投錨備忘録 - 暇つぶしに借りた本のメモを残すブログ

窓のはなし

鹿島出版会が出した「物語 ものの建築史」シリーズの一つ。日本の住まいにおける開口部の話。

日向 進 「窓のはなし」 鹿島出版会

監修:山田 幸一
昭和63年3月25日発行

窓のはなし

鹿島出版会

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著者は昭和22年京都生まれ。昭和45年京都工芸繊維大学卒。京都工芸繊維大学助教授。

山田幸一。大正14年京都生まれ。昭和24年3月、京都大学工学部建築科卒。関西大学教授。

神戸市の北の山間部に箱木千年屋という古い民家がある。ダム建設にともない移築が決まり、そのときに調査が入った。調査の結果、室町時代の姿が建物の構造に残されていることが分かり、室町時代の姿に復元され一般公開されている。

その姿は軒が低く開口部は少なく小さい。外の柱は壁に土で塗りこめられ大変閉鎖的である。夏を主とする開放的な印象をもたれている日本の民家のイメージとは遠い。これは当時が戦乱の世で、一民家であっても防御を主とする必要があったためでもあるが、開口部に建具を用いるということがまだ完成されていない時代であったためでもある。

開口部に建具を用い、明暗に対する細やかな感覚を持つようになるのは、茶室の創世過程において。窓によって空間性が既定される建築があらわれるようになる。

以下メモより。

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p94 人見梁、人見柱

 京都の町屋、かつてミセに蔀(しとみ)が装置されていたことを示す痕跡

p101 白いカーテンの秘密

 ロンドン、夏目漱石は留学中に窓からたえず覗かれているという強迫観念から
 精神症を患ったという。白いカーテンという言葉はイギリスでは窓から外部を
 観察するという意味で使われる。

 応仁・文明の乱の頃の京都、土一揆もあり貧富貴賎を問わず暴虐の害を被った
 住民は「構」と呼ばれる堀・木戸などの防御施設を構築、「町」という共同組
 織を成立させた。
 
 町は相互監視のため格子(千本格子=京格子)を設けた民家を作る。その監視
 のための格子は年に一度、祇園祭のときだけ取り払われ、華やかに飾り立てた
 民家の中を通りから見ることができる。

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◆蔀戸(しとみど)

 日本の民家建築の特徴は何か? それは引き戸。
 世界を探しても引き戸を多用する建築は日本にしかない。

 引き戸以前には開口部は何で戸締りされていたかというと蔀戸になる。
 蔀には戸の上部の一辺を蝶番のようなもので留め、下から棒で突き上げて
 開放するものと、現代の店舗のシャッターの様に柱にレールをつけ、
 そのレールに沿って装置した戸を上に上げることで開放するものとが
 ある。
 
 p94の場合は後者。

 もう店舗に蔀戸は無くなってしまっているのに、遠い昔の店舗建築様
 式が今現在も引き継がれ、その蔀戸の痕跡だけが今でも見える。
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