東京でカラヴァッジョ 日記

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1985年のゴッホ展 -西洋美2回目のゴッホ展

2017年12月27日 | 西洋美術・各国美術
ゴッホ展

1985年10月12日〜12月8日
国立西洋美術館

1985年12月19日〜86年2月2日
名古屋市博物館



   大規模・本格的なゴッホ展としては、1958年、1976年以来3回目となるらしい。
 
   出品点数101点。油彩55点、素描40点、版画4点、書簡2点。油彩画の出品点数を見る限り、1958年の展覧会(油彩画60点)と大差ない。
 
   本展の特筆すべきところは、クレラー=ミュラー美術館とゴッホ美術館からの出品を仰ぎつつも、両館以外に、両館以外のオランダ、アメリカ、スイス、フランス、ベルギー、英国、ソ連、ブラジル、西ドイツ、ノルウェー、そして日本の美術館や個人から借りてきていることである。
   出品数の約3分の1の35点がクレラー=ミュラー美術館とゴッホ美術館、約3分の2の66点が両館以外の所蔵者となっている。
 
   
   凄い作品が出品されている。
 
 
《ガッシェ博士の肖像》
1890年
アメリカ・個人蔵(当時)
 
   この作品に来日歴があったとは!
   《ガッシェ博士の肖像》の油彩画は2点あり、本作は第1バージョン。第2バージョンはオルセー美術館が所蔵する。
   当時アメリカの個人蔵で、メトロポリタン美術館に寄託されていたらしい。
   その後、1990年5月、クリスティーズのオークションに出品され、大昭和製紙名誉会長の齋藤了英氏に競り落とされる。落札金額は、当時の史上最高額8,250万ドル(124.5億円)。氏は数日後にルノワール《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》も7,850万ドルで落札。これらの作品について「自分が死んだら棺桶にいれて焼いてくれ」発言で騒ぎとなる。金満・日本を象徴する出来事の一つとなった。
   氏は1996年に死去、1997年に齋藤家がサザビーズに売却、ガッシェは日本から去る。現在の所有者は不明。
   本展でこの絵に感銘を受けた人は、その5年後にまさかの日本人による取得、日本での再会を期待していたかも、しかし結局、一度も公開されることはなかった。


《自画像》
1890年
オスロ国立美術館
 
   オーヴェール時代の作品として出品されたが、ある本にはサン・レミ時代の作品とあり、また真筆ではない説もある。ちょっと異様なタッチと表情の自画像、来日歴があったとは!
 
 
上記2点以外にも、
 
《アルマン・ルーランの肖像》
1888年
ボイマンス美術館、ロッテルダム
 
《カミーユ・ルーランの肖像》
1890年
サンパウロ美術館、ブラジル
 
《アルル女:ジヌー夫人(ゴーガンによる)》
1890年
サンパウロ美術館、ブラジル
 
《アドリーヌ・ラヴーの肖像》
1890年
クリーヴランド美術館
 
《オーヴェールの家々》
1890年
トレド美術館
 
なんて、観たい。
 
 
   この時が初来日かどうかは確認していないが、元松方コレクション、1959年のフランスからの寄贈返還の対象から外れてフランスに残った《ゴッホのアルルの寝室》(1889年、オルセー美術館)も出品されている。
 
 
   クレラー=ミュラー美術館、ゴッホ美術館、それぞれが《種播く人》を出品していることも特筆すべきか。
 
 
 
本展の構成
   過去2回のような時代順の展示ではない。
 
   本展では世界各国から集められた約100点を、ゴッホが受けたさまざまな影響という観点から「イギリスの要素」、「オランダの要素」、「フランスの要素」、「日本の要素」、「総合」の5セクションに分け展示。
 
1.イギリスの要素
・都市のタイプ
   (9点、うち油彩1点)
・人間のタイプ
   (13点、うち油彩3点)
 
2.オランダの要素
・農民
   (13点、うち油彩1点)
・風景
   (8点、うち油彩3点)
 
3.フランスの要素
・印象主義
   (11点、うち油彩8点)
・文学
   (5点、うち油彩5点)
 
4.日本の要素
   (8点、うち油彩7点)
 
5.総合
   (32点、うち油彩27点)
 
 
 
出品元
 
【オランダ】
 
クレラー=ミュラー美術館(油彩12点、素描5点)
ゴッホ美術館(油彩8点、素描9点、版画1点)
ボイマンス美術館、ロッテルダム(油彩4点、素描2点)
デ・プール・コレクション、アムステルダム(油彩3点、素描5点)
オランダ美術局、ハーグ(油彩1点)
アムステルダム国立美術館(素描1点)
フローニンゲン美術館(素描1点)
 
 
【アメリカ】
 
メトロポリタン美術館(油彩1点)
クリーヴランド美術館(油彩1点)
ネルソン=アトキンズ美術館(油彩1点)
セントルイス美術館(油彩1点)
トレド美術館(油彩1点)
ロスアンジェルス郡立美術館(素描1点)
ウースター美術館(素描1点)
クーパー・ヒューイット美術館、ニューヨーク(素描1点)
個人蔵(油彩2点、素描4点)
 
 
【スイス】
 
ベルン美術館(素描2点)
個人蔵(油彩1点、素描4点、版画3点)
 
 
【フランス】
 
オルセー美術館(油彩4点)
レアチェ美術館、アルル(書簡1点)
個人蔵(油彩1点、書簡1点)
 
 
【ベルギー】
 
ベルギー王立美術館(油彩1点)
モンス市立美術館(素描1点)
トゥルネ市立美術館(素描1点)
 
 
【英国】
 
アシュモリアン美術館(油彩1点)
バーミンガム大学ハーバー美術研究所(油彩1点)
個人蔵(素描1点)
 
 
【ソ連】
 
エルミタージュ美術館(油彩2点)
 
 
【ブラジル】
 
サンパウロ美術館(油彩2点)
 
 
【西ドイツ】
 
マンハイム市立美術館(油彩1点)
 
 
【ノルウェー】
 
オスロ国立美術館(油彩1点)
 
 
【日本】
 
国立西洋美術館(油彩1点)
ブリヂストン美術館(油彩1点)
ひろしま美術館(油彩1点)
個人蔵(油彩2点、素描1点)
 
 
 
   東京会場の入場者数は、398,088人。会期50日で1日あたり7,962人(国立西洋美の歴代10位)。
   大変な人数で大人気=大混雑であったのは間違いないが、過去2回の数字より減少している。過去2回のほうが尋常ではなかったのだ。
 


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