
■映画 「マグノリア」 (1999年作品)
ベルリン国際映画祭金熊賞
■監督 ポール・トーマス・アンダーソン
■出演 トム・クルーズ/ジェイソン・ロバーズ/ジェレミー・ブラックマン/マイケル・ボウエン/メリンダ・ディロン/のエマニュエル・L・ジョンソン/ジュリアン・ムーア/ウィリアム・H・メイシー/ジョン・C・ライリー/フィリップ・ベイカー・ホール/フィリップ・シーモア・ホフマン/メローラ・ウォルターズ
●導入が最高?
単純になにがおもしろかったか、って、導入部分です。導入部分で、おおっ!って思って引き込まれたんだけど、それをどこにもっていったらいいか、わからなくて。
導入部分は3つのエピソードからなっていて。要するに、こんな信じられないような偶然が世の中にはあるんですよ、っていう…。
中でもブラックユーモア的にグサッときたのは、屋上から飛び降りた青年が途中の階の窓から飛び出てきた銃の弾でお尻を撃たれる→その銃を撃ったのは夫婦喧嘩中の妻で、青年の母親だった→その銃はふだんは弾が入っていないのを母親は知っていたんだけど、両親の喧嘩に嫌気がさしていた青年が実弾をこめておいたもの→ビルの下には工事中の網が張られていたので、青年は飛び降りただけでは死なずにすんだかもしれない。つまり自分がこめた実弾で死んでしまった、ということ。
これは非常によくできた話だなあ、と映画の最初で感心してしまったというわけ。
●死を前にした老人から天才少年まで
本題に入ると…。要するに、十数人の男女(死を前にした老人から天才少年まで)の一日のさまざまなエピソードがいろいろにからみあって、話がどんどん進んでいく。
それぞれのエピソードは、とくに奇をてらったものという印象はないけど、でも平凡な人生というわけでもない。そのあたりが「いい」という人と「どうなの?」という人に別れる一つの部分ではあると思うけど。
でも私はオムニバス的なものはキライではないので(飽きっぽいからかな)、どんどん場面が変わって、いろんな「おかしな」登場人物が織りなすドラマ、という感覚ではおもしろかったです。
長寿クイズ番組の司会者、その彼に性的虐待を受けたと思い薬物濫用に走る娘、その彼女にひかれる警官、その警官に助けられる元天才少年で、今は同性の彼に恋をして苦しんでいる男。そのクイズ番組の現在の天才少年。そのクイズ番組の制作者で、今は死の床にいる男。その男の若い妻で、夫を失うことと、夫へのさまざまな裏切りへの後悔で自殺を試みる女性。死の目前にした父親のもとを訪れる「もてない男を救う教祖みたいな男」(このトム・クルーズのマッチョぶりと妙なテンションと、父親に捨てられたことへのトラウマとの関係が納得できる人には、彼の人生の深淵が見えたりするんだろうけど、そうでなければ、このトム・クルーズはただただ気持ち悪いかもしれない)。
…とそんな感じで、つながっているような、つながっていないような、そんな微妙な関係が映画の中心にあるわけです。
あまりにも伏線めいたものができすぎていると、こんなこと実際にある?ということになるんだろうけど、でもそういうできすぎたドラマも作り物と思えば、限りなくおもしろい。
でも、この映画はそんな感じではなく、それぞれの人物をある程度丁寧に描いているという点で、そのあたりは納得できたかな。
導入のエピソードがあまりにできすぎたおもしろさだったので、私はあんな感じを期待してしまったのかもしれない。あれは「人生」ではないんですよね。
●カエル??
そして最後が「カエル」です。
空から降ってくる、あの大量のカエルは一体なんですか? 見ていて、もうのけぞりました、ええっ、カエル?
その量たるや、ハンパじゃない。車の窓を突き破って入ってくるくらいの勢いで、雨のように降ってくる、そう、ホントに「降って」くるんです。
印象的だったのは、クイズの勝ち抜きの最後でおしっこをもらして敗退し、「ボクは一体なんなの?」と大人の理不尽さを訴えた天才少年。自尊心を傷つけられたはずの少年が、大好きな本に囲まれ得て窓の外を見ながら、ちょっとほほえんで言ったのだ、「そう、人生って、こういうことがあるんだよな」(「人生」と言ったかどうかは不確か。なんか、そういうようなニュアンスのことを言ったような気がする)。この天変地異?に、人々はちょっと救われたんだろうか。
カエルの雨はなかなか壮観で、みんな驚いてはいるんだけど、ま、呆然というくらいで、受けとめてしまっているのがおもしろかったかな。
ただ、さいごに警官が結論めいたことを長々と?語っていたような気がするんだけど、これはよけいだったような気がします。
【追記】
今、いろいろネットを見ていたら、「モーゼは、イスラエル人奴隷を解放しないエジプト王を戒めるためにカエルを大発生させ、エジプト中をそれで埋め尽くした」というエピソードが旧約聖書の「出エジプト記」にある、ということが書かれていました。今手元に旧約聖書がないので、わからないけど。
ここからきているのかな。だったら、人間を戒めるためのカエル雨? それとも、ここでいったんリセットボタンを押して、新しくやりなおしてみなさいよ、という神さまの優しい配慮ですか?
