チハルだより

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毎日新聞おはなしちょっぴり 「ぴっかぴかぁ!」石井勉・絵/北川チハル・文

2012-01-28 | メディア関連


 わたし、せりちゃん。
 お正月、早おきしたよ。おそとに、きれいな雪がつもっていたよ。赤い手ぶくろはめて、ひとりでさんぽに出かけたよ。
 公園で、こうくんをみつけたよ。こうくんも、ひとり。雪山を作ってる。
「こうくん、あけましておめでとう!」
 そばへ行くと、あれ?
「ぼくんち、ことしは、『おめでとう』は、ナシなんだ。モチュウだから」
「モチュウって、なに?」
「よくわかんない……」
 こうくんの顔、くもってる。おひさまみたいに、ぴっかぴかぁになるといいのにな。あ、そうだ!
「こうくん、わたし、雪山作るの、手伝うよ!」
 わたしは両手で、わんさか雪を集めたよ。
「こうくん、この山、どこまで高くする?」
……わっかんない」
「じゃあ、ふじ山よりも高くしよう」
 わたしは、集めた雪をどんどん山につみあげた。
「こうくん、この山、なんかさびしくない?」 
「……わっかんない」
「よし、世界一おしゃれな山にしちゃおっか」
 わたしは、つるつるの葉っぱやピンクの花を山にさして、かざったよ。
 でも、こうくんの顔、ちっともぴっかぴかぁにならないの。ぼんやり雪をつかんでは山にこすりつけてるだけみたい……。
「こうくん……、山ができたら、どうするの?」
「……」
 こうくんの手が止まったよ。こうくんの青い手ぶくろ、泣いてるみたいにびっしょびしょ。
 わたしの手ぶくろも、つめたくって、おもくって……。だから、エイッ!って、ぬぎすてた。
「じゃあさっ、こうくん、トンネルほろっ!」

 

 わたしがワンちゃんみたいにガガガガガ!ってほりだすと、こうくん、びっくりしたみたい。

 でもそのうちに、こうくんも手ぶくろぬいで、山のむこうがわから、トンネルをほりだした。

 キンキンする手に、なんども息をかけながら、

 「まけないぞぉっ!」

 って、ほってたら……、

 「あ!」

  雪が、とつぜんガバッとくずれたよ。トンネルの口、きえちゃった……。

 「どうしよう……」

 こうくんが、とんできた。くずれたところをまたほって、手のひらで、そっとかためてく。

 「……すごーい!」
 
拍手したら、こうくんが、今日はじめてわたしをまっすぐみたんだよ。

 「ぼくがこっちを直すから、せりちゃんは、そっちをほって。ね?」

 「……うん!」

  こうくんのほったトンネルを、こんどはわたしがそっとほる。だけどなかなか、つながらない。

 「もうやめる……?」

 「やめない。ぜったい」

  こうくん、きっぱり。

 「……よーし!」

  わたしもどんどん、またほった。

  しばらくすると……、どきん。指が、あついよ。ぽっぽする。

 「つながった……?」

 「うん、つながった!」

  こうくんの手が、わたしの指をにぎっていたよ。

  顔をあげたら、みえたんだ。こうくんの笑顔、ぴっかぴかぁ!

 

 (おわり)

 


 

<がんばろう日本!> みんなの手がつながって、ココロがどんどんつながって……、せかいはぴかぴかぁ! かがやくよ。(北川チハル)

■毎日新聞 「おはなしちょっぴり」(企画・協力 後路好章) 2012年1月23日(月)掲載

■「おはなしちょっぴり」は、被災地をはじめとする全国の子どもたちに贈る短編童話です


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