投錨備忘録 - 暇つぶしに借りた本のメモを残すブログ

注文の多い注文書 - 小川洋子+クラフト・エヴィング商會(筑摩書房)

 
2014年1月25日初版第1刷
著者は1962年岡山市生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。1988年「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文芸賞、1991年「妊娠カレンダー」で104回芥川賞を受賞。
クラフト・エヴィング商會は吉田浩美(1964年東京生まれ)、吉田篤弘(1962年東京生まれ)による制作ユニット。

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"その街区は都会の中の引き出しの奥のようなところにありました。"



東京のとある場所にひっそりと店を構えるクラフト・エヴィング商會。看板には「ないもの、あります」と出ている怪しげな店。


その店を探し物をしている人が訪ねてくる。ある娘は恋人に触れるたびにその箇所が見えなくなってしまう人体欠視症にかかってしまい治療薬を求める。ある人はサリンジャーをこよなく愛す団体の会長で小説を書かなくなったサリンジャーに再度書いてもらうためのあるモノを探してくれるように依頼する。ある人は先日まで背中に張り付いていた貧乏な叔母さんを探して欲しいと訪ねてくる。その叔母さんはある日突然背中に張り付いてきた一度も会ったことがない人だったのだがいつの間にか消えてしまった。他界した郵便局員の祖父を一緒に悼んでいた貧乏な叔母さん、その叔母さんを探してくれと言ってくる。ある人は人体に寄生する植物の収集家だった知人が最後に探しに出かけた目的の品、肺に咲く睡蓮を探して欲しいと依頼する。ある人は内田百閒の「冥途」の初版本、それも落丁がある本を引き取ってくれと持ってくる。どの依頼も元となる小説がある。そんな5つの短編が載っている本。


・人体欠視症治療薬(川端康成「たんぽぽ」)
・バナナフィッシュの耳石(J・D・サリンジャー「バナナフィッシュにうってつけの日」)
・貧乏な叔母さん(村上春樹「貧乏な叔母さんのはなし」)
・肺に咲く睡蓮(ボリス・イヴァン「うたたかの日々」)
・冥途の落丁(内田百閒「冥途」)

それぞれ客がクラフト・エヴィング商會へ注文書を出し、それにクラフト・エヴィング商會が納品書で応えるという内容。
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注文者がどんな人物なのか注文書の文体で読者に分からせてしまう著者の筆力は素晴らしい。面白い本でこの本なら自分の本棚にあっても良いかなと思いました。


(2022年7月 西宮図書館)

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