足利銀行粉飾事件で中央青山監査法人が訴えられている民事裁判の記事。
足銀監査を担当していた公認会計士が足銀の融資先の旅館の顧問税理士に就任していた事実を監査法人側が認めたとのことです。記事では、このこと自体が問題があるかのような見出しのつけ方をしていますが、それは少し違うのではないかと思います。法令で禁止されているのは、監査先の税務業務を行ってはいけないということだけであって、監査先の取引先の税務業務を行うことができないとはどこにも書いてありません。また、監査事務所(監査法人や監査をやっている個人の会計事務所)が、監査先の税務業務をやることを禁止しているのは、主要国では日本だけであり、厳しいといわれている米国でも、一定の制限はあるにせよ監査関与先の税務業務は禁止されていません。監査先の取引先という関係であれば、なおさらです。
銀行側は、この会計士が顧問税理士として2社の実態を熟知し、足銀による2社の債務者区分が虚偽だと認識していたと主張しているそうですが、全く別の関与先の業務で得た情報を、銀行監査で使うべきということになり、非常に危険な考え方です。ある会社の監査を担当している監査法人が、その会社の取引銀行の監査人でもある場合に、監査で得た情報が、銀行監査でも使われる(例えば、その会社への融資の引当金の評価などに)とすれば、監査人に正直に情報を出す会社はなくなってしまいます。(これを解決しようとすれば、金融庁直轄の銀行監査専門の監査法人を作ればいいのかもしれませんが・・・)
もちろん、足利銀行の事件では、顧問先を銀行から紹介してもらった経緯に不透明な面があったと報道されており、特異なケースなのかもしれません。また、銀行のような社会的な影響の大きなクライアントの監査パートナーをやっていながら、税務で稼ぐひまが本当にあったのかという疑問も浮かびます。しかし、この事件をきっかけに監査事務所の業務全般を制限するという動きになるとしたら、あまりに短絡的です。
裁判では「金融検査マニュアル」が「公正なる会計慣行」かどうかも争われるようです。検査マニュアルは、金融庁の職員が金融検査をやるための金融庁内部のルールにすぎないわけですから、金融商品会計基準のような「公正なる会計慣行」と完全にイコールでないことは自明です。
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