。
そして何より役者が、セリフと動きと姿で見事に役を魅せてくれたこと、それがすてきだった。
段田安則の相変わらずの爽快な口跡といつのまにかこちらを話の中に誘い込む魅力、小泉今日子のコケティッシュなセリフと立ち姿の美しさ(舞台女優としての魅力を再確認!)、そして老婆から若い下女、老人、踊っちゃう床屋、最後は中折れ帽に着流しのかっこいい男までを魅力的にチャーミングに演じてくれた浅野和之。とくに茶店の老婆の演技は客席の笑いを誘いながらも、こちらをうならせる魅力あふれるものだった(ここだけでももう一回観たい!)。
段田さんと浅野さんの息の合った笑いを誘うやりとりも見事。
その名前だけでチケットをとりたくなってしまう・・・、私にとってそういう役者たちだ。
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