MBO最高の1兆円超 23年、大正製薬やベネッセ相次ぎ(記事冒頭のみ)
MBOにより上場廃止となる企業が、2023年は金額ベースで1兆円を超えるという記事。
「株式市場で自ら上場を廃止する企業が増えている。2023年は金額ベースで足元までで1兆円を超え、過去最高となった。東京証券取引所が企業に株価を意識した経営に取り組むよう要請したことなどを背景に、上場負担から逃れ中長期の経営改革に取り組みたいと考える企業が多い。企業は上場することの意義を改めて問われている。」
実績としては、レフコの調査によると11月9日までの買い付け額ベースで約2000億円とのことです。その後発表があった、大正製薬ホールディングス(7077億円)、ベネッセホールディングス(2079億円)、シダックスなどを加えると、1兆円超になるという計算です(大正製薬とベネッセだけでほぼ説明がつく)。
記事では、背景として、以下のような事情をあげています。
・(MBOをやる方の建前だと思いますが)中長期的な観点で構造改革に取り組みたいとの考え。
・株価が割安な企業への圧力が高まっている。特にPBRに関する東証の要請。
・アクティビストによる要求。
・買収提案に真摯に対応すべきとする経産省の企業買収に関する新たな行動指針。
・金利の先高観。低金利のうちにやりたい。
課題としては、非上場化の際の買い取り価格の決定で、利益相反が生じやすいことをあげています。例として、焼津水産化学へのTOB不成立をあげています。
大正製薬のMBOについては、さっそく投資助言会社から注文がついたようです。
投資助言会社、大正製薬HDのMBO価格「少数株主軽視」(日経)
「投資信託「マネックス・アクティビスト・ファンド」のマザーファンドなどに投資助言を行うカタリスト投資顧問は1日、大正製薬ホールディングス(HD)のMBO(経営陣が参加する買収)価格について「少数株主を軽視している」などと表明した。」
大正製薬HDがMBOで非上場化へ、買収総額7000億円超…迅速な意思決定体制整える(読売)
「大正製薬HDは東証スタンダード市場に上場している。創業家出身の上原茂副社長が代表を務める企業が、11月27日~来年1月15日に、1株あたり8620円で株式公開買い付け(TOB)を行う。買い付け価格は、24日終値よりも5割ほど高い。普通株で66・57%を上回る応募のあることが成立条件で、必要な手続きを経て、全株式を取得する。巨額の買収資金は、三井住友銀行からの借り入れで賄う。」
「MBOの実施後に、上原茂副社長が、父親である上原明社長の後任に昇格する方針も明らかにした。」
上場会社のままだと、すんなり世襲というわけにはいかないのでしょう。
「進研ゼミ」など教育事業先細り、ベネッセHDがMBOで株式の非上場化を発表…創業家が提案(読売)
「スウェーデンの投資ファンド「EQT」が設立した特別目的会社が、2024年2月上旬から株式公開買い付け(TOB)を実施する。
ベネッセは、創業一族が約3割の株式を保有している。TOB完了後、創業家側が特別目的会社に出資し、最終的にベネッセ株の保有比率はEQTが6割、創業家側が4割となる。」
日経は社説でも取り上げています。
「企業にとって上場は目標ではなく、成長のための手段である。上場後にファンドの力を借りて非公開化し、じっくりと成長戦略を再構築する企業は増えるとみられる。13年にMBOを実施した米デル・テクノロジーズは事業を見直し、18年に再上場した。
しかし、当然のことながら、新たに株主になるファンドも企業価値の向上を求めてくる。むしろ、上場している時よりも強い経営の規律づけや戦略が必要になるのではないか。そうでなければ事業再建は難しくなり、再上場などの出口も遠のいてしまう。
非公開化に踏み切る際にも注意が必要だ。既存株主に十分な情報が提供されないまま、ファンドなどが株式を安く買い取る懸念が常にある。価格が低すぎて非公開化に失敗した企業は少なくない。独立委員会が価格などの妥当性をチェックする仕組みが必要だ。」