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(書籍の紹介)アメリカ型成功者の物語―ゴールドラッシュとシリコンバレー

アメリカ型成功者の物語―ゴールドラッシュとシリコンバレー (新潮文庫)アメリカ型成功者の物語―ゴールドラッシュとシリコンバレー (新潮文庫)
野口 悠紀雄

by G-Tools


連休中に読んだ本。19世紀アメリカのゴールドラッシュと20世紀後半から現在に至るシリコンバレーを取り上げた肩の凝らない読み物です。

この本の中で、なぜアメリカの鉄道王たちが巨額の富を蓄えることができたのか、ふれています(133ページ~)。

これによると、鉄道事業そのもので大もうけしたわけではなく、鉄道建設の資金調達を当初の目的としたペーパー会社(今でいえばSPCやPFIか)を悪用したのだそうです(時代は1860年代)。このペーパー会社は鉄道の建設工事の請負にも手を染めます。

「・・・最初は株を売るための窮余の策だった仕掛けが、やがては一握りのCMA(注:ペーパー会社)株主(彼らはUP(注:ユニオン・パシフィック鉄道)の役員でもある)に膨大な利益をもたらす錬金術装置に変質していった。

 なぜなら、建設費の水増しによって、CMAにいくらでも利益があがるからだ。1マイル当たり実際に必要とされた建設費用は3万ドルだったが、UPがCMAに支払った額は、6万ドルだったと言われる。したがって、1マイル建設するごとに、3万ドルがCMAに入る。

(中略)

 この問題に関しては、後に連邦議会の委員会が調査を行ったのだが、それによると、過剰支出は2300万ドルとされた。一説によれば、差額はもっと大きく、実際に必要だった建設費4400万ドルに対して、9400万ドルが支払われたので、差額の5000万ドルがCMAの利益になったとも言われる。」

別の鉄道会社(セントラル・パシフィック鉄道)でも同様の仕組みが作られ、2900万ドルが過剰に支払われたのだそうです。

監査人は何をやっていたのか、といいたいところですが、職業会計士の誕生は19世紀の後半ですから、監査の制度もなかったのでしょう。

ちなみに、この鉄道王のひとりが、スタンフォード大学の創立者であり、スタンフォード大学があったために、シリコンバレーの繁栄がもたらされた・・・、というふうに話は続いていきます。
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