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そういえば先月、クリント・イーストウッド監督の「アメリカン・スナイパー」を観たのでしたが、末尾の記事を読むまで忘れていました。
イラク戦争で250人以上を殺害した「伝説の狙撃手」である米海軍特殊部隊のクリス・カイル氏をモデルにした、アカデミー賞作品賞候補にまでなった作品なのですが、私には印象が薄かったようです。
そういう人がモデルですので、とにかくいっぱい人を殺しますし、最後まで衝撃的なのですが、正直言って底が浅い感じがしました。
どこで撮影したのか、戦場になった街は本当にリアル。しかし、そこに生きる人々の暮らしは。。。
ご存知クリント・イーストウッド監督は、西部劇の中でもイタリアで製作される二流扱いだった「マカロニ・ウェスタン」出身の俳優で、そこから俳優としては「ダーティ・ハリー」、監督としてはアカデミー賞作品賞・監督賞を受賞した「許されざる者」で超一流となった人です。
齢80を超えるとは思えない精力的な活動を続けていますし、俳優としては数年前に公開された「人生の特等席」で最高の演技を見せてくれています。
これぞ人間愛に溢れる作品。イーストウッドがあえてメガホンを取らず、お弟子さんに監督してもらって、自分は演技に集中したのが良かった。
しかし、「許されざる者」でも「グラン・トリノ」でも、イーストウッド監督は本当に残酷です。マカロニ・ウェスタン出身だからかな、ダーティ・ハリーは実際のイーストウッド監督の投影なのかなと思うほどです。最悪なのは「ミリオンダラー・ベイビー」で二度と観る気もしません。
今回の「アメリカン・スナイパー」はたくさん人を殺すものの、残酷趣味とは思いませんでした。しかし、いかにも片手落ちな気がするのです。
西部劇もその歴史の初めごろは、悪いインディアンに善良な開拓者たちが苦しめられているところに、騎兵隊がやってきてこれを蹴散らすという勧善懲悪ものばかりでした。
しかし、「インディアン」も人間なのだということを意識した作品が出始め、さらには「インディアン」はアメリカ大陸の原住民(ネイティブアメリカン)であり、「白人」こそが侵略者なのだということを意識した作品さえ出るようになりました。
ケビン・コスナー監督・主演の「ダンス・ウィズ・ウルブズ」。同じアカデミー賞監督賞・作品賞でも「許されざる者」と逆方向のヒューマニズムあふれる佳作。
ところが戦争物になるといけません。第二次大戦ものでもベトナム戦争物でも、良心的な作品でもスティーブン・スピルバーグ監督の「プライベート・ライアン」やオリバー・ストーン監督の「プラトーン」や「7月4日に生まれて」が限界で、攻めていったアメリカ人兵士が傷ついて可哀想、という映画でしかありません。
「アメリカン・スナイパー」と同じく、イラクで爆弾処理の任務にあたる米国軍兵士を描いた戦争ドラマで、こちらはアカデミー作品賞・監督賞を受賞した「ハート・ロッカー」も、描いているのはアメリカ人兵士の極度の緊張と苦しみです。
イラクで爆弾処理の任務にあたる米国軍兵士を描いた戦争ドラマ。脚本賞を受賞したマーク・ボールは、実際にバクダッドで取材した体験を基に脚本を書いた。
半世紀前の西部劇でも描いていた「アメリカ」に侵略される側の被害や悲しみが、今になっても対外的な戦争を題材にした映画では一向に出てこないのは、アメリカのお国柄と言うか事情もあるのでしょうが、21世紀になって観るのにはいかにも食い足りない気がしてしまいます。
最高の兵器を携えた重装備のアメリカ軍兵士にあれだけストレスがかかるのならば、攻めこまれて蹂躙されるイラクの無辜の民の苦しみはいかばかりでしょうか。
けだし、名言なのですが。
しかし、「アメリカン・スナイパー」が描くのはもっぱら「アメリカ伝説の狙撃手」とその家族の苦しみだけなのです。
そんなわけで、「アバター」を押しのけて「ハート・ロッカー」がオスカーを獲った時にも思いましたが、この作品がアカデミー賞を獲ったらダメでしょうという感じでした。
「ハング・オーバー」から「世界にひとつのプレイブック」、そして「アメリカン・スナイパー」へ。ただの二枚目役者だったブラッドリー・クーパーの俳優としての成長ぶりが素晴らしい。
追伸
一つ大事なことを書き忘れました。
この映画の舞台となったイラク戦争「勃発」について、主人公夫婦が世界貿易センタービルに飛行機が突っ込むあの映像をテレビで観ている場面からいきなり戦争突入になるのですが。
確かに、ブッシュ大統領は9・11テロに対する自衛戦争だと言ってイラク戦争を開戦しました。しかし、9・11テロはイラクの人が攻めてきたのではありませんでしたから、アメリカにとって「自衛」でもなんでもなかったんですよね。
そして、あの戦争には、独裁者フセイン大統領支配下のイラクが大量破壊兵器を持っているから危険だという大義名分もあったのですが、イラクに大量破壊兵器がなかったことも明らかになっています。
つまり、イラク戦争が「正義の戦争」ではなかったことには歴史的、国際的な合意があると思うのです(そもそも「正義の戦争」なんてないわけですが、特に不正義といいますか)。
ところが、この映画のように9・11テロ→イラク戦争とつなげてしまうと、イラク侵攻には何か「大義」があったかのようになってしまいます。
ここにも、クリント・イーストウッドの作為ないしは良く言っても古さを感じました。
発信箱:美しく、醜悪=大治朋子
毎日新聞 2015年04月07日 東京朝刊
戦争映画として記録的な興行成績をあげたという米ハリウッド映画「アメリカン・スナイパー」を見た。日本でもすでに公開されているが、イラク戦争で250人以上を殺害した「伝説の狙撃手」である米海軍特殊部隊のクリス・カイル氏をモデルにした作品だ。
主演ブラッドリー・クーパーの役作りは徹底している。「食べて運動して」の生活を数カ月続けて84キロだった体を筋骨隆々の100キロ余りに増やし、米兵特有の俗語や抑揚をまねたしゃべりも実に板についている。ワシントン特派員時代の2009年、アフガニスタンで約1カ月間従軍取材した際に一緒に過ごした米兵たちを思い出した。
カイル氏は米国に帰還後も、妻に「心がイラクにある」「二つの世界を生きている」となじられる。多くの帰還兵の妻たちも、私の取材に同じ話をしていた。過酷な体験がもたらす心的外傷後ストレス障害、いわゆるPTSDだ。
映画は米国内でさまざまな論議を呼んだ。狙撃手とはいえ、子供も含め多数のイラク人を殺した兵士を「英雄視すべきではない」という人もいれば、命がけで仲間を救った「ヒーロー」だと反論する人もいる。
その議論を追いながら、ふとアフガニスタンでの取材で出会ったドイツ人カメラマンとの会話を思い出した。「なぜ戦場を撮り続けるの?」「最も美しいものと、最も醜いものがあるから」。カイル氏の姿は美しくもあり醜悪でもある。戦争が「誰かを守り」「誰かを殺す」ものである限りは。
映画が賛否両論の激しい議論を呼んだということは、「戦争を描いた」ということなのだろう。(エルサレム支局)
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