わたし、せりちゃん。
お正月、早おきしたよ。おそとに、きれいな雪がつもっていたよ。赤い手ぶくろはめて、ひとりでさんぽに出かけたよ。
公園で、こうくんをみつけたよ。こうくんも、ひとり。雪山を作ってる。
「こうくん、あけましておめでとう!」
そばへ行くと、あれ?
「ぼくんち、ことしは、『おめでとう』は、ナシなんだ。モチュウだから」
「モチュウって、なに?」
「よくわかんない……」
こうくんの顔、くもってる。おひさまみたいに、ぴっかぴかぁになるといいのにな。あ、そうだ!
「こうくん、わたし、雪山作るの、手伝うよ!」
わたしは両手で、わんさか雪を集めたよ。
「こうくん、この山、どこまで高くする?」
「……わっかんない」
「じゃあ、ふじ山よりも高くしよう」
わたしは、集めた雪をどんどん山につみあげた。
「こうくん、この山、なんかさびしくない?」
「……わっかんない」
「よし、世界一おしゃれな山にしちゃおっか」
わたしは、つるつるの葉っぱやピンクの花を山にさして、かざったよ。
でも、こうくんの顔、ちっともぴっかぴかぁにならないの。ぼんやり雪をつかんでは山にこすりつけてるだけみたい……。
「こうくん……、山ができたら、どうするの?」
「……」
こうくんの手が止まったよ。こうくんの青い手ぶくろ、泣いてるみたいにびっしょびしょ。
わたしの手ぶくろも、つめたくって、おもくって……。だから、エイッ!って、ぬぎすてた。
「じゃあさっ、こうくん、トンネルほろっ!」
わたしがワンちゃんみたいにガガガガガ!ってほりだすと、こうくん、びっくりしたみたい。
でもそのうちに、こうくんも手ぶくろぬいで、山のむこうがわから、トンネルをほりだした。
キンキンする手に、なんども息をかけながら、
「まけないぞぉっ!」
って、ほってたら……、
「あ!」
雪が、とつぜんガバッとくずれたよ。トンネルの口、きえちゃった……。
「どうしよう……」
こうくんが、とんできた。くずれたところをまたほって、手のひらで、そっとかためてく。
「……すごーい!」
拍手したら、こうくんが、今日はじめてわたしをまっすぐみたんだよ。
「ぼくがこっちを直すから、せりちゃんは、そっちをほって。ね?」
「……うん!」
こうくんのほったトンネルを、こんどはわたしがそっとほる。だけどなかなか、つながらない。
「もうやめる……?」
「やめない。ぜったい」
こうくん、きっぱり。
「……よーし!」
わたしもどんどん、またほった。
しばらくすると……、どきん。指が、あついよ。ぽっぽする。
「つながった……?」
「うん、つながった!」
こうくんの手が、わたしの指をにぎっていたよ。
顔をあげたら、みえたんだ。こうくんの笑顔、ぴっかぴかぁ!
(おわり)
<がんばろう日本!> みんなの手がつながって、ココロがどんどんつながって……、せかいはぴかぴかぁ! かがやくよ。(北川チハル)
■毎日新聞 「おはなしちょっぴり」(企画・協力 後路好章) 2012年1月23日(月)掲載
■「おはなしちょっぴり」は、被災地をはじめとする全国の子どもたちに贈る短編童話です