*** june typhoon tokyo ***

The night is still young...

Especia@六本木VARIT

2016-10-16 23:59:58 | ライヴ

 思春期を経て、少女から大人へ華麗な変身を遂げる途中の1ステップ。

 この8月よりスタートした朝食と共に過ごすガールズ・グループ“Especia”のモーニング・ライヴ・シリーズ〈Hotel Estrella〉も第3弾。8月はCHELSEA HOTELでの〈Hotel Estrella -2FLB-〉、9月はO-nestでの〈円山閣大飯店〉と渋谷を舞台に行なわれてきた“朝ペシア”だが、3回目は会場を六本木のVARITに移しての開催。100~150人収容とキャパシティとしては前回よりもこじんまりとした感じだが、日曜の朝の開演ということもあり、現段階では集客面においても妥当なところなのかもしれない。中華粥、卵スープ、肉入り胡麻団子、空芯菜と季節のキノコ炒めなど今回も前回の〈円山閣大飯店〉同様に中華風ビュッフェに舌鼓を打ちながら、開演時刻に近づくにつれ活気づくフロア。中華風BGMがフェードアウトするなか暗転し、BGMに覆いかぶさるように「Helix」のイントロが聴こえてくると、Especiaの3名が登場。幻想な雰囲気を漂わせるにはイントロだけでも十分な「Helix」で〈Hotel Estrella〉第3弾はスタートした。

 もしかしたら、この日に集った観客は、新生Especia〈Especia the Second〉のターニングポイントの一つを体感したことになるのかもしれない。冒頭の「Helix」からリード・ヴォーカルの冨永悠香の調子がやや優れないのかと感じた観客は少なくないと思うが、続く「嘘つきなアネラ」の途中で冨永の瞳にみるみるうちに涙が溢れ、とうとう歌えなくなってしまった。拳をギュッと握りしめながら、何とか再び歌おうとするも嗚咽が止まらない。顔を覗き込む森絵莉加も心配そうな表情でその光景を見遣る。ファンも固唾を飲んで見守るしか出来ない凝視と緊張と不安が伝わる、何とも言えない空気がフロア一帯を支配していた。
 その後、気を取り直して「センシュアルゲーム」以降を歌った冨永だが、ドリーミーな感覚とクラップが軽快に弾ける「シークレット・ジャイヴ」を演じる頃には調子を取り戻し、表情にも明るさが戻る。フロアのファンも安堵してか、彼女らへの声援や掛け声が曲が終わるごとに大きくなっていった。

 涙の理由は何だったのか、その答えは当人しか分からない。全ては憶測となってしまうが、新生Especiaをスタートさせたものの、依然として決して順風満帆とは言えないなか、リード・ヴォーカルとして懸命に努めているはずだが、このステージの冒頭での不調が本人にとって非常に悔しかったのではないかというのが一つ。2月末をもって5名から3名が卒業するなかで、「Especiaが続く限り、私は辞めない」と真っすぐ前を見据えながら宣言したその責任感は、これまで以上に彼女の肩に伸し掛かっていると思う。5名時代には年上のメンバーもいて、他4名がさまざまな角度からフォローしてくれもしたが、〈Especia the Second〉では最年長でリード・ヴォーカルを担う。自身の不調が大きくグループの評価を一変させてしまうことも、彼女は重々承知だろう。日曜の朝という集客には厳しい環境ではあるが、かつてより客入りが芳しくないことも眼前に突き付けられている。その不甲斐なさと懸命に努めようとするも結果が比例しないジレンマに苛まれた複雑な心情が募って、「嘘つきなアネラ」での涙に繋がったのかもしれない。
 また、以前のようにSNSやブログなどでの発信が出来ない状況も、もどかしさを増幅させていたのだろうか。さまざまなメッセージを発信しながら不安や葛藤を表現出来たものが、現在はその形を持ち得ていない。自身が思うことや理解して欲しいことが思い通りに伝わらないというモヤモヤした感情も、こちらが考えている以上に彼女の脳裏には渦巻いていたのかもしれない。 
 しかしながら、彼女たちはプロのグループ。苦心や苦境は誰しもがに付き纏う。その状況を打破しようとしてこそ、成長という花や実に繋がってくるのだと思う。

 その意味で言えば、この日のステージは涙という痛みを伴いながらも大きく成長の一歩を示したステージへと瞬時に変貌した、といえるかもしれない。これまでは少女だったグループも、痛みや歯痒さを経験して外世界の空気に触れ、大人へと成長していく。そんな一瞬だ。



