【入山章栄(2012)『世界の経営学者はいま何を考えているのか―知られざるビジネスの知のフロンティア―』英治出版】
2012/12/02
ニューヨーク州立大学バッファロー校アシスタント・プロフェッサーの入山章栄氏が著書を出した。
学術研究書ではないが、米国の経営学・知の現状(と日本との落差・温度差)を分かりやすく概説している。
越境する教育学の創成をめざすわたくしには、刺激的な本となった。
次世代型学校組織マネジメントの理論と方法に関心を寄せる身からすると、特に、第5章「組織の記憶力を高めるにはどうすればよいか」と7章「イノベーションに求められる「両利き」の経営とは」、17章「それでも経営学は深化し続ける」は、興味深く読ませてもらった。
・トランザクティブ・メモリーTransactive Memory (交換記憶、越境・架橋する記憶*)という概念の有意味性、Who knows what(メンバーの専門性と正確性の把握)
・エスクプロレーションExploration(知の探索)と・エクスプロイテーションExploitation(知の深化)のバランス
・「知のポートフォリオ」の把握
*越境・架橋する記憶(筆者訳)
・研究を研究するメタ・アナリシスという手法 等
本書ではなかなか表面に出てこないが、入山氏のバックグラウンドにあるだろう研究手法(量的研究・統計分析)は、わたくしが主として用いる手法(質的研究・エスノグラフィー)とはかなり距離があるかもしれない。でも本書は、ある意味、研究知のエスノグラフィーそのものであると言っても過言ではない。
専門も研究手法も異なるかもしれないが、越境し合い、架橋・往還可能な「作品」ではないかと思う。
入山章栄氏は、O中39期生。当時、「イリヤン」と呼ばれていた中学生だった。教え子に学び、リスペクトする時代の到来、なぜか心地よい。
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