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東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

【後期】「へそまがり日本美術」展(府中市美術館)

2019年04月21日 | 展覧会(日本美術)
春の江戸絵画まつり
へそまがり日本美術
禅画からヘタウマまで
2019年3月16日~5月12日
府中市美術館


   毎春恒例の府中市美術館の「春の江戸絵画まつり」。今年は、去年の今頃から既に宣伝を始めていた「へそまがり日本美術」展。前期に引き続き後期を訪問する。
 
前期:〜4/14、後期:4/16〜
観覧券には2度目は半額となる割引券付き。(痛恨!前期訪問時の半券を家に置き忘れ!)
出品総数:137点(1点出品中止)+後期追加2点
通期34、前期51、後期52+2


第1章   別世界への案内役   禅画
第2章   何かを超える
   ・   俳画と南画
   ・   稚拙みと「ヘタウマ」
   ・   お殿様の絵の謎
第3章   突拍子もない造形
第4章   苦みとおとぼけ
   ・   苦み
   ・   おとぼけ感覚
 
 
1  お殿様の絵
 
   徳川三代将軍家光と四代将軍家綱の親子、本展開幕後にその存在が確認された《鶏図》各1点が追加出品として後期に展示されている。
 
   後期の家光は、通期の《兎図》《木兎図》+追加出品《鶏図》(個人蔵)のゆるい3点。
   後期の家綱は、通期の《鶏図》、後期の《闘鶏図》《団扇歌仙中納言兼輔像》+追加出品《鶏図》(養源寺)の4点。家綱の鶏たちは、確かに目付きがよろしくないが、鶏ではない《団扇歌仙中納言兼輔像》も、「着物の重なり具合の描写は丁寧かつ技巧的」と持ち上げつつ、「古い時代のやまと絵を模写したのだろう」と抑え、でも「いささか目付きは悪い感じ」と落とす。
 
 
 
2  気になる江戸絵画
 
海北友雪(1598〜1677)
《雲竜図襖》
麟祥院(京都市)
 
   後期のトップバッターは、海北友雪の襖図。2017年に京博で回顧展が開催された海北友松の息子。
   麟祥院の《雲竜図襖》は、襖20面に大きな竜2頭が描かれた作品。今回出品は西側の竜の襖6面。
   東側の竜は2018年秋から修復中、その後今回出品の西側の竜も修復に入り、2024年3月予定の完成後は京博に寄託され、麟祥院には精巧な複製画を置くとのこと。
 
 
 
雪村周継(1500頃〜不詳)
《布袋唐子図》
個人蔵
 
   後期の雪村は3点の出品、そのなかでは、子供と遊ぶ布袋。嬉しそうではあるが、子供に顔をいじられ、少し表情を引きつらせている布袋が実に微笑ましい。
 
 
 
白隠慧鶴(1685〜1768)
《すたすた坊主図》
個人蔵
 
   東京都美「奇想の系譜展」でも見た白隠の「すたすた坊主」。同じ作品が府中市美に連続出張と思ったら、所蔵者が異なる。
 
 
 
仙厓義梵(1750〜1837)
《小蔵梅花図》
幻住庵(福岡市)
 
   本展の仙厓は特に弾けた作品を集めたのではないだろうか。後期は、通期展示の「羅漢」「虎」、後期展示の「布袋」「牛」「神農」と大胆すぎる描きぶりの作品が並ぶなか、この「梟」も極上の大胆さ。梟と梅とを一筆で? さらにこのままでは「梟」には見えないと、白隠は破線で輪郭の補強を行っている。
 
 
 
伊年印
《鉄拐仙人図》
個人蔵
 
   水墨画の技法「たらし込み」が「汚さ」を表すために使われる。
 
 
 
長沢芦雪(1754〜1799)
《猿猴弄柿図》
個人蔵
 
   企画者は本作の解説にて宣言する。
   本展を「ヘタウマ」や「下手な絵」の展覧会だと思っていらっしゃる方も少なくないようですが、違います。例えば、優れた腕前の画家が、綺麗でない題材や不可解なものを描いた「へそまがり」な作品にも注目しています。
   東京都美「奇想の系譜展」に続く連続出張の本作のポイントは、柿を独り占めする猿の「いやな表情」をどれほど描ききれるか。この猿の表情は実に嫌らしい。
 
 
 
田谷芝斎(1770〜不詳)
《寒山拾得図》
栃木県立博物館
 
   見上げすぎて、取れてしまったかのような頭、このままでは落っこちる。
 
 
 
曽我蕭白(1730〜1781)
《後醍醐天皇笠置潜逃図》
個人蔵
 
   倒幕に失敗し、笠置山に落ちのびた3人。桜の樹の下。疲れ果てて眠りこける二人の家来と、ぼうぜんと振りかえる天皇。ゲッセマネの祈りを思い浮かべる。何度か拝見している作品だが、桜の樹の下といい、天皇の着物の描線といい、神経質な感じに毎度魅入る。
 
 
 
長沢芦雪(1754〜1799)
《なめくじ図》
個人蔵
 
   東京都美「奇想の系譜展」続く連続出張。「一筆書きになっていますが、なぞってみると一ヶ所間違えやすい所があります」と解説に脅されつつ、私も恐る恐るなぞってみる。上からなぞると、スムーズにゴールする。なめくじからなぞると、確かに悩ましい。
 
 
 
長沢芦雪(1754〜1799)
《蛸と蓮華図》
個人蔵
 
   一見何が描かれているのか分からないが、陸地に上げられ、重力になされるがままの蛸の姿。
 
 
 
   毎年「春の江戸絵画まつり」を楽しく拝見させていただいているが、今年は特に楽しく拝見させていただく。
   2度目は半額となる割引券を2枚ためてしまったので、余裕があれば再訪しようかなあ。
 
 
 


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