 振り返れば、6名から5名へと編成が変わったツアーのファイナル、2014年12月のO-EAST公演でメジャー・デビューを発表したEspecia。彼女らがメジャー・デビュー前の2015年1月に出演した代官山LOOPでの企画イヴェント〈
Mixed Up〉(その記事はこちら→「Mixed Up@代官山LOOP」)で、フロアにこれまでにないケミストリーをもたらしていたのを思い出す。「5名のEspeciaでもいける!」と実感したゆえに、そこへ集ったぺシスト(Especiaのファン)たちのヴォルテージも長く沸点を続けたままであったと記憶しているが、それと同じような光景がこの日のステージに起こった、といったら言い過ぎになるだろうか。

 3名がトライポッドよろしく三角を成して向かい合い(動かない“少年隊「君だけに」風”といったら古いだろうか)、ア・カペラで「雨のパーラー」を1フレーズ披露したやおら、初披露となる「Fader」へ。これまでほとんど単独ヴォーカルを執らなかったミア・ナシメントが冒頭からセンチメンタルなメロディのメイン・ヴォーカルを披露すると、会場の空気がガラリ一変。加えて、森がラップ・パートをソロで続くと、観客もこれに大きく呼応。コーラスへ徹しながらも冨永のメイン・パートで口ずさむ姿も少なくなかった森は、5名時代は3名のメイン・ヴォーカルのなかでもグループ一番の成長株として歌うことの楽しさを覚え始めていたはずで、本音を言えば、小休止後のコーラスという立ち位置には揺れ動くものがあったに違いない。おそらく、森のソロ・パートも聴きたいという声も届いていたはずだ。グループとしての成熟を優先し、自身に言い聞かせるようにコーラスを務めてきた彼女も、フロアの興奮の波に押されてか、ステージの最前へ踏み出して少しばかりクールに気取ったフロウを決めると、冨永、森、ミア三者の表情が自然と紅潮し、エネルギッシュなパフォーマンスへと突入。これまでの“朝ペシア”シリーズでは生まれなかったうねりがフロアを満たすと、後半の「Sweet Tactics」「Mistake」「FOOLISH」という前回と同様の展開も全く異なるものに聴こえてくるから不思議だ。

 前回の〈円山閣大飯店〉での記事で、「まだ新生となって月日は短いこともあるが、賞味の足は早いのも事実。3人でハーモニーを重ねる場面が増え、森絵莉加も今後はリードを執る楽曲が出てくるだろうし、それが〈Especia the Second〉のブースターとなり得る可能性も高い」と書いたのだが、前述の冨永の“涙”と「雨のパーラー」からの「Fader」への流れは、この時点ではブースターとまでは言い切れないとはいえ、新生Especiaの次なるフェーズへの導火線となるに十分な瞬間だった。

 現時点では、依然として〈Especia the Second〉以降の新たな楽曲はEP「Mirage」収録曲しかなく、ステージでは過去曲やそのリミックス・ヴァージョンなどを含めての構成となっている。だが、これから新たな楽曲が投下されていくにつれ、もちろんヴォーカルのヴァリエーションも増えてくることだろう。さすれば、それがさらなる次のフェーズへの火付け役となり、ブースター発動となる可能性も十分考えられる。ヒジャブを纏ったミステリアスな姿で登場した3名がそのヴェールを徐々に脱ぎ始め、グループが向かおうとする先の全貌が明らかになる時が近づいてきているのかもしれない。ますます目が離せなくなったと言っていい。



◇◇◇

<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 Helix
02 嘘つきなアネラ
03 センシュアルゲーム
04 シークレット・ジャイヴ
05 海辺のサティ 2016
06 雨のパーラー(a cappella)
07 Fader
08 Sweet Tactics
09 Mistake
10 FOOLISH(12" Vinyl Edit)
11 Savior
≪ENCORE≫
12 Aviator(Alternate Version)
13 Sunshower

<MEMBER>
Especia are:
Haruka Tominaga(vo)
Erika Mori(vo)
Mia Nascimento(vo)



◇◇◇

【〈Especia the Second〉(新体制)以降の記事】

・2016/06/25 ESPECIA@渋谷Club asia
・2016/08/12 Especia「Mirage」
・2016/08/28 Especia@渋谷CHELSEA HOTEL
・2016/09/11 Especia@O-nest

◇◇◇









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