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*** june typhoon tokyo ***

Especia@新宿BLAZE


 最後の饗宴は“ヤシの木”とともに。

 「人間は時が経てば忘れていく。でも“ヤシの木”を見たら思い出して」とツアー中に語っていた冨永悠香が「絶対忘れられないライヴにする」と叫ぶ間もなく声高に反応するオーディエンス。初期から見てきたファン、第1章以降は遠ざかっていたファン、第2章から興味を持ったファン、そして、今日初めてライヴを観に来たオーディエンス。それぞれ悲喜こもごもを抱いた全てのぺシスト&ペシスタが見届けたEspeciaのファイナル公演〈Especia“SPICE”Tour -Viva Final-〉は、Especiaの集大成を存分に披露したステージとなった。

 アーバン&リゾートをコンセプトにした彼女たちの象徴ともいえるヤシの木をステージに据えて、バンドとともに繰り出すグッド・ミュージックの数々。Especiaのライヴでの出囃子として馴染み深いアルバム『GUSTO』の「intro」から幕を開けると、第2章で磨いてきたア・カペラ導入を駆使した「アビス」へ。3人のハーモニーが静けさを纏ったフロアに降り注ぐと、一呼吸置いてからバンド・モードへ。多くが愛した「アビス」のイントロのメロディを愛着と切なさに駆られながらシンガロングするフロアのぺシスト&ペシスタたちは、“漂っていたい 何もかも 置き去りにして”の歌詞のごとく、終わることのない宴に永遠に酔いしれ漂っていたかったはずだ。

 「ナイトライダー」からベスト・アルバム収録の新曲「Ternary」まで新旧取り混ぜた構成は、彼女たちが辿って来た紆余曲折の証。しかしながら、単に過去をなぞるということではなく、コーラスやヴォーカルワークなど第2章で培った3名ならではのパフォーマンスで過去曲を新たな彩りに染め上げていく。「No1 Sweeper」「ナイトライダー」「Danger」「YA・ME・TE!」などのキラー・チューンで盛り上がるのは当然だが、新たな彩りという意味でスキルを見せたのが中盤。「West Philly」「Affair」「Nothing」「雨のパーラー」と『Mirage』収録曲を軸にもの憂げでアダルトな世界を演出したセクションは、第1章ではあまり見られなかった“聴かせて沁み入らせる”術で描き出し、グループとしての成長をしっかりと示してくれた。派手さはなくともステージに目を食い入らせる歌唱とパフォーマンスで、後半の「Sunshower」以降への起爆剤となる“タメ”を構築。楽曲の力だけに頼ることなく、“押し引き”を巧みに用いた展開力でステージをメリハリある構成にと仕立てあげていた。

 アンコールもダブル。第2章において本編ラスト曲として多く選ばれた「Boogie Aroma」、初期曲「きらめきシーサイド」などから、バンドなしでの二度目のアンコールへ。「くるかな」でキュートな一面を見せれば、「ミッドナイトConfusion」では第1章でのハイテンションなパフォーマンスを再現。極めつけは本編でも披露した「No1 Sweeper」をリード・ヴォーカルを3人それぞれのパターンで3連続で演じるという“狂気の沙汰”へ。“予測不能のスリル”と“正気じゃいられないくらい踊ろうよ”というEspeciaを言い表わすに相応しい「No1 Sweeper」で、最後の晩餐ですら祝宴に変えてしまえという得意の悪ノリがここでも炸裂したといえるか。ただ、見逃してはならないのは、この狂気の沙汰においても、それぞれがリード・ヴォーカルを執ることが出来るという前提があるということ。タイプの異なる歌唱をバランス良く楽しめるまでに成長した第2章での切磋琢磨が、第1章屈指のキラー・チューンを手の内にしたという事実だ。これほどの悪ノリにぺシスト&ペシスタが尋常にならない訳がない。ステージ狭しと歌い踊る彼女たちへ十人十色の方法で思いをぶつけていく。手を差し伸べ、声を枯らし、涙する者も。その姿が、言葉に代えがたい感情を吐露しながら、終わらないパーティを続けようと躍起になっているようにも見えた。終幕が近づくにつれてさまざまな感情がフロアに渦巻いたのは、それらが制御出来ずにいた人たちの悲しき叫びと取れなくもない。

