*** june typhoon tokyo ***

MISIA@横浜アリーナ


 圧巻のエンターテインメント“MISIA”ショウ。

 コンピュータを駆使した打ち込み系サウンドやDJセット、レーザービームなどによる芸術的なライティング、独創的な発想で展開する演出などをバンド、コーラス、ダンサーらと融合させ、スケールの大きなステージを創り上げてきた〈THE TOUR OF MISIA〉が2012年以来久しぶりに復活。1999年に幕を開けた〈THE TOUR OF MISIA〉だが、今回のツアーでそのシリーズに終止符を打つとのこと。近年は〈星空のライヴ〉や〈Candle Night〉などアコースティックやバラード中心のツアーが多く、首を長くして待っていたところだ。〈THE TOUR OF MISIA〉にとってほとんどのシリーズでファイナルが行なわれた“聖地”とも呼べる横浜アリーナにて、〈LAWSON Presents THE TOUR OF MISIA LOVE BEBOP all roads lead to you〉のファイナル公演初日を観賞。DJ、ダンサー、ストリングスに加え、15年ぶりにドラァグクイーンも登場するとの予告もあり、より絢爛となりそうなステージへの足取りはこれまで以上に軽やかだった気がする。



 ちなみに、これまでに観賞したMISIAのライヴおよび記事は次のとおり(リンク先で記事が読めます)。

2001/01/28 MISIA@横浜アリーナ〈OCN PRESENTS THE TOUR OF MISIA 2001〉
2001/12/24 MISIA@さいたまスーパーアリーナ〈OCN PRESENTS THE TOUR OF MISIA 2002〉
2002/01/27 MISIA@横浜アリーナ〈OCN PRESENTS THE TOUR OF MISIA 2002〉
2002/11/17 MISIA@国立代々木競技場第一体育館〈OCN PRESENTS THE TOUR OF MISIA 2003 KISS IN THE SKY〉
2002/12/13 MISIA@横浜アリーナ〈OCN PRESENTS THE TOUR OF MISIA 2003 KISS IN THE SKY〉
2003/01/05 MISIA@さいたまスーパーアリーナ〈OCN PRESENTS THE TOUR OF MISIA 2003 KISS IN THE SKY〉
2004/01/18 MISIA@東京ドーム〈MARS AND ROSES THE TOUR OF MISIA 2004〉
2005/03/20 MISIA@さいたまスーパーアリーナ〈THE TOUR OF MISIA 2005 THE SINGER SHOW〉

2007/02/03 MISIA@横浜アリーナ〈THE TOUR OF MISIA 2007 ASCENSION〉
2007/02/04 MISIA@横浜アリーナ〈THE TOUR OF MISIA 2007 ASCENSION〉
2007/08/29 MISIA@東京国際フォーラム〈OCN presents MISIA星空のライヴIV CLASSICS〉
2007/09/23 MISIA@ZEPP TOKYO〈MISIA ASIA LIVE 2007 以心伝心〉
2008/01/06 MISIA@代々木第一体育館〈OCN Presents EIGHth WORLD THE TOUR OF MISIA 2008〉
2008/01/20 MISIA@さいたまスーパーアリーナ〈OCN Presents EIGHth WORLD THE TOUR OF MISIA 2008〉
2009/01/17 MISIA@日本武道館〈OCN Presents THE TOUR OF MISIA DISCOTHEQUE ASIA〉
2009/02/08 MISIA@横浜アリーナ〈OCN Presents THE TOUR OF MISIA DISCOTHEQUE ASIA〉
2010/02/14 MISIA@横浜アリーナ〈OCN presents MISIA 星空のライヴV Just Ballade MISIA with 星空のオーケストラ2010〉
2011/04/09 MISIA@NHKホール〈THE TOUR OF MISIA JAPAN SOUL QUEST〉
2011/05/03 MISIA@神奈川県民ホール〈THE TOUR OF MISIA JAPAN SOUL QUEST〉
2012/02/19 MISIA@横浜アリーナ〈THE TOUR OF MISIA JAPAN SOUL QUEST〉
2012/07/08 MISIA@東京国際フォーラム〈MISIA BEST MUSIC AWARD ~since1998~〉
2013/03/24 MISIA@東京国際フォーラム〈LAWSON presents MISIA 星空のライヴVII 15th celebration〉
2014/01/19 MISIA@日本武道館〈LAWSON presents MISIA 星空のライヴVII 15th celebration〉
2015/07/08 MISIA@東京国際フォーラム〈LAWSON presents MISIA 星空のライヴVIII MOON JOURNEY〉



