*** june typhoon tokyo ***

Let's Groove@六本木VARIT


 冬の訪れを感じる寒さが少しずつ到来するなか、心身をグルーヴとともに熱くさせようという企画ライヴが六本木VARITにて開催。〈Let's Groove〉と冠したこのステージには、6月より3名体制で再始動した新生Especia、先月10月5日に2ndアルバム『LIFE』を発表した“生音ヒップホップ・バンド”のAFRO PARKER、ヴァイオリンやホーンなどの管弦楽メンバーを含む大所帯ポップ・バンドのSpecial Favorite Musicの3組が集結。それぞれの音色は異なりながらも、心地良い音楽を響かせるという意味ではシンクロナイズした3組が、この地に集った人たちの心身を揺らすのに十二分なグルーヴを生み出す好企画となった。



 先鋒はEspeciaで、この日はHi-Fi Cityの面々(ギター、ベース、ドラム、サックス、キーボード)をバックに配したバンドセット。先月の〈Hotel Estrella 六本木飯店〉で観た衣装とは異なり、冨永悠香はパンツスタイル、森絵莉加はペイズリーの模様をあしらったトップスに黒系のスカート、ミア・ナシメントはシースルーベストと真っ赤なルージュが印象的だった。

 先日、MVを発表した「Nothing」からスタート。続いて「海辺のサティ 2016」「Mistake」と新体制のライヴではおなじみとなった構成。ただ、少しずつではあるが、コーラスでのハーモニーの強度を高めるなど、成長と変化が窺えるパフォーマンスを披露。そのなかで何よりも良くなったのは、メイン・ヴォーカルの冨永をはじめ、歌い踊ることを自身たちが楽しめている様子が伝わって来たことだ。
 勘違いして欲しくないのは、笑顔で歌うことが必ずしも楽しめていることではないということ。笑顔で歌わないことが楽しめていないとなれば、「Nothing」や「Savior」など『Mirage』収録曲は一切楽しめてないことになってしまうが、そうではなく、しっかりと音に乗り、歌や踊りへの意識の発揚があるかどうかが肝要なのだ。

 これまではどこか無理に雰囲気を醸し出そうとか、ヴォーカルの精度を高めようとするきらいが見受けられたのも事実。たとえ、ピッチやコーラスワークが安定していたとしても、本人たちが音に“ノレていない”のであれば、楽曲や自身たちの良さは伝わってこない。
 だが、この日の彼女たちはバックバンドを配したこともあり、いつもより動けるスペースが限られたものになったステージであったにも関わらず、その表情やハーモニー、メンバー同士のアイコンタクトなどを見るに、自身たちで充実を感じながらパフォーマンス出来ていたのではないか。楽曲構成に目新しいものはなかったが、「FOOLISH」はかなり安定した力を発揮していたし、ラストの「Boogie Aroma(2016版)」ではフロアのヴォルテージをさらに上昇させていた。たとえば、ミア・ナシメントがヴォーカルを執るなど、トピックのあるなしが少なからずそのステージの評価を上下させた部分もあったと思われるが、ようやく第二章の助走期間を終えられそうな予感も。3人でのステージに慣れてきたということもあろうが、ここから加速モードにギアを入れていけそうだ。

<SET LIST:Especia>
01 Nothing
02 海辺のサティ 2016
03 Mistake
04 Savior
05 FOOLISH
06 Boogie Aroma 2016

<MEMBER>
Especia are:
Haruka Tominaga(vo)
Erika Mori(vo)
Mia Nascimento(vo)

Hi-Fi City(BAND)

◇◇◇



 二番手はAFRO PARKER。10月にはレコーディングエンジニアにIllicit Tsuboiを迎えた初の全国流通盤となった2ndアルバム『LIFE』を発表、好評を得ている生音ヒップホップ・バンドだ。福井出身のWAKATHUG、静岡出身の弥之助という好対照なMCと5人の楽器隊で織りなす音は、まさにグルーヴの宝庫。ゆるめのラップ・トラックからメロウなミディアム、ハードに攻めるヘヴィなヒップホップ、アシッド・ジャズ風のグルーヴィ・チューンまで、ジャズ、ソウル、ファンクとヒップホップを高濃度で培養させた彼らでしか成し得ないケミストリーで、痛快なヴァイブスを朝露の滴のように快く降らせていく。

