東京でカラヴァッジョ 日記

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【後期】高雄曼荼羅「金剛界」、「赤釈迦」、《山水屏風》など -「神護寺 - 空海と真言密教のはじまり」(東京国立博物館)

2024年08月26日 | 展覧会(日本美術)
神護寺 - 空海と真言密教のはじまり
2024年7月17日〜9月8日
東京国立博物館
 
 
 「神護寺」展の後期(8/14〜)を訪問する。
 
 京都市右京区の高雄山の中腹に所在する神護寺。824年に「高雄山寺」と「神願寺」がひとつになって「神護寺」が誕生。唐から帰朝した空海(774〜835)が真言密教の拠点とした寺院。室町時代から紅葉の名所として知られているらしい。JR京都駅からバス50分+徒歩20分とのこと。長い石段も待っているようだ。
 
 NHK日曜美術館で前期復習・後期予習を、むろさんからいただいたコメントで仏像の復習&予習をする。
 
 
【本展の構成】
 
序章 紅葉の名勝 高雄
1章 神護寺と高雄曼荼羅
 1節 草創期の神護寺 - 空海 -
 2節 院政期の神護寺 - 文覚、後白河法皇、源頼朝 -
2章 神護寺経と釈迦如来像 - 平安貴族の祈りと美意識
3章 神護寺の隆盛
 1節 神護寺に伝わった中世文書と絵図の世界
 2節 密教空間を彩る美術工芸品
4章 古典としての神護寺宝物
5章 神護寺の彫刻
 
 
【主に見たもの】
 
 「高雄の紅葉を楽しむ人々」に雲間に覗いている神護寺の建物群が描かれる国宝《観楓図屏風》狩野秀頼筆(室町〜安土桃山時代 16世紀、東京国立博物館)は、前期限りの出品。
 本作は序章を構成するただ1点の作品であったので、後期は序章無し。
 照明が落とされて真っ暗となった空っぽの壁面ケースを眺める。高精細レプリカはないのだろうか。
 
 
重文《弘法大師像》通期展示
鎌倉時代 14世紀
京都・神護寺
 
 後期のトップバッターは、神護寺の大師堂の本尊。一枚の板からの浮彫り。土佐国金剛頂寺(高知県室戸市)の空海像(現存しない)の模刻。改めてその存在感に見入る。
 
 
国宝《灌頂歴名》空海筆 8/25まで展示
平安時代 812年、京都・神護寺
国宝《風信帖》空海筆 後期展示
平安時代 9世紀、京都・教王護国寺(東寺)
国宝《御請来目録》最澄筆 後期展示
平安時代 9世紀、京都・教王護国寺(東寺)
 
 書跡は関心外であるが、頭の中で「弘法も筆の誤り」と唱えつつ、この3点だけは見る。
 
 
重文《後白河法王像》後期展示
鎌倉時代 13世紀
京都・妙法院
 
 昨年(2023年)の「やまと絵」展(第4期限りの出品)でも見て、再会を楽しみにしていたもの。
 格調を強く感じさせる本作、その状態はよろしくなく、細部の描写は見えにくいが、「目尻の下がった眼の形や皺、ふくよかで堂々とした顔の形、やや小ぶりに描かれる口元」を改めて単眼鏡で探す。
 
 
国宝《両界曼荼羅(高雄曼荼羅)「金剛界」》後期展示
平安時代 9世紀
京都・神護寺
 
 後期は「金剛界」の展示。
 パッと見、大きいけれども、なんだか小さいと感じる。
 あとでサイズを確認すると、前期展示の「胎蔵界」の446.3×406.3cmに対して、「金剛界」は401.9×366.6cm。縦も横も約9割の大きさ。「胎蔵界」との比較でそう感じたようだ。
 
 2016〜21年に、1309年、1793年に続く約230年ぶり3度目の修復を実施した「高雄曼荼羅」。
 裏打ちの貼替えが主な作業であったようだが、大きな欠損部分をどう埋めるかが問題であった。
 調査の結果、欠損を本紙の色(紫に近い色味)に近づけていくと、目立たなくなるだけでなく、金が浮かび上がって見えることが分かった。
 そこで、欠損部分は、本紙の色に近い濃い紺色で埋めることとし、濃い紺色で裏打ちを行った。
 これにより、欠損が目立たなくなるとともに、一切金を書き足すことなく、金の線がはっきり見えるようになったという。
 その欠損部分の濃い紺色を見る。欠損部分であることが識別できる。
 
 
国宝《釈迦如来像》(赤釈迦)後期展示
平安時代 12世紀
京都・神護寺
 
 第2会場のトップバッターは「繊細優美な平安仏画の名品」。衣の赤と輪郭線の赤、衣の截金装飾を見る。
 
 
国宝《山水屏風》後期展示
鎌倉時代 13世紀
京都・神護寺
 
 昨年(2023年)の「やまと絵」展の前期に最初の展示室に展示されたが、他作品に気を取られ、本作は一瞥程度で済ませた。後になって惜しいことをしたと思っていたところ、早々にリカバリーの機会をいただいた。
 現存最古のやまと絵屏風。密教の灌頂儀礼で用いられた用具。
 少し離れて全体を見る、近づいて単眼鏡で細部を見る、を繰り返す。
 私的には、細部にはまる。小さく描かれる人物たち。3つの邸宅内の貴人の男女もよいが、庶民の姿がより魅力的。川に浸かっていたり、何かを採取して籠に入れてその籠を頭に乗せて歩いていたり、楽しい。
 
 
国宝《薬師如来立像》通期展示
平安時代 8〜9世紀
京都・神護寺
《十二神将立像》12軀 通期展示
室町時代15〜16世紀、江戸時代17世紀
京都・神護寺
 
 単眼鏡を利用して、国宝《薬師如来立像》の「厳しい表情」をじっくり見る。
 
 後期から、国宝《薬師如来立像》と脇侍の重文《日光菩薩立像》《月光菩薩立像》は、光背と背後の白い幕が取り払われた。
 これにより、360度鑑賞が可能となり、三尊の背中も見ることができる。
 驚いたのは、前期では白い幕で遮られて別物として展示されていた三尊とその背後の《十二神将立像》12軀が、後期では白い幕が取り払われたことで一体化した展示となったこと。
 
 横一列にずらっと並べられる十二神将。
 強いスポットライトにより背後の壁に映り出される12のシルエットは、実物より何倍も大きく、それぞれの独特のポーズが強調される。
 三尊と十二神将の大シルエットが一つになったスペクタル。
 
 
 
 私的には、前期より後期の方を楽しく見る。
 出品作の好みもあるが、NHK日曜美術館と、むろさんからいただいたコメントのおかげである。


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