 Especiaらしいフリーキーな展開が興奮を呼び起こし、享楽の世界へと雪崩れ込んだ。大団円、有終の美。それでいいじゃないかという人も多いはずだが、ただ、個人的に引っ掛かったことがあった。それは謎めいた第2章をスタートさせた「Savior」が演目になかったことだ。やや穿った見方をすれば、このファイナルは(2016年の2月末で第1章が終わり、拠点を東京へと移して第2章がスタートさせたものの)実は第1章のケジメをつけるための公演ではないか、ということだ。本編で冨永が「さよならは言いません。言うのは“オブリガード”、感謝ですね」と告げた後に“It's hard to say good bye”“さよならなんて言えない”と歌う「Saga」を配したのはその意匠であり、ちょっとした反抗にも思えた。全てを出し切った、やり切ったとか、メンバーの仲違いがあったなどが解散の理由ならそれなりに理解出来るが、彼女たちはもっと歌い続けたかったはずだ。集大成ならばベスト盤に収録された楽曲は急すぎるゆえ難しいかもしれないが、第2章の端緒となったEP『Mirage』のリード曲「Savior」がないのは解せない。その曲までをもやり切ってしまうと本当にEspecia全てが終わってしまうから恣意的に外したとするのは、妄想が過ぎるだろうか。

 2016年1月17日、新木場スタジオコーストで3人の卒業が発表された時に、まっすぐ前を見据えて「私は一人でもEspeciaを続ける」と語った冨永悠香は決意の人であり、覚悟を決める人だ。真相は分からないが、望んでいなかったはずの解散に首を縦に振ったのは、不本意な形でEspeciaを終わらせたくないからこそ、自らで終止符を打つことを決めたのだと思う。それだけEspeciaの楽曲に可能性を感じ、その矜持もあるのだろう。

 かくしてEspeciaの短いながらも濃厚な旅路は終わりを迎えた。冨永悠香、森絵莉加、ミア・ナシメントは各々次のステージへと進むべく歩き出す。森は芸能活動から退くことを告げた。冨永、ミアは歌いたい気持ちは存分にあるが、先は分からないと語った。そして、彼女たちを目の前にして享楽に溺れることも出来なくなった。
 それでもEspeciaの楽曲は残る。あの悪ノリの興奮も、期待と不安とに苛まれた何とも言えない感情も、Especiaに何らかの形で触れた人たちの脳裏には残り続ける。たとえ日常で忘れていたとしても、ぺシスト&ペシスタの遺伝子に組み込まれた不思議なアイテム“ヤシの木”が必ずやEspeciaを思い出させてくれるはずだ。

 饗宴は終わりを告げた。だが、これで全ての宴が尽きた訳ではない。再び宴へ舞い戻るのは実はそれほど難儀なことではなかったりもする。なぜなら、Especiaの楽曲に耳を傾けるだけでいいのだから。まったくEspeciaクルーは“悩ましい”遺伝子をぺシスト&ペシスタに組み込んでくれたものだ。それでもオブリガード(ありがとう)。ただ、“アディオス”とは言えない。永遠の別れではないのだから。Especiaの楽曲はすぐ傍にある。だから“チャオチャオ”。饗宴の続きは、またいつか。
 
◇◇◇

<SET LIST>
00 intro(from GUSTO)
01 アビス(a cappella intro ver.)
02 No1 Sweeper
03 ナイトライダー
04 Danger
05 オレンジ・ファストレーン
06 アバンチュールは銀色に
07 Saga
08 West Philly
09 Affair
10 Nothing
11 雨のパーラー
12 Sunshower
13 Mistake
14 海辺のサティ 2016
15 FOOLISH
16 Ternary
17 YA・ME・TE!
≪ENCORE #1≫
18 Aviator
19 Boogie Aroma(English ver.)
20 きらめきシーサイド
≪ENCORE #2≫
21 くるかな(except for BAND)
22 ミッドナイトConfusion(Pureness Waterman Edit)(except for BAND)
23 No1 Sweeper(Erika's Lead Vocal ver.)(except for BAND)
24 No1 Sweeper(Mia's Lead Vocal ver.)(except for BAND)
25 No1 Sweeper(Extended ver. / Haruka's Lead Vocal ver.)(except for BAND) 
26 OUTRO~VIDEO~(Les agradezco mucho a Pecisto & Pecista)

<MEMBER>
Especia are:
Haruka Tominaga(vo)
Erika Mori(vo)
Mia Nascimento(vo)

Especia BAND:
Daioh(g)
Mitsutoshi Kadoya(b)
Takanori Hiraoka(ds)
Emi Goto(key)
Ippei Hayakawa(sax)
Rillsoul(cho)

◇◇◇































◇◇◇

【〈Especia the Second〉(新体制)以降の記事】
2016/06/25 ESPECIA@渋谷Club asia
2016/08/12 Especia「Mirage」
2016/08/28 Especia@渋谷CHELSEA HOTEL
2016/09/11 Especia@O-nest
2016/10/16 Especia@六本木VARIT
2016/11/13 Let's Groove@六本木VARIT
2016/11/27 Especia@六本木VARIT
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2017/01/13 談話室 スパイス ~ Flavor of Especia ~
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2017/02/19 Especia@渋谷CHELSEA HOTEL
2017/02/25 Especia Presents “MUSICA PLAZA” LAST PARTY@六本木VARIT.
2017/03/08 Especia〈SPICE Tour〉まもなく開催
2017/03/22 Especia@タワーレコード錦糸町【インストアライヴ】

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