 コミカルなトラックをスキットとして挿入している彼らのアルバムを聴けば分かるが、クスリとさせる笑いを取り込んでいるのも彼らの特徴。オープニングで目一杯伸ばしてセッティングされていたスタンドマイクに届かず、脚立に乗ってMC二人が歌い始めたり、JBマナーで“バス来ない”と唸りながらフリップ芸を見せる「The Rapper In The Rye」、MC中に祖父や祖母から携帯電話が入るコント風MCなど、小ネタ満載で笑わせてくれる。

 ただ、そのサーヴィス精神もどこか“こなしている”感が伝わって来たのも事実。上述の祖父との携帯電話のくだりは、実質上ライヴ情報の宣伝をしただけで弥之助が祖父と掛け合いながら演じる場面もほとんどなく、一風変わった曲繋ぎの域を出ていなかった。それならば、無理して多くの小ネタをつぎ込まずに最小限に留めて、MCと生音バンドが融合して生まれる楽しさに重心を寄せた方がいいのかもしれない。
 というのも、バンド隊が奏でるサウンドを含めて既に高水準でグルーヴを生み出せるゆえ、楽曲だけでも存分に彼らの良さを伝播させるレヴェルにあるといえるからだ。楽曲一つ一つを見てもしっかりとしたストーリーとメッセージが埋め込まれているし、観客の耳目を惹きつけるタイミングやセンスもいい。正統派になれ、とは全く思わないが、小手先の変化に終始する必要はない。それほどの充実度にあるのではないか、と彼らのステージングから感じられた。

 それにしても、アフロパは女性ファンが多かった。

<SET LIST:AFRO PARKER>
Welcome to AFRO PARK
New Era Hip Hop Religion
After Five Rapper -SHACHIKU REQUIEM-
The Rapper In The Rye
H.E.R.O.
Honesty
Cosmic Dance
Life Is Good
※順不同

<MEMBER>
WAKATHUG(MC)
弥之助(MC)
加地三十等兵(g)
BOY GENIUS(key)
KNOB(b)
BUBUZELA(sax)
TK-808(ds)

◇◇◇



 トリは2016年5月に『World's Magic』でアルバム・デビューした、大阪出身の8人組ポップス・バンド、Special Favorite Music。初見なので継続的にそうしているのかどうかは解からないが、前列にヴァイオリン、サックス(フルート)、ギター、ヴォーカル、パーカッション、後列にベース、ドラム、ギターを配した面白い布陣。

 自身でも「ポップなバンドですが」と言っていたが、クメユウスケとラビンユーの男女ヴォーカルを軸とした淡いサイダーのような眩さや清々しさ、瑞々しさがキラキラと煌めくサウンドは、ピュアなポップ濃度100%といった風。いわゆるニューミュージックやシティポップの音の軌跡を辿りながらも、懐古だけにはとどまらない“2010年代=テン年代”のサウンドに見られるフットワークの軽さが魅力なのかもしれない。アクや陰りの少ないParis Matchといったらいいだろうか(爽快なLUCKY TAPESといった方が近いか)。

 男女混成、ヴァイオリン(キュートなルックス)や管楽器、前面に出たパーカッションなどなかなかユニークな編成で見どころもありそうだが、折角ヴァイオリン、サックス、パーカッションなどが前面に出ているのだから、もう少しそのあたりをフィーチャーしたアレンジやパートがあるとより惹きつけられるのかもとも感じた。所帯が大きく(メンバーチェンジもあった模様)バランスをとるのが難しいこともあるだろうが、資質としては可能性を秘めたものがありそうなだけに、もう一つインパクトがあるものがあると(「GOLD」などの“キメ”がある作風に限らず)より訴求力が高まるのではないかと思う。

<MEMBER>
lovinyuu(vo)
Yusuke Kume(vo,g)
Naohiro Okuda(g,syn,ds)
Keiichi Shibuta(b)
Yosuke Fujibayashi(ds)
Katsuya Shinjo(perc,ds)
Haruna Miyata(vn,va)
Yuta Furukawa(sax,fl)

◇◇◇

【〈Especia the Second〉(新体制)以降の記事】

・2016/06/25 ESPECIA@渋谷Club asia
・2016/08/12 Especia「Mirage」
・2016/08/28 Especia@渋谷CHELSEA HOTEL
・2016/09/11 Especia@O-nest
・2016/10/16 Especia@六本木VARIT

◇◇◇






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