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【キャスト】
佐々倉溜/相葉雅紀
来島美和/貫地谷しほり
来島泰三/津川雅彦
杉山 薫/荒川良々
三橋順次/光石研
桜 肇/尾美としのり
桜 寿/西慶子
葛原隆一/金子ノブアキ
ゲスト★北方・カンニング竹山/南原亜希 役・田中美保
足早に歩いてる2人。
溜「美和さん、聞いてる? 俺、夕方から仕事なんだけど」
美「大丈夫! お店が混む時間には返すから…ちょっと付き合って」
実は編集長に企画の練り直しを手厳しく言われ、更に「けど、寂しいわね、カップルで賑わうバーに女1人で取材に行くんだ? 女1人で…」と嫌味まで言われた。で、佐々倉を相手に連れてきたわけだ。
溜「だから俺…ねぇ、彼氏代わりって事?」
美「違う! 大人気のお店だからプロならではの視点でしっかり評価してもらいたいの。斬新かつ、万人受けする企画を出せるようによ」
溜「ならいっか・・・良くないか!」
美「悔しいけど編集長、仕事はできるのよね。流行のアンテナは確かだし、ほら例えば食べるラー油とか、草食男子もみんなが騒ぐ随分前からキャッチしてたもんなぁ」
溜「食べるラー油? ラー油は食べちゃだめでしょ。ギョーザにかける、かどっちかって言うと飲む・・・うぷっ!」と気色悪がる。
美「そっか、あなたフランスに行ってたから知らないんだね。とにかく協力お願いします」と手を合わせる「完璧な企画を出して編集長をぎゃふんと言わせるんだから」
本日定休日の札
美「ぎゃふん」
溜「自分で言っちゃった」
それでも、他に1軒位は取材しようと、行き当たりばったりで着いたバーは…地下にあった。
ラパンとは店の雰囲気も、客層もまるで違う。
煙草を吸いながら客の相手をしてるバーテンダー。
美「やっぱりやめようか、なんか私達、場違いかも」と帰ろうとする。
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溜「いや、この店でいいよ」と中へ入っていく。
カウンターの中のバーテンダーをじっと見る佐々倉。
「いらっしゃい・・・ご注文は?」
溜「ブラッティ―メアリーを」
「了解、お嬢ちゃんも同じのでいいか?」
美「お嬢ちゃん!?(一瞬ムッとするが)・・・はい」
店のマッチを手にする店の名は North Wind.。
溜「北風・・・」
「マスターいつもの」と男連れで水商売風の女性客が入って来た。女は連れの客にその店のブラッディメアリーを悪酔いしない酒だと言って勧めた。
美「どうしてウォッカから先にシェイクするの? 普通のグラスでステアするだけなのに」
黙って見つめている佐々倉。
「御存知ですか?」とシェーカ振りながら客に話しかける。
「ブラッティメアリーっていうのは、血まみれのメアリーっていう意味でしてね、16世紀イギリスでメアリー1世という女王様がいまして、彼女は自分の意思に背くものは次々と処刑してったんです。だから血まみれ。女ってのは本当に恐ろしいと、そんな彼女にちなんだカクテル、ブラッティメアリー」
出されたカクテルに美和は「美味しい! あの人腕は確かなんだね」とゴクゴク。
溜「飲み過ぎない方がいいよ。特別なウォッカ使ってる。アルコール度数96…世界一強い蒸留酒」
男連れの女がこちらを睨んでいた。
美「普通のブラッティメアリーと変わらないけど」
溜「その為のシェイク、強いお酒を空気をたっぷり含ませれば口当たりが柔らかくなってアルコール度数を感じさせない。だからつい沢山飲み過ぎてしまって」
「あ~美味かった! じゃ、行こっか」
案の定、一杯の酒で客が酔って既に千鳥足になっていた。
「もう今日は帰った方がいいんじゃない? 送っていくから」と女と連れの客は店を出て行った。
「随分と詳しい、同業者とか?」
溜「見損ないましたよ、北方さん」
美「北方さんってお知り合い?」
