第三者調査委員会の調査報告書公表に関するお知らせ(PDFファイル)
サンテック(東証スタンダード)のプレスリリース(2024年9月9日)。
同社は、会計監査人であったRSM清和監査法人から、監査意見を表明しない旨の監査報告書(2024年3月期計算書類・連結計算書類)を受領(→当サイトの関連記事)していますが...
「当社は監査意見の不表明に至った事由を厳粛に受けとめ、適切に対処すべく、より公正性を確保した第三者による調査が必要と判断し、外部の有識者で構成される第三者調査委員会を設置し、調査を行ってまいりました。
本日、第三者調査委員会より調査の結果、判明した事実関係及び問題点の指摘、再発防止のための提言を目的とする調査報告書を受領いたしましたので、別添のとおり公表いたします。」
第三者委員会設置後、有報を提出していますが、それも意見不表明でした。
調査報告書を踏まえた財務上の影響は...
「第三者調査委員会による調査結果を考慮した最終的な会計処理は、現時点において確定できておりませんが、調査報告書の 18 ページに記載の通り、当社が第 77 期に計上した工事原価総額約 596 百万円以上に新たな損失計上は指摘されておらず、当該費用の「過去の計算書類及び財務諸表について過年度遡及修正の検討の結果、その修正が必要となった場合は、過去の3年間(第 75・76・77 期)に渡り計算書類及び財務諸表について修正いたしますが、総額においてすでに開示している以上の新たな工事損失引当金計上の必要性について言及されておりませんので、当社の過去3期間にわたる通算での連結財務諸表及び財務諸表に与える影響は軽微であります。」
この記述によれば、2024年3月期までに、計上すべき損失は計上済みであり、それを過年度に遡及して計上するかどうかだけが問題だということのようです。
過年度決算については...
「当社は、一時会計監査人との監査契約締結後、第三者調査委員会の調査結果を踏まえて、速やかに上記3期間にわたる過年度の有価証券報告書等に関する訂正について協議をいたします。過年度の有価証券報告書等の訂正報告書の提出及び決算短信等の訂正が必要となった場合は、速やかに過年度の有価証券報告書等の訂正作業に着手いたします。」
監査人は、清和からアリア(一時会計監査人)に交代しています(→当サイトの関連記事)。
過年度の訂正報告書の監査は、前任の清和(あるいはその前の会計監査人)と、後任の監査法人アリアのどちらが担当するのでしょう(プレスリリースではアリアと協議するといっているように読める)。
普通は、調査委員会の結論を待って、無限定適正を目標に決算を締めるものですが、この会社の場合、意見不表明のまま決算を強行し、その後、調査委員会の指摘に沿って決算を訂正するという方法をとるようです。
30ページ弱の調査報告書が添付されています。
調査報告書によれば、監査法人から有報提出延期を助言していたそうですが、会社側の「意見不表明」についての認識が甘かったようです。
「なお、有価証券報告書は決⽇後3カ⽉以内に提出することが求められているが,「やむを得ない理由」により当該期間内に提出できないと認められる場合には提出期限を延⻑することができる(⾦融商品取引法 24 条)。このため、当該監査⼿続きについては、監査法⼈の意⾒を得るまで延期することを選択し、関係機関と調整すべきであった。
監査法⼈側からこれら⼀連の作業の延期を助⾔したものの、当社としては、「意⾒不表明」の影響を当時それほど深刻に捉えていなかったと考えられる。
なお、監査法⼈側は延期を助⾔していたとしているが、円滑なコミュニケーションが取られていなかったため、その助⾔が必要な担当者に届いていていなかったとも考えられる。
監査法⼈との関係については、2024 年 3 ⽉期から R 監査法⼈に異動したが、前任の T 監査法⼈は四⼗数年の⻑い間、当社に対して会計処理や表⽰⽅法を指導しながら監査を⾏っていたが、R 監査法⼈は対応が全く異なっていたため違和感が蓄積し、それ以前から信頼関係は希薄になっていた。
また、社内で会社法監査及び⾦商法監査のそれぞれ意⾒不表明の監査報告書を受領することについて、正しく理解している者が存在していなかったか、存在していたとしても、声を上げてそれを回避するように働きかける術がなかったと思われる。」(報告書21ページ)