うーん、やっぱりわからないことだらけの映画でした。
ウィキペディア(Wikipedia)には、「松本人志は自身の映画評論連載『シネマ坊主』で、『この映画がわかった人は逆にアホです』などと酷評している」と書いてあります。
そうそう、こういう映画で3時間あまりの長さもちょっとね、という感じでした、私には。
【追記2】
エイミー・マンの主題歌がよかった。
歌詞は内省的だけどシンプルで、メロディーがポップで、映画の湿り気たっぷり?の雰囲気とは裏ハラで、それでいてシャープ。
ベルリン国際映画祭金熊賞
■監督 ポール・トーマス・アンダーソン
■出演 トム・クルーズ/ジェイソン・ロバーズ/ジェレミー・ブラックマン/マイケル・ボウエン/メリンダ・ディロン/のエマニュエル・L・ジョンソン/ジュリアン・ムーア/ウィリアム・H・メイシー/ジョン・C・ライリー/フィリップ・ベイカー・ホール/フィリップ・シーモア・ホフマン/メローラ・ウォルターズ
●導入が最高?
単純になにがおもしろかったか、って、導入部分です。導入部分で、おおっ!って思って引き込まれたんだけど、それをどこにもっていったらいいか、わからなくて。
導入部分は3つのエピソードからなっていて。要するに、こんな信じられないような偶然が世の中にはあるんですよ、っていう…。
中でもブラックユーモア的にグサッときたのは、屋上から飛び降りた青年が途中の階の窓から飛び出てきた銃の弾でお尻を撃たれる→その銃を撃ったのは夫婦喧嘩中の妻で、青年の母親だった→その銃はふだんは弾が入っていないのを母親は知っていたんだけど、両親の喧嘩に嫌気がさしていた青年が実弾をこめておいたもの→ビルの下には工事中の網が張られていたので、青年は飛び降りただけでは死なずにすんだかもしれない。つまり自分がこめた実弾で死んでしまった、ということ。
これは非常によくできた話だなあ、と映画の最初で感心してしまったというわけ。
●死を前にした老人から天才少年まで
本題に入ると…。要するに、十数人の男女(死を前にした老人から天才少年まで)の一日のさまざまなエピソードがいろいろにからみあって、話がどんどん進んでいく。
それぞれのエピソードは、とくに奇をてらったものという印象はないけど、でも平凡な人生というわけでもない。そのあたりが「いい」という人と「どうなの?」という人に別れる一つの部分ではあると思うけど。
でも私はオムニバス的なものはキライではないので(飽きっぽいからかな)、どんどん場面が変わって、いろんな「おかしな」登場人物が織りなすドラマ、という感覚ではおもしろかったです。
長寿クイズ番組の司会者、その彼に性的虐待を受けたと思い薬物濫用に走る娘、その彼女にひかれる警官、その警官に助けられる元天才少年で、今は同性の彼に恋をして苦しんでいる男。そのクイズ番組の現在の天才少年。そのクイズ番組の制作者で、今は死の床にいる男。その男の若い妻で、夫を失うことと、夫へのさまざまな裏切りへの後悔で自殺を試みる女性。死の目前にした父親のもとを訪れる「もてない男を救う教祖みたいな男」(このトム・クルーズのマッチョぶりと妙なテンションと、父親に捨てられたことへのトラウマとの関係が納得できる人には、彼の人生の深淵が見えたりするんだろうけど、そうでなければ、このトム・クルーズはただただ気持ち悪いかもしれない)。
…とそんな感じで、つながっているような、つながっていないような、そんな微妙な関係が映画の中心にあるわけです。
あまりにも伏線めいたものができすぎていると、こんなこと実際にある?ということになるんだろうけど、でもそういうできすぎたドラマも作り物と思えば、限りなくおもしろい。
でも、この映画はそんな感じではなく、それぞれの人物をある程度丁寧に描いているという点で、そのあたりは納得できたかな。
導入のエピソードがあまりにできすぎたおもしろさだったので、私はあんな感じを期待してしまったのかもしれない。あれは「人生」ではないんですよね。
●カエル??
そして最後が「カエル」です。
空から降ってくる、あの大量のカエルは一体なんですか? 見ていて、もうのけぞりました、ええっ、カエル?
その量たるや、ハンパじゃない。車の窓を突き破って入ってくるくらいの勢いで、雨のように降ってくる、そう、ホントに「降って」くるんです。
印象的だったのは、クイズの勝ち抜きの最後でおしっこをもらして敗退し、「ボクは一体なんなの?」と大人の理不尽さを訴えた天才少年。自尊心を傷つけられたはずの少年が、大好きな本に囲まれ得て窓の外を見ながら、ちょっとほほえんで言ったのだ、「そう、人生って、こういうことがあるんだよな」(「人生」と言ったかどうかは不確か。なんか、そういうようなニュアンスのことを言ったような気がする)。この天変地異?に、人々はちょっと救われたんだろうか。
カエルの雨はなかなか壮観で、みんな驚いてはいるんだけど、ま、呆然というくらいで、受けとめてしまっているのがおもしろかったかな。
ただ、さいごに警官が結論めいたことを長々と?語っていたような気がするんだけど、これはよけいだったような気がします。
【追記】
今、いろいろネットを見ていたら、「モーゼは、イスラエル人奴隷を解放しないエジプト王を戒めるためにカエルを大発生させ、エジプト中をそれで埋め尽くした」というエピソードが旧約聖書の「出エジプト記」にある、ということが書かれていました。今手元に旧約聖書がないので、わからないけど。
ここからきているのかな。だったら、人間を戒めるためのカエル雨? それとも、ここでいったんリセットボタンを押して、新しくやりなおしてみなさいよ、という神さまの優しい配慮ですか?
うーん、やっぱりわからないことだらけの映画でした。
ウィキペディア(Wikipedia)には、「松本人志は自身の映画評論連載『シネマ坊主』で、『この映画がわかった人は逆にアホです』などと酷評している」と書いてあります。
そうそう、こういう映画で3時間あまりの長さもちょっとね、という感じでした、私には。
【追記2】
エイミー・マンの主題歌がよかった。
歌詞は内省的だけどシンプルで、メロディーがポップで、映画の湿り気たっぷり?の雰囲気とは裏ハラで、それでいてシャープ。