溜「このブラッテイメアリーは、ただ酔わせるだけのお酒です。こんなものをバーテンダーが客に出すなんて許されないはずです」
「ここは銀座のお高い店じゃない。それくらいは許してほしいね。第一俺は1流のバーテンダーじゃない。しがないバーテンが金稼ごうと必死にやってんだ」
溜「バーテン・・・・」絶句する佐々倉。
「うちはBAR 風とは違う。気に入らなければ出ていけばいい」と煙草をプカリ。
溜「分かりました。バーテンしかいないような、こんなバーには用はありませんから」
さっさと繁華街を歩いていく佐々倉。
美「ちょっと待って、さっきの人誰? 知り合い?」
答えずにさっさと歩いていく」
美「佐々倉さん!」立ち止まる佐々倉。
溜「次のうち正解はどれでしょう? ①昔務めていたゲイバーのマスターで告白された事がある、②ひとつなぎの財宝を奪い合った仲、③実は兄弟で一子相伝の・・・」
美「どれも違う」
溜「ま、そんな大した話でないから。ね、」と肩をポン「駅あっちだよ。俺。お金ないから歩いて帰るわ。じゃあ!」と別れる。
何やら考え事をしている溜。
杉山もラパンでブラッディメアリーを作り、客に例の話をしている。が、16世紀イギリスを18世紀ジンバブエ、メアリー1世をアメーリー8世と間違えたり、そのたびに三橋が訂正。
三「申し訳ございません。この男、腕は確かですから」と客にフォロー。
溜「いい先輩ですね、三橋さんは」
三「出来の悪い後輩持つと苦労します」
店の売上を数えながら佐々倉の言った言葉を思い出してる北方。
「バーテンしかいないような、こんなバーには用はありませんから」
北「一人前の口ききやがって」
河のほとりでサンドイッチを頬張りながら、おじいさんからバーテンの意味を聞いてる美和。
フーテンとバーを組み合わせてバーテンと呼んだ。差別用語(別称)だという。
何やら思いつきお爺ちゃんを置いて慌ただしく帰る。
■さくら食堂
溜「このシーフード焼き最高! いいよね、海の幸って。日本に生まれて良かった。ビバ! 島国」と感激している。
(亭主が客の前で妻の肩揉みをしている)
美「いた!」
「うちの資料室にあったの」と『BAR 風』の記事を溜の前に出した。溜の表情が一瞬曇った。
美「つまり昨日はかつての先輩が落ちぶれちゃってたんで、つい憤っちゃったとか?」
溜「まぁ大体そんなとこ」
美「よし!でもよく分らないのよね。あなたはこの店で腕を見込まれてフランスに行ったんでしょ? なのに・・・」
溜「つーかさ、何なのそんなに調べて、あっ、俺のストーカー?」
美「ストーカー?」
美「ね、どうしてフランスから帰って来ちゃったの?」
推測を言って、ズケズケと入りこんでくる美和。
水を飲み、コップをガツンとテーブルに叩く。
溜「(咳込んで)ごめんね、チョット喉に詰まっちゃって。大丈夫、水飲んだから」
美「ビックリした」そそくさと帰っていく溜。
自宅の屋形船の上で考え事。「North Wind.」のマッチ箱を見つめる。
『BAR 風』にいた頃の回想――*
溜にブラッディメアリーを作って試飲させる北方。
溜「美味しい! けど、そうとう強い」
北「匂いも無く、パッと見、タダののトマトジュースだ。だから禁酒時代のアメリカでは良く飲まれた。でも実際はウォッカが入ってて飲み過ぎると簡単に潰れるぞ」と肩を叩く。
溜「そっか」
北「溜、覚えとけ。酒にはいつだって二つの顔がある」
溜「二つの顔?」
北「毒と薬だ。その中から薬の顔だけを引き出すのが、バーテンダーの仕事だ」――*
仕事中に佐々倉の資料を見ながら「どうして日本へ戻って来たんだろう」と考える美和。
本を読みながら歩いている溜。
女「危ない、どいて! どいて!」自転車に乗った女の叫ぶ声が。溜を避けようと自転車ごと転倒。
溜「大丈夫?」と駆け寄る。
女「大丈夫じゃない! だからよけてって言ったのに」
溜「え~、悪いのは俺?」