 オープニングアクトは“桃から生まれたシンガーソングライター”こと10代のギター弾き少女、RYOのソロ・プロジェクト、Little Black Dress。MISIAのライヴのオープニングアクトといえば、かつてはMay J.(「Good Tymez」「My Girls」「Here We Go」など初期の17歳の頃)も経験した舞台だが、ラップトップからの音源とギターをかき鳴らす、なかなかパンチのある歌唱を披露。MISIAの客層とはベストマッチではないと思うが、まだ客電も明るく座席へ移動してくる観客も少なくないなかで、フロアからも声援が飛ぶシーンもあるなど、初々しさと真摯な歌いっぷりが好感を促したのではないかと思う。

 開演時刻から5分ほど過ぎたところで暗転。続々と椅子から腰を上げた観客が今や遅しとMISIAの登場を心待ちにしている。DJ Ta-ShiによるDJ&スクラッチを組み込んだ「LOVE BEBOP」のイントロを耳にするやいなや、ケミカルライト(サイリウム)が暗闇のあちらこちらで光を放ち、身体を揺らす観客の“波”が生まれると、ステージ両端に巨大なゴールドのキングコブラが姿を現す。冒頭からのド派手な演出で、4年ぶりとなる〈THE TOUR OF MISIA〉がスタートした。



 既に“バラードの歌姫”との認識も高いMISIAだが、デビュー時直後のR&Bやヒップホップのフレイヴァ、さらに気鋭トラックメイカーらによるハウス・リミックスによってたちまち興味を持った自分にとっては、いかに歌い踊り弾け、グルーヴに酔えるかをMISIAに求めてきたこともあり、近年のオーセンティックなバラード重視傾向はライヴ、作風ともどもやや関心が薄れ始めていた。2012年以降にこの〈THE TOUR OF MISIA〉が行なわれず、〈星空のライヴ〉や〈Candle Night〉が続いたことも重なり、正直なところ、MISIA離れは時間の問題かもと思っていた。だが、あまり期待せずに聴いた12thアルバム『LOVE BEBOP』の完成度が高く、SAKOSHINによるヴォードヴィル・ショーを想わせるリード曲「Butterfly Butterfly」をはじめ、ヒップホップとハウスをアグレッシヴに融合したタイトル曲「LOVE BEBOP」、流麗なストリングスと軽快にリズム隊が走るジャジィなR&B「真夜中のHIDE-AND-SEEK」、ビルドやクラップ&シンセなどEDM的なアイテムを用いたエレクトロニック・ダンサー「FREEDOM」など弾けるような躍動感を持った楽曲群に再び忘れていた胸騒ぎを感じていた。そこに〈THE TOUR OF MISIA〉開催の一報。半信半疑で臨んだステージには、これまでに繰り広げられてきたエンターテインメントが強度を増して展開されていた。

 冒頭の巨大なキングコブラ、MISIAとダンサーやDJ Ta-Shiによるマジックショーを採り入れたパフォーマンス、フロアにもその熱が伝わるいくつもの炎、しなやかさと鋭さの両面を持ち合わせたダンサー、乱射されるビームライトと輝くミラーボールなど、派手なこと全てを是とする訳ではないが、“思い切り楽しむ”というコンセプトがめくるめくほど次々と表情を変えて現れるステージを眼前にするにつけ、これぞMISIAライヴの真骨頂と感嘆していた。



 もちろん、演出以上に肝心なのが楽曲。前半には「Escape」「BACK BLOCKS」「Rhythm Reflection」などのヒップホップ・メドレー・セクション、アンコール後にはドラァグクイーンが華を添えての「INTO THE LIGHT」「sweetness」以下のハウス・メドレー・セクション、その間に弾き語りを含むバラード・セクションを配置するなど、飽きさせないような構成だけでなく、静と動取り混ぜて常にワクワクさせるような演出を構築。声がかすれるまでをも情感をほとばしらせた「オルフェンズの涙」、MISIAの人柄が表われたようなピュアな想いとポジティヴなメッセージで観客と何度もコール&レスポンスを交わした「あなたにスマイル:)」など、曲ごとにもさまざまなトピックで全方向へエンターテインメントを届けることに徹していた。

 伸びやかという言葉が陳腐なものになってしまうほどいつまでも続きそうなロングトーンや天空をも突き破りそうなホイッスルヴォイスに、彼女は本当に歌うために生まれてきたのだとヒシヒシと実感。長いツアーを駆け巡ってきてのファイナル初日だけに、声がかすれたり息が荒れる瞬間が皆無ではなかったが、それも揚げ足取りにしかならないほどの圧巻ぶり。声は最大の感情の武器という言い伝えがあるかは分からないが、MISIAはその最大の武器を比類なきほどのレヴェルで放射する。それも刺激で驚かせるというのではなく、肌にじんわりと浸透するような優しい伝達力でありながら、観客の体躯や五感に身震いさせる感覚で包み込んでいく。もうそれは優れたというのを飛び越え、畏怖すら覚えてくるほどだ。



