*** june typhoon tokyo ***

MISIA@日本武道館

Misia_catchtherainbow
 9年ぶりの武道館。
MISIAのライヴ・ツアー“OCN PRESENTS THE TOUR OF MISIA DISCOTHEQUE ASIA”@日本武道館の2日目を観賞してきた。当初は1階スタンドでそれほど悪い席ではないけれどステージ真横っぽいからなぁなどとと思っていたら、ホールで見たものは何とセンターステージ! 普段の武道館公演とは違って、360度に客席がある。ステージは工場の記号(歯車)のような形をした8角形の外周ステージに、その内側にもう1段高くこちらも8角形のステージが組まれてあった。その中央は丸でくりぬかれており、ここが上下してMISIAらが現れる仕組みだ。その昇降するせり上がり台が赤系の色の時は、上から見るとなんだかレコード盤を表しているかのようだった。武道館自体が8角形の建築物なので、観客席とステージがいっそう一体化しているような感じだった。
 バンドはセンターステージの北側(通常ならステージが設置されるあたり)に接していたが、ステージ下だったため、南側アリーナの観客は見えなかった様子。“ディスコティック アジア”というコンセプトだからかドラムレスで、メンバーも例年よりやや少なめ。そして、天井からはエスニック風な灯篭を思わせる照明が釣り下がっている。
  
 オープニング・イヴェントである真っ赤な和服を着た浜崎健による“レッド・ティー・セレモニー”が終わり(その時のBGMはダンクラとかディスコ・ナンバーが多かった気が。その当たりも“ディスコティック”?)、もうすぐ開演のアナウンスが会場に流れるやおら、19時3分あたりで暗転し、ライヴがスタート。狐のお面のようなものを被ったダンサーが登場した後、中央のせり上がり台からMISIA登場。狐のお面とは、稲荷神社にいる狐=日本古来の文化という日本的なイメージを模したものなのか? 中盤(ハウス・メドレーだったか)で同じようにせり上がり台からの登場した時は、ダンサーとともに大きな扇をかざしながらのダンスだったし、全体的にアジア・テイストを意識したデザインで飾られていた。オープニング・ナンバーは最新シングル「Catch the Rainbow」で、MISIAファンには既に浸透しているのか、会場全体に腕を左右にシェイクするダンスでいっぱいになった。畳み掛けるかのように“メガ・MISIA・メドレー”では、カクテル光線があちらこちらに飛びまくるなかで、早くもヴォルテージが一気に上がる。「Escape」でのMISIA自慢のホイッスル・ヴォイスは武道館の日章旗を突き、天井を突き、星空へ向かって突き進む勢いで、「TYO」でのタオル回しは、会場が360度見渡せることもあってか、これまでにない一体感が渦を巻くように沸き起こっていた。「以心伝心」での炎は、すでに観客の心には焚きつけられている興奮、恍惚といった炎をさらに刺激するような感じだった。MISIAは昨夏のライヴハウス・ツアー、台北から上海までアジア5都市でのオーヴァーシーズ・ツアー、そしてアリーナ・ツアーと精力的にライヴをこなしてきているのだが、その疲れを感じさせないヴォーカル・パワーを披露してくれていた。

 武道館というシチュエーションの質、センターステージ、ディスコをテーマとした構成、MISIAのパフォーマンスの高さ……長年、MISIAのライヴを観賞してきて「もしかしたら、このライヴは過去最高のライヴになるかもしれない……」と感じた。ただ、同時に思ったのは、序盤からのハウス・ヴァージョン・メドレー構成は毎年組み込まれている。問題は、後半そしてクライマックスへと繋がる中盤の構成だ、ということ。個人的にはダンサブルなサウンドが好みなので、バラード系が1曲もなくとも充分なのだが、もはや多彩なファン層を獲得したMISIAのライヴでバラードがないということはありえないだろう。だからこそ、どのようにバラード曲を盛り込み、ディスコティックの名に相応しいステージを構成するかに興味があった。
 結論としては、非常に残念だった。残念だったというのは、ガッカリというのではなくて、本当に過去最高のライヴとして語り継がれる寸前まで手が掛かったのに……惜しすぎるという意味での残念だ。
 その理由としては、1つはバラードの曲数が多かったあるいは時間が長かったということ。いや、バラードのパフォーマンスが悪かったという訳では決してない。新曲「LOVE TRULY」を丹精込めて歌い上げる姿はもちろん、「約束の翼」で見せたあの表現力は白眉で、当ライヴのベスト・パフォーマンスといってもいいほどだと思った。もう1つの理由が、その間に挟まれたMCだった。MISIA自身も「上手く伝えられなくてごめんなさい」と恐縮していたが、そのMCの長さと内容によって、バラードの時間を実際より長く感じさせたのかもしれない。このことはいつも思うんだけれども、MISIAの行動は尊重すべきものだし、彼女自身とてもピュアで物事に対して真摯過ぎるほどだ。それを何とか会場の人や多くの人に伝えたい気持ちが溢れすぎて、冗長なMCなどになってしまうのだが、いみじくもMISIA自身が言っていたが、彼女が思うメッセージは既に彼女が歌う曲の中にたっぷりと詰め込まれている。それだけでも充分に伝わっていることも多い。今回が通常のアルバム・タイトル・ツアーであればいいが、“ディスコティック”というテーマの下に構築したステージであれば、その“ディスコティック”により特化した構成を組んでもらいたかったというのが正直なところだ。ハウス・ヴァージョン・メドレーはフル・コーラスでないのに対し、バラードはフル・コーラス。そういったところも、“ディスコティック”という名の割りには、バラード配分が多く感じられてしまった原因のひとつなのかもしれない。
 その“残念”はその後の展開でさらに強く感じることとなった。というのも、後半からラストまでは、またもやハウス・ヴァージョン・メドレーでの怒濤の展開だったからだ。これこそが“ディスコティック”というに相応しい展開だっただけに、より中盤の構成が完璧だったなら……と思ったのである。そして、リストには「Everything」も「つつみ込むように…」もないのである。ラストこそ「INTO THE LIGHT」と定番の締めであったが、そういったMISIAクラシックスにそれほど頼ることなくこれだけのライヴ・ハウス的な一体感を、武道館という舞台で導き出したのは素晴らしいの一言。だからこそ……。(苦笑)