女「タイヤ駄目かもぉ~!」
溜「ごめんなさい」
溜「あ、昨日の」
北方のバーに居た女だった。
おんぶして走る羽目に。
溜「だからって何で俺が?」
女「もっと早く走って」
溜「もうこれで精一杯、バーテンダーに体力ないの!」
女「お願い、今日遅刻したらヤバいんだから!」
溜「そもそも、これどこ向かってんの?」
女「この世で一番大切な人を迎えに行くのよ!」
溜「一番大切?」
溜「そういう事か」着いた場所は保育所だった。
お迎えの時間が遅れると預かってくれなくなるのだという。
帰りに公園で話す。女は亜希という。
亜「お店ではお酒を飲まないようにしてるの。迎えに行く時酒臭いママなんて最低でしょ?」
溜「だから北方さんの所で?」
亜「しつこい客に付き合わされると散々飲まされるから、そういう時は強いお酒出してもらって」
溜「いや、だからって」
亜「もっと心広く持てば? 北方さんの事悪く思ってるんでしょ? モテないよ」
溜「だったら、そっちは元々なんだ」
亜「こう見えてお店のナンバーワンだから。私のアダ名知ってる? 歌舞伎町のシンデレラ・・・・ダサッ」
溜「確かにダサいかも」
亜「まぁ、くたびれた私にはぴったりだけど。毎日ボロボロだし。ほら、シンデレラって灰だらけの灰かぶり姫って意味でしょ?」
溜「うん」
亜「私も何か、今の生活に疲れてるし…何であなたに愚痴ってるんだろ」
溜「でも、さっき凄かったよ。背中で、急げ急げって、ホント怖かった」
亜「うるさい!」
溜「でも世界で一番大切って、そういう風に言いきれる人がいるってすごいと思うな」
公園で遊ぶ娘を見ながら「ね、今度あなたのお店に行っていい?」
溜「ぜひ、歌舞伎町のシンデレラへ美味しいカクテルを」
亜「それはやめて」笑…。
美和、1人で「North Wind.」に来た。
美「今日はちょっと伺いたい事が合って」
北「溜のことか? 惚れてるのか?」
美「違います!」
北「おい、俺はバーテンだ、人の観察するのも仕事の一つだ」
美「どうして佐々倉さんフランスから戻って来たのかな?」
北「教えてやってもいいが、ただじゃつまんねぇなぁ」
ダーツで勝負って事に。美和は見事サボテンに命中。
勝負に負けた美和は、酔った客を運んだり、飲み物を運んだり皿を洗ったりと雑用を命じられた。
働き詰めでグロッキーな美和。カウンターで居眠り。
北「面白いお嬢ちゃんだな・・・おい!」と起こす。
溜に纏わる過去の話をしてくれた。
北「…クビにされたんだよ」
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さくら食堂でひとり飯する美和
何も知らずにズケズケ言ってしまった事を反省する。
「珍しいね、溜息なんかついて」といきなり現れる佐々倉。
「クマできてるよ」なんて言うから、つい「これはあなたの!」って言ってしまう。
溜「俺のこと?」
美「何でもない! おじさん御馳走さま」とさっさと仕事に向かう。
ラパンで飲んでる美和。
三「今日はどうされました? 心が晴れてるようにはお見受け出来なかったので」
美「バーテンダーさんと結婚したら大変ですね、何でもずばずば言い当てられちゃって」
三「それは、失礼しました」
そこに女の客が現れる。亜希だった。
溜「あ?」
美「この間の」
亜「最高のカクテルご馳走してくれる? ただしアルコールは抜きで」今日もお迎えだと言う。
溜「かしこまりました」
亜「何作ってくれるの?」
溜「オレンジジュースを3分の1、パイナップルジュースを3分の1、レモンジュースを3分の1。氷を選びシェイクする時間を考え、三つの液体を完全に混ぜ合わせると、ジュースではなく、シンデレラというノンアルコールカクテルになります」
亜「シンデレラ」
溜「灰かぶり姫は魔法使いの力によってシンデレラになります、同じくバーテンダーの力でただのジュースをカクテルに変えることが出来ればお酒を飲めない人もカクテルを味わう事が出来ます」
