会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

安愚楽牧場、口蹄疫や震災以前からビジネスモデル破綻か(産経より)

安愚楽牧場、口蹄疫や震災以前からビジネスモデル破綻か

破綻した安愚楽牧場が、遅くとも5年前には新たな出資金で既存の出資者向けの配当などを調達していた疑いが強いという記事。

「和牛オーナー制度は、安愚楽が雌の繁殖牛を1頭当たり300万~500万円程度でオーナーと呼ばれる出資者に売却し、数年後に買い戻す仕組み。飼育は安愚楽が担当し、その間に生まれた子牛を売却して、年3~4%程度の配当が得られると宣伝していた。

 最近5年間の財務諸表によると、毎年3億~5億円程度の当期純利益を計上しているが、資産運用に詳しい大手町会計事務所の大黒崇徳代表税理士は「本業のもうけの割合を示す数字は0・1~0・8%。年3%以上の利益が出る事業ではなかった」との見方を示す。

 さらに(1)自己資本比率が低く資本の大半はいずれ出資者に返還する必要がある(2)現金が40億円減少する一方で固定資産が65億円増加し、資金繰りが悪い-などから「出資が増えると、それ以上のお金が必要になるビジネスモデルだった可能性が高い」と指摘している。」

この推測どおりだとすれば、米国のマドフ事件のような「ポンジ・スキーム」(報道では一般に「ネズミ講」と訳されています)をやっていたことになります。規模的にはマドフ事件の10分の1程度になりますが、それでも相当大きな金額です。

(会計監査人も選任していないようなので厳密な処理を議論する意味はないかもしれませんが)同社の会計処理を考えてみると、オーナー(投資家)への売却は、負債ではなく売上計上され、オーナーからの買い戻しの義務はオフバランスであったようです(そのため破綻後負債が急増)。

記事の推測のように、そもそも成り立たないビジネスモデルだとすれば、オーナーに約束していた利回りを達成するために、時価よりも高い金額で買い取らなければならないケースも想定されます。その買い取りの際には損失が発生するわけですが、資金繰り的には、新たな契約を獲得すれば、それにより入ってくる資金で一時的に賄うこともできたのでしょう。

本来は、時価よりも高く買い取ることによる潜在的損失を引当計上すればよいのですが、海外基準と異なり、現行の会計基準ではそこまで書きこんではいないと思われます。引当てしていなくても誤りとはいえないかもしれません。もちろん、オフバランス処理自体が認められるのかどうかも問題となります。
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