会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

社外取締役が自ら語る「報酬と実効性」のバランス(東洋経済より)

社外取締役が自ら語る「報酬と実効性」のバランス
モニタリング機能には限界、報酬はもらいすぎ

ある上場会社(記事ではX社)の社外取締役に、社外取締役の実態と課題を聞いた記事。たった1人に聞いただけなので、多くの上場会社に当てはまるかどうかはわかりませんが、参考にはなります。

東証一部上場のメーカーで社長を務めたことがある人だそうです。

執務の状況や報酬について。

「――X社での活動状況についてお聞きします。まず、取締役会の出席状況から教えてください。

佐々木(仮名):年13回取締役会があり、すべて出席しています。X社には社外取締役がもう1人いますが、全出席です。社外取締役の都合を最優先して取締役会の年間スケジュールを決めてくれるので、出席は問題ありません。

――取締役会はどれくらい時間がかかるんですか。

佐々木:だいたい2時間です。3時間を超えたことはありません。

――取締役会の2時間のほかに、毎月どれくらいX社のために時間を使っていますか。

佐々木:基本は取締役会に出るだけです。事前に資料が送られてくるので目を通しますが、20~30分です。複雑な議案があるときなど、X社の担当者から事前のレクチャーを受けることがありますが、年1~2回です。」

「――報酬金額を教えてください。

佐々木:年間約1000万円です。

――失礼ながら、月2~3時間で年収1000万円というと、楽な仕事ですね。

佐々木:そうですね。X社からお声がかかったとき、「決してご負担になることはありませんので」と言われました。負担になるようなら、お断りしています。」

社外取締役の機能発揮について。

「――では、佐々木さんがY社で社外取締役を起用した経験でも、一般論でも結構ですので、見解をお聞かせください。まず、社外取締役がモニタリング機能を発揮できるのかという疑念について。

佐々木:できないしょう。社外取締役は、会社側から提供された情報に基づいて経営者に裁量的行動があるかどうかを判断します。会社側、つまり経営者が自分に不都合な情報を隠そうと思えば、社外取締役の目を欺くのは実に簡単です。「社外取締役がいるから下手なことはできない」という緊張感があることはありますが、実効性はゼロです。

――なるほど。社外取締役のモニタリング機能には限界があると。

佐々木:もちろん、モニタリングは必要ですし、メインバンクや監督官庁が監視した昔のやり方よりはましかもしれませんが、社外取締役という形が本当に適切かどうか。もっと良いやり方があるような気もします。」

「――マネジメント機能のほうはどうですか。

佐々木:こちらも、発揮できているとは思いません。というより、私を含めてほとんどの経営者は、社外取締役にマネジメント機能を期待していないはずですよ。

――そうですか。社外取締役が社内や業界の事情に詳しくないからですか。

佐々木:と言いますか、経営者は、意思決定に重要な生の情報や深い分析をタイムリーに知りたいわけです。そのために、日頃から消費者・ユーザーと対話したり、社員やコンサルタントに分析してもらっています。月1度の取締役会で社外取締役が発する一般論や思いつきの発言を本気でありがたがっている経営者がいるとしたら、経営者失格でしょう。

――社外取締役が十分に機能を発揮していないとなると、社外取締役の報酬は高すぎるという批判に繋がるわけですが……。

佐々木:高すぎます。バブルですね。Y社の場合、従業員は毎日働いて平均年収500万円台、一方、社外取締役は月2時間で約1000万円。労働組合から文句を言われないか、心配です。」

多分そうなのだろうなあという気がします。

もちろん、それなりの見識・経験がある外部の人が、月1回でも取締役会に出席していれば、明らかにおかしいという行動にはストップをかけられるという効果はあるのでしょう。

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