亜「バーテンダーは魔法使いってわけ?」うなずく。
美「何キザったらしいこと言ってんの?」
亜「美味しい! やっぱり後輩なんだなっと思って。北方さんのバーに初めて行った時、このカクテル作ってくれたの」
回想――*
北「12時過ぎたらタダの女に戻るんだ、あんたにピッタリのカクテルだよ」
亜「美味しい!」――*
亜「北方さん言ってた。お酒には薬の顔と毒の顔がある。薬の顔を引き出すのが自分の仕事だって」
佐々倉も当時の北方の言葉を思い出していた。同じ酒の薬と毒の話。
北方を佐々倉は待っていた。
釣り堀で釣りをする2人。
北「何か聞きたそうな顔してんなぁ」
溜「どうしてあの店やってんのかなぁ?って」
北「・・・・・」
溜「北方さんなら、もっと」
北「『BAR 風』は一流店だった。だがあの店は一流どころか二流ですらない。そう言いたいのか?」
溜「おれ、一生忘れない言葉があります」
回想(『風』の頃)――*
北「溜、覚えておくといい、バーはな、魂の病院なんだ。体の怪我を治す時、人は昼間病院に行くだろう? それと同じだ。お客は魂を癒すために夜バーのドアを開ける」――*
北「今も変わらねぇ。ノース・ウインドは野戦病院だな」
溜「野戦病院?」
北「血だらけの客が何とか今日生き残るだけの1杯を飲むんだ、そんな店も必要だろ?」
溜「そうかも知れません、それでも少なくとも北方さんは・・・」
北「相変わらず真面目だな、おまけに視野が狭い。だからクビになったんだろ」
溜「それは関係ありません!」
北「安心しろ、あの店はじきに閉める」
溜「閉める? どうして?」
北「特に理由はない。飽きたから。それだけだ。三流のバーテンがやってる三流の店が終わる。誰も気に留めやしないさ」と立ち去る。
溜「北方さん!」
ラパンに泰三が1人でやって来た。
泰「たまにはお前のいカクテル飲んでやってくれと、三橋に頼まれてな」
三橋がおしぼりを手渡す。
溜「三橋さんが…」
溜「パリジャンです。どうぞ」
泰「おい、マズイ」
溜「申し訳ございません、すぐ作り直します」
泰「その必要はない、何度作ってもこの味だろう? お前、バーテンダーの本来の役割は何だと思う?」
溜「本来の?」
泰「そこのドアを開けて入って来た客を、ほんのちょっぴりでも幸せにして返すのがバーテンダーの責務だ。今のお前じゃ病気にさせてしまう」
屋形船の上で凹む。溜「キャバクラ行こう!」
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亜希の店だった。亜希をご指名で行った佐々倉。
無記名の手紙が北方に届く。
北方がラパンにやって来た。無記名の封書は佐々倉だったのか。
(美和も来ている。常連さんだな)
北「随分洒落た真似するなぁ」とコースターを差し出す。
そこには最高の一杯をお作りします。バーラパン佐々倉溜と書かれていた。
北「今日でもう終わりにしてくれ。これ以上うろちょろされても鬱陶しいだけだ」
溜「悩みました。北方さんにどんなお酒を出すべきか、事情も知らず先輩を罵倒した愚かなバーテンダーが一体何を出すべきなのか。全ては弟さんの為だったんですね」
回想(亜希の店)――*
キャバクラで亜希に聞いたのだった。
弟が交通事故に遭い、意識不明の重体でお金が必要になり、今の二流店にしたのだという――*
北「そこまで知ったなら教えてやるよ、弟は死んだ。だからあの店は閉める」
溜「やっぱりそうでしたか」
北「暗い話は終わりだ! 何飲ませてくれる?」
一礼して棚から持って来たものをカウンターに。
溜「これです」
杉「シャルトリューズ・イブ」
美「それってどんなお酒なんですか?」
三「フランスのアルプスの近くにある修道院で作られる薬草系のリキュールです。はるか昔より130種類のハーブを配合して、その作り方は代々修道士のみに伝えられてきました」