 だが、一番に伝わってきたのは、ヴォーカルワークの巧みさではなく、信念として掲げる“愛”だ。20年近く前にドラァグクイーンを登場させ、J-POPシーンとゲイや同性愛カルチャーとをリンクさせたパイオニアとも言ってもいいMISIAだが、最後の〈THE TOUR OF MISIA〉に再びドラァグクイーンを呼び寄せたのも普遍の愛、“Love is Love”をあらためてメッセージにしたためたということなのだろう。そして、長きに渡る〈THE TOUR OF MISIA〉シリーズに幾度となくファイナルの舞台となった横浜アリーナへの愛も。自ら“聖地”と呼ぶこの地のファイナルを飾るに相応しいデビュー曲「つつみ込むように…」の曲名をコールし、思いの丈をぶつけるように冒頭のホイッスルヴォイスがフロアに響き渡った瞬間、最高潮のヴォルテージが横浜アリーナに渦巻いていた。

 残念ながら〈THE TOUR OF MISIA〉シリーズは横浜アリーナ2デイズでその歴史に幕を下ろすこととなるが、DJやダンサーなどと繰り広げたこのツアーへの愛を語った後、新たなツアーを企図して舞い戻ることを宣言。ダイナミックでファンタスティックなステージの歴史は、どうやらその新たなツアー・シリーズに受け継がれていきそうだ。惜しい、寂しいと思う気持ちもあるものの、MISIAが存分に力を出し尽くしたと思われる姿を見て、充足感が上回っているような気もする。MISIAとオーディエンスとの“LOVE BEBOPしてるー?”“ビバってるー!”のコール&レスポンスの大きさが、それを物語っているのかもしれない。


◇◇◇
 
<SET LIST>

≪OPENING ACT:Little Black Dress a.k.a RYO≫
01 Free Session
02 Don't stop your feet
03 すごろく

≪MISIA≫
00 INTRODUCTION
01 LOVE BEBOP(Love Is All Remix)(*1)
02 Butterfly Butterfly(*1)
03 HIPHOP MEDLEY
 Escape 2016
 BACK BLOCKS
 Rhythm Reflection
 Change for Good
 CATCH THE RAINBOW
04 DJ Section(DJ Ta-Shi)(Including “Don't Stop Music”and more)
05 明日はもっと好きになる(*1)
06 真夜中のHIDE-AND-SEEK(*1)
07 キスして抱きしめて(sing with playing keyboard)
08 流れ星(sing with playing keyboard)(*1)
09 白い季節(sing with playing keyboard)(*1)
10 オルフェンズの涙(Long ver.)(*1)
11 FREEDOM(*1)
12 SUPER RAINBOW
13 Oh Lovely Day(*1)
≪ENCORE≫
14 HOUSE MEDLEY~MEGA RAIDERS HOUSE REMIX~(dance with Drag Queen)
 INTO THE LIGHT(DAVID SUSSMAN'S MIX)
 sweetness(Satoshi Tomiie Remix)
 逢いたくていま(Gomi Remix)
 Candle of Life(Make a Wish Remix)
 忘れない日々(HEX HECTOR'S CLUB MIX)
 THE GLORY DAY(Gomi Remix)
 Everything(Junior + Gomi Club Extended Mix)
15 あなたにスマイル:)(*1)(dance with Drag Queen)
16 つつみ込むように…
17 花(*1)
18 OUTRO(BGM“SUPER RAINBOW”)

※ (*1):Song from Album『LOVE BEBOP』

<MEMBER>
MISIA(vo,key)

重実徹(key)
山口周平(g)
日野“JINO”賢二(b)
Tomo Kanno(菅野知明)(ds)
DJ Ta-Shi(DJ/turntable)
Hanah Spring(cho)
Lyn(cho)
Tiger(cho)

弦一徹ストリングス(strings):
弦一徹(1st vn)
森琢哉(2nd vn)
カメルーン真希(vla)
内田佳宏(vc)

Dancer:
Haruna(ヤマナカ・ハルナ)
Haluna(ウエハラ・ハルナ/上原遥菜)
Kyo-ka(シモジョウ・キョウカ)
Calin(マツオ・カリン)
Miyu(スズキ・ミユ)
Kana(ナカノ・カナ/中野夏奈)

Drag Queen:
Hossy(ホッシー)
MARGARETTE(マーガレット)
Rachel D'Amour(レイチェル・ダムール)
MONDO(モンド)
DITA STARMINE(ディタ スターマイン)
LIL GRANDBITCH(リル・グランビッチ)





◇◇◇
















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