
ベルリン国立美術館は、2点のフェルメール作品を所蔵する。
驚くべきことに、その2点とも今回のフェルメール展で来日する。2点とも貸し出してしまって大丈夫なのだろうか、いろんな意味で、ベルリン国立美術館は?
2点のうちよく知られているのは《真珠の首飾りの女》。
2012年の「ベルリン国立美術館展ー学べるヨーロッパ美術の400年」にて来日しており、今回は、6年ぶり2回目の来日となる。
小林頼子氏の著書での言葉を借りれば、「女性の放心の一瞬を受け止める空間」「静寂が染みわたる空間」「世俗の香りの強いモティーフ」を排除した「じつに内省的な、ユニークな身支度の情景」。1662-65年頃とフェルメール成熟の時代の作品とされる。56.1×47.4cm。実に素晴らしい作品。
1995-96年のワシントン/ハーグでの歴史的回顧展のほか、2003年のマドリード、2008-09年のローマ、2017年のパリ/ダブリン/ニューヨークでの回顧展に出品されている。
1874年、現所蔵館がSuermondtコレクションの一部として取得。それ以前、フェルメールの「再発見者」トレ・ピュルガーの所蔵だったこともある。
もう1点の《ワイングラス》は初来日。
「ワイングラス」という呼び方は初めて聞く。今はその題名が標準なのだろうか。個人的には従来の呼び方「紳士とワインを飲む女」のほうがしっくりくる。
貸し出されることが少ない作品であるようだ。
確認できた範囲では、1978年のドイツ・ブラウンシュヴァイクの展覧会、2000年のアムステルダムの展覧会、2001年のニューヨーク/ロンドンの回顧展程度。今回よく借りることができたものだ。
1736年、ハーグでの競売。1774年、ジョン・ホープが購入。ホープ家に引き継がれる。1898年、本作を含むホープ・コレクションが売却。1901年、現所蔵館が購入。
制作時期は、本展では1661-62年頃とされているが諸説あるようである。
小林頼子氏の著書では、1658-59年としている。
本展に出品されるフェルメールの代表作の一つ《牛乳を注ぐ女》(制作時期:1658-60年)より、後の制作か同時期の制作か。
数年の違いだが、フェルメールの短い画業からみると、中期の成熟の時代に移行する直前の過渡期の作品か、その前の風俗画家として自己の確立に努めている初期の時代の作品か、と相応に大きな違いとなる。
サイズは67.7×79.6cm。横長である。横長のフェルメール作品は意外と少ない。風俗画では他に1点あるのみ(あと神話画と風景画各1点)。
小林頼子氏の著書の言葉を借りると、「曖昧模糊とした当時の恋愛模様を不分明なままに提示」した作品。
フェルメール作品のなかでも取り上げられることの少ない作品だと思われる。図版で見る限り、人物は小さいし、女性は横向きで白頭巾とワイングラスで顔・表情を隠しているし、静寂なドラマも薄そうな印象。さて、実物はどうか?

《真珠の首飾りの女》、《ワイングラス》ともに、東京会場限りの出品。また、代表作《牛乳を注ぐ女》も東京会場限りの出品。これら3点はこれまで関西に来たことはないことも考えると、関西のフェルメールマニアも東京へ遠征せざるを得ないだろう。