グラスに角砂糖。
溜「アルコール度数69度、普通に飲むのには強すぎます。だから砂糖に染み込ませて口の中で溶かしながら飲むんです・・・どうぞ。かつて冬のアルプスを越えて、息も絶え絶えシャルトリューズ修道院に辿り着いた旅人も、きっとこれを飲んだと思います。砂糖の甘味が疲労を回復させ、植物の成分が体力を養う」
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北方は煙草を揉み消し「いいセンスじゃねぇか、野戦病院を経営して、くたびれ果てた俺と旅人を重ね合わせたって訳か」
溜「はい」
目を閉じ味わう。
溜「僕はこう思います。旅人はきっと自分を救ってくれた修道士の名前なんて覚えてない。だけど砂糖にしみ込んだ強烈なお酒の味は忘れなかったんじゃないかなって。修道士もそれで満足だった。それはバーテンダーは同じですよね? たとえ存在が忘れられる事があったとしても、自分の作った一杯の味を覚えていてくれれば本望のはずです。野戦病院が本当に必要なのかどうかは、まだ分かりません。それでもきっとNorth Wind.のお客さんは北方さんの一杯の味を忘れる事はないんじゃないでしょうか? North Wind.・・・北風、北方さんの『北』と『BAR 風』を組み合わせた店名ですよね、素敵な名前だと思います」
北「(代金をカウンターに出し)買い被り過ぎだ。誰も俺が作ったカクテルの味なんか覚えちゃいないさ」
北「美味かった、その酒の味忘れないかもな」
佐々倉の帰りを待っていた美和。
美「この前は御免なさい。クビがどうとか、デリカシーの無いこと言っちゃって…それと私も忘れないから。あなたが一番最初に作ってくれた水割りというカクテルの味。これから色んなカクテルを飲むと思う。でも私、あの味は絶対に忘れない。あれは私の特別な一杯だから」
溜「ってか、何で謝ったの? クビって何?」
美「覚えてないの?」
溜「うん」
美「そっか、ならいいんだけど。結構気にしてたんだけどな」
溜「まぁ、良く分んないけど、とにかく頑張るよ。忘れられないカクテルを作れるように。ね」
美「うん」
溜「寒かったでしょ? おでん行かない?」
美「おでん? いいね」
溜「行こう、行こう! ご馳走さまです」
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美「ちょっと、あの、私何回払ってるかな? たまにはいいんじゃない?」
North Wind.――*
亜「こんにちは」
北「開店前」
亜「いいでしょ? 一杯くらい固い事ナシで。この店辞めちゃうんだって?」
北「溜の奴か? 余計な事を」
亜「ま、私はいいけど、馴染みの店なら他にもあるし。けど」と入口を見る。
常連が次々と入って来る。
「北方さん、いつもソルティドッグ塩強目でね」
「俺ジントニック、渋くて美味いやつ、よろしく!」
「私も聞いた! 店閉めるの考え直してくれない?」
北「何だこいつら」
佐々倉がみんなに声をかけていたようだ。
また1人常連客の男「うん、もぅ~早くぅ! 私、ブラッディメアリー。この店のじゃないとどうも駄目なのよ」
「私も、この店のじゃなけりゃ」
北「わかったよ、お前ら、そこまで言うんだったら今後一切ツケはなしだからな」
喜ぶ常連客。
北「バーテンダーか」
美和にもシャルトリューズ・イブを。
溜「食べ過ぎると太るからほどほどにね」
美「どういう意味ですか」
杉「そうだ、お前、美和さんに何て事言うんだ」
溜「すいません」
三「私も少しふっくらしてる方がタイプですが」
美「全然フォローになってませんけど」
杉「私がフォローしましょう。そもそも、シャルト…シャルトポワ…」
三「すいません、この男、腕は確かですから」
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