 どうしてそれほど“ディスコティック”に拘るのか、と言われるかもしれないが、自身がそういう嗜好が強いこともあるが、MISIAにとってハウス・ヴァージョンの存在なしには今の地位を築いていないと思うからである。多くの人が知っていることだと思うが、デビュー曲「つつみ込むように…」のリリース時に、楽曲の素晴らしさや群を抜いたMISIAの歌唱力が注目され、ジャパニーズR&Bディーヴァとして話題となったのは確かだ。ただそれも、DJ WATARAIをはじめとするリミックスがクラブユースとして注目されなければ、そこまで盛り上がったのかは微妙だ。だから、ハウスやディスコという要素はMISIAにとって不可欠なものであり、原点といってもいいものだと感じているからだ。だからこそ、の“ディスコティック”なのだ。少なくとも自分はそういう期待を持ってライヴに臨んでいたのだ。
 
 過去の自身のMISIAのライヴ・レポートを読み返すと、注文ばかりつけていて、満足したというような感想があまり述べられていない。(苦笑) しかしながら、それはMISIAが素晴らしいシンガーでエンターテイナーであり、日本で最高級といっていいライヴを創り出せるアーティストだから、自然とその求める質が高くなってしまってるのだ。
 その“MISIAが日本で最高級のライヴ・アーティスト”という事実は、当ライヴでもさらに確固たるものとなった。MCの時の声は繊細でか細い感じなのに、一旦歌唱モードに入ると魂を搾り出すかのごとくの情熱、息を呑むような迫力と伝播力、そしてハートをエンジョイさせるグルーヴと、規格外のヴォーカル・パワーで観客を魅了していくシンガーは他にはいないだろうから。

 もうこのあたりになると、贅沢を飛び越えて個人的なわがままとなってしまうのだろうが、もうちょっとバラード・タイムが短くて(短く感じさせて)、ハウス・ヴァージョンがもう少し長尺で流れがスムースであったなら、どんなに最高だろうかと。ただ、よく考えてみると、ハウス・ヴァージョンの時間が短く感じられたのは、それだけ充実したライヴ空間であったことを、自ら体感し証明していることにもなるんだけれども。(笑)

 自分のような変な拘りがない人には、充分満喫できるステージであると断言しておこう。過去を含めてもトップ・クラスのエンターテインメント・ステージであると。「THE GLORY DAY」でミラーボールが会場全体を輝かせた時、「Never Gonna Cry!」から「INTO THE LIGHT」へ展開する時……知らず知らずのうちに、身体を揺らし声を出し、心が満たされていく瞬間を体験するであろうことを。
 

◇◇◇

<SET LIST>

00 OPENING EVENT “RED TEA CEREMONY” (Performance by KEN HAMAZAKI)

01 Catch the Rainbow
~ MEGA MISIA MEDLEY ~
02 Royal Chocolate Flush
03 GROOVIN'
04 Escape
05 Rhythm Reflection
06 TYO
07 以心伝心
08 ~ BAND INTERLUDE ~
09 Yes Forever (Piano Ver.)
10 LOVE TRULY (NEW SONG)
11 そばにいて
12 約束の翼
13 ~ DANCERS PERFORMANCE SECTION~
~ MISIA HOUSE REMIX MEDLEY ~
14 To Be In Love
15 THE GLORY DAY
16 忘れない日々
17 Sweetness
18 Never Gonna Cry!
19 INTO THE LIGHT
≪ENCORE≫
20 太陽の地図
21 We are the music
22 JOYFUL MOMENT
23 少しずつ大切に (NEW SONG)


<MEMBER>

鈴木健治 (G)
種子田健 (B)
重実徹 (Key)
ASA-CHANG (Per)
DJ TA-SHI (DJ)
須藤豪(MP)
[Performer:A→Z]
CanDoo
HIRO
HYROSSI
KOTA
KYO-KO
MAYAKA
NADA
STEZO
TAKUYA
TATSUO
TOM
U-GE
YOSHIE

浜崎健 (RED TEA CEREMONY)

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