リバプール国立美術館所蔵
英国の夢 ラファエル前派展
2015年12月22日~2016年3月6日
Bunkamuraザ・ミュージアム
2014年に六本木・森アーツセンターギャラリーで開催された「ラファエル前派展ー英国ヴィクトリア朝絵画の夢」は、テート美術館所蔵作品による実に見応えのある展覧会であった。
これでラファエル前派を見る機会は当面ないだろう、と思っていたらとんでもない。
今度は、リバプール国立美術館所蔵作品による、これまた見応えのある展覧会が開催。
この作家は六本木ではこんな作品が出ていたなあ。この作家は六本木では出ていたかもしれないけど覚えてないなあ。と思い出しつつ鑑賞する。
2年連続で、ラファエル前派の優品を観るありがたさ。
第1章 ヴィクトリア朝のロマン主義者たち
ミレイ《いにしえの夢ー浅瀬を渡るイサンブラス卿》
ミレイ8点のなかでは、本展のトップバッターを担う本作。
ミレイの初期作品で、なんでも馬を、画面全体の構成では不釣り合いに大きく描いてしまった問題作であるらしい。
隣に馬の大きさを修正して描いた後年の小型の水彩画が展示されていて、わかるようになっているのが面白い。
第2章 古代世界を描いた画家たち
ローレンス・アルマ=タデマ《バッカス神の巫女(「彼がいるわ!」)》
タデマの作品が5点。まとめてこの数を観るのは初めて。
本作は、少女の喜び溢れる表情が好ましい。
アーサー・ハッカー《ペラジアとフィラモン》
荒野に横たわるほぼ全裸の若い女性(瀕死の設定らしい)。女性の傍らに膝を立てて座る男性(修道院長で女性の兄という設定らしい)。遠くにはハゲタカ待機。
ベースとした物語を知らないので、官能性だけで終わる作品。
総じてこの時代の英国美術は、当時の英国文学をもとに描くことも多いので、馴染みの無い私にはしんどい面がある。
アルバート・ジョゼフ・ムーア《夏の夜》
唯美主義。装飾的で物語の存在しない、ただ美しさのみを追求する作品。
第3章 戸外の情景
ハント《イタリア人の子ども(藁を編むトスカーナの少女)》
六本木でこの画家の作品≪良心の目覚め≫を観て、そのコテコテの画風に惹かれた。この絵も、少女の顔や衣装にそのコテコテぶりが伺えて興味深い。キャプションにある「青みがかった遠景はイタリア・ルネサンスの作品の典型的な背景の色を真似たもの」という説明は、ちょっとわからないままでいる。
第4章 19世紀後半の象徴主義者たち
ワッツ《《希望》のためのスケッチ》
図版で見た《希望》の完成作に長年惹かれている。いつか来日して欲しい。
ジョン・メリッシュ・ストラドウィック《聖セシリア》
音楽家の守護聖人。清楚で美しい。
ウォーターハウス《デカメロン》
ボッカッチョによる『デカメロン』は、1348年のペスト大流行から逃れるために邸宅に引きこもった10人の若者(男3人、女7人)が退屈しのぎの話をするという趣向の14世紀の物語集で、イタリア文学の最大傑作の一つとされる。
本作は、男2人、女5人が描かれている(+遠方に男1人、女1人。女1人足りない?)。ペスト大流行中という閉塞感は、当然ない。
ウォーターハウス《エコーとナルキッソス》
カラヴァッジョ《ナルキッソス》がカラヴァッジョ展で再来日する、楽しみ!!と、ウォーターハウスのナルキッソスを見る。
エノリア・フォーテスク=ブリックデール《小さな召使い(乙女エレン)》
不実な恋人に命令され、男装中の少女。衣装は着替え終わっていて、今長い金髪を切ろうとしている。この少女には悲劇の運命が待っているに違いない。
全65点中、印象に残る10作品を選抜して記載。
上記以外にも、ロセッティの女性像2点やバーン=ジョーンズの巨大水彩画《スポンサ・デ・リバノ(レバノンの花嫁)》ほか計4点、フォード・マドックス・ブラウン2点など、主要画家を漏れなくカバー。
2年連続でラファエル前派の優品を味わえるありがたさ。