「なつかしく謎めいて」という邦題がちょっときにいらなかったけれど、とても面白かった。
日本では「ゲド戦記」で有名なアーシュラ・ル=グウィンのSFファンタジー。
シータ・ドゥリープ式次元間移動法 が発見されたおかげで
人々は自由に次元間移動ができるようになった。
といってもそこには条件があって
強い苦痛、消化不良,退屈という三つの組み合わせが必要になる。
この三つを満たしているのが、空港での乗り継ぎの待ち時間。
この本に納めらているのは、異次元への旅行者たちの旅行記、体験談、レポート。
「玉蜀黍の髪の女」「眠らない島」「不死の人の島」は科学の力を過信し濫用した人類の愚かさを。
「アソヌの沈黙」「「謎の建築物」「四つの悲惨な物語」は侵略と争いの愚かさを
「グレート・ジョイ」は資本主義の末路を。
と言うようにそのどれもが奇想天外な設定でありながら、見知ったどこかの国の歴史のようでもある。
解説に「ギフト」の続編を執筆中と書いてあり
うれしくなった。
人の感情「怒り」「歓び」「安らぎ」「不安」「哀しみ」…が世界を作っているのであり
建築物、便利な道具は世界を構築するための補助的なものに過ぎない。
世界を元通りにするのは、人の気持ちをまっすぐにするのが先ではないかなと
この本を読みながら考えた。
メイ・サートンの自然描写はとても美しく
読んでいて気持ちがよかった。
七十代という未知の世界での心構えをたくさん教えられた。
日本的な年の取り方は
景色の中に溶け込むような、やわらかな感じがあるけれど
サートンのような生き方は
しっかりと自分の色を保って風景を支えている、そんな感じがした。
気に入った言葉をいくつもノートに書きとめました。
猫のブランブルと犬のタマスの姿が目に焼き付いている。