会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

企業結合会計基準その他の改正案公表(企業会計基準委員会)

企業会計基準公開草案第49号(企業会計基準第21号の改正案)
「企業結合に関する会計基準(案)」及び関連する他の会計基準等の改正案の公表


企業会計基準委員会は、企業結合会計基準および関連するその他の会計基準等を一部改正する公開草案を、2013年1月11日付で公表しました。

改正されるのは、企業結合会計基準のほか、連結財務諸表に関する会計基準、事業分離等に関する会計基準、貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準、株主資本等変動計算書に関する会計基準、包括利益の表示に関する会計基準、1株当たり当期純利益に関する会計基準などです。

改正案の概要は以下のとおりです。(「本公開草案の概要」を参考にしました。)

1.支配が継続している場合の子会社に対する親会社の持分変動

・子会社株式の追加取得・一部売却および子会社の時価発行増資等は、資本取引として扱う。

・親会社の持分変動による差額は、資本剰余金に計上

(追加取得は非支配株主(少数株主)への資本の払い戻し、一部売却は非支配株主(少数株主)からの資本の払い込みということでしょう。持分割合が変動して差額が生じますが、それは、純資産項目の中の振替として処理します。

ただし、親会社の持分が減る場合には、のれん(計上されていた場合)の取り崩しが行われます。その部分は、厳密に言うと「資本取引」とはいえません。

また、これは、あくまで支配が継続されている範囲での処理であり、一部売却や増資により子会社でなくなった場合は別規定になります。)

2.非支配株主持分の表示

・従来の「少数株主持分」は「非支配株主持分」に変更

3.当期純利益の表示

・現行の「少数株主損益調整前当期純利益」を「当期純利益」とした。

・「当期純利益」に「非支配株主に帰属する当期純利益」を加減して「親会社株主に帰属する当期純利益」を表示(2計算書方式の場合)。または、「当期純利益」の直後に「親会社株主に帰属する当期純利益」と「非支配株主に帰属する当期純利益」を付記(1計算書方式の場合)

4.取得関連費用の取扱い

・企業結合における取得関連費用は発生した事業年度の費用として処理

5.暫定的な会計処理の確定の取扱い

・暫定的な会計処理の確定が企業結合年度の翌年度に行われた場合、企業結合年度の財務諸表に、暫定的な会計処理の確定による取得原価の配分額の見直しの影響を反映

(従来特別損益処理でよかったのが、遡及処理が必要になります。)

6.その他

・非支配株主から自社の株式のみを対価として追加取得する子会社株式の取得原価は、個別財務諸表上、当該子会社の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定

・連結株主資本等変動計算書において、「当期純利益」を「親会社株主に帰属する当期純利益」へ変更

(これは少しおかしな感じがします。これでは、同じ当期純利益であるのに、親会社株主帰属分と非支配株主帰属分が、別の行に泣き別れになってしまいます。当期純利益一本で表示し、それを、内訳として、親会社株主帰属分(株主持分)の列と非支配株主持分の列に分けて書くのが、読みやすいと思います。

また、あいかわらず、株主資本等変動計算書に、包括利益の項目が出てきません。すでに「純資産の変動=包括利益(当期純利益+その他の包括利益)+資本取引による変動」と整理されているはずですから、当然、株主資本等変動計算書もそのように修正すべきでしょう(「当期純利益」と「その他の包括利益」の2段書きでもよい)。)


(企業会計基準適用指針公開草案第50号より)(クリックで拡大)

・連結財務諸表上、「1 株当たり当期純利益」は「1 株当たり親会社株主に帰属する当期純利益」と、「潜在株式調整後1 株当たり当期純利益」は「潜在株式調整後1 株当たり親会社株主に帰属する当期純利益」と読み替える。

適用は、2015年(平成27年)4月1日以後開始する連結会計年度・事業年度からですが、早期適用が認められる項目もあります。表示方法に係る事項を除き、遡及適用を行わないことができます。

ASBJの資料によれば、のれんの償却、子会社に対する支配が喪失した場合の会計処理、全部のれん方式などの検討が先送りになっているそうです。

(新しい基準では、最初に51%取得して子会社化してから、2年目に残りの49%を取得する場合には、のれんは約半分で済むことになりそうです。これは全部のれん方式でないと対応できないのかもしれません。)

監査法人による解説(表示例などはこちらをご覧ください。)

企業結合会計基準改正案等の公表(あずさ監査法人)

ASBJ 「企業結合に関する会計基準(案)」および関連する他の会計基準等の改正案の公表(あらた監査法人)

「企業結合に関する会計基準(案)」及び関連する他の会計基準等の改正案のポイント(新日本監査法人)
(あらた監査法人のサイトより)(クリックで拡大)
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