*** june typhoon tokyo ***

THE BRAND NEW HEAVIES@BLUENOTE TOKYO





 愛すべきクレイジーなステージは不変。

 ジャミロクワイ、インコグニートとともに90年代初頭に興隆したアシッド・ジャズ・ムーヴメントの核をなしたファンク・バンド、ザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズの来日公演を観賞。インコグニート同様、ほぼ毎年のペースで来日公演を行ない、多くの根強いファンを持つ彼らだが、今回は様相がやや異なる。というのも、これまでヴォーカリストが変わることはあってもオリジナル・メンバーは不変だったヘヴィーズだが、2016年よりサイモン・バーソロミューとアンドリュー・レヴィにヴォーカリストとしてスリーン・フレミングが加わるという編成へと移行。ドラムのヤン・キンケイドが不在となった。

 そのヤンと前ヴォーカルのドーン・ジョセフは新たにMFロボッツ(Music For Robots)を結成。アシッド・ジャズ/ファンク然としたヘヴィーズ作風のデビュー曲「ザ・ナイト・イズ・コーリング」を発表していて、音楽性には変化がないこと、サイモン&アンドリューが特段コメントを発していないところなどを考えると、どうやらヤンとサイモン&アンドリューとはあまり芳しくない離れ方だったようにも推測され、どちらが悪いということはないが、やや寂しくは感じる。

◇◇◇

≪ザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズのヴォーカリストの変遷≫
リンダ・ミュリエル(Linda Muriel/a.k.a. ジェイ・エラ・ルース:Jay Ella Ruth)
エンディア・ ダヴェンポート(N'Dea Davenport)
サイーダ・ギャレット(Siedah Garrett)
カーリーン・アンダーソン(Carleen Anderson)
サイ・スミス(Sy Smith)
ジーナ・ロリング(Gina Loring)
ニコール・ルッソ(Nicole Russo)
ドーン・ジョセフ(Dawn Joseph)
スリーン・フレミング(Sulene Fleming)

※エンディアは幾度となくヴォーカリストとして復帰しているので、名誉メンバー/殿堂ヴォーカル的な立ち位置。よって彼女が参加する時は“フィーチャリング・エンディア~”との名義になる
※作品参加以外では、2011年のライヴでエンディアから急遽ハニー・ラロシェル(Honey Larochelle)が代役となるなどの場合もあり

◇◇◇

 さて、ドーン・ジョセフが抜け、一時的にエンディア・ダヴェンポートがライヴ復帰するも、その後新たにヴォーカリストに起用されたスリーン・フレミングは、初期ジャミロクワイのドラマーのニック・ヴァン・ゲルダーとのデュオ“ヴァン・ゲルダー/フレミング”での活動や、ニュー・マスター・サウンズ、ザ・ファンタスティックス!、インコグニート作品にも参加(インコグニートではベーシストとして活躍しているフランシス・ヒルトンの妻らしい)。どこかで見たような記憶があったと頭を巡らすと、2015年のブルーイによるプロジェクト“シトラス・サン”のライヴにも帯同(その時の記事→「Bluey presents CITRUS SUN@BLUENOTE TOKYO」)。その点では一時期短期間だけヴォーカルを務めたニコール・ルッソとは異なり、アシッド・ジャズ・バンドに溶け込む下敷きは出来ていたといえる。
 新たなヴォーカリストとの邂逅、そしてヤン不在後にどのように舵を切って来たのか。そのあたりに注目してブルーノート東京に馳せ参じた。

 これまでのザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズの来日公演観賞は次の通り。(リンク先で該当公演の記事が読めます)

2003/06/04 The Brand New Heavies@新宿LIQUIDROOM
2006/12/11 THE BRAND NEW HEAVIES@LAFORET MUSEUM ROPPONGI
2007/11/03 The Brand New Heavies featuring N'Dea Davenport@Billboard Live TOKYO
2008/12/10 THE BRAND NEW HEAVIES@Billboard Live TOKYO
2010/02/22 The Brand New Heavies featuring N'Dea Davenport@Billboard Live TOKYO
2011/11/02 The Brand New Heavies@Billboard Live TOKYO
2013/05/17 THE BRAND NEW HEAVIES@duo MUSIC EXCHANGE
2013/09/19 THE BRAND NEW HEAVIES@BLUENOTE TOKYO
2014/10/24 The Brand New Heavies@BLUENOTE TOKYO
2015/08/19 The Brand New Heavies@COTTON CLUB


◇◇◇

 ステージ左手奥から右へ向かって長髪の鍵盤奏者のマット・スティール、サポートドラマーのルーク・ハリス、ウェイヴィなヘアスタイルのバックヴォーカル&パーカッションのリリー・ゴンザレス、右手奥にサックスのリチャード・ビーズリーとトランペットのブライアン・コルベットのホーン隊が配置に着くと、マネージャー(?)による煽りからサイモンとアンドリューが登場。サイモンはステージイン早々にファンの熱気や声援にゴキゲンな様子。バンドによるイントロダクションを経てスリーンが姿を現し、新生ヘヴィーズのお目見えとなった。

 ヘヴィーズの公演レポートでは毎回といっていいほどほぼ変わらないセット・リストを“愛すべきマンネリ”と称して久しいが、2017年もブレることはなかった。スリーンが味わい深く“歌う”楽曲をいくつか挟んだりはしたものの、「ネヴァー・ストップ」「ドリーム・オン・ドリーマー」「ミッドナイト・アット・ジ・オアシス」「スペンド・サム・タイム」「ステイ・ディス・ウェイ」「ユー・アー・ザ・ユニヴァース」「ドリーム・カム・トゥルー」といったヘヴィーズ・クラシックスに、近年の「スウィート・フリーク」などを絡めた構成。しかしながら、ブルースやラテンなど楽曲にさまざまなアレンジを施し、その場の“ノリ”によるアドリブを繰り広げるステージは、彼らの専売特許ともいえるファンキーでパーティな空間だ。長きに渡って鍵盤を務めるマット・スティールのさじ加減が絶妙なのか、特にサイモンの“お調子者”ぶりが発揮された展開にもノリの“緩み”を作らずにオーディエンスの興奮度を上昇させていく術は、いつも不思議に感じるのだが、知らずと身体を揺らされるというマジックを仕掛けているのではないかと思わせるほどだ。



 さて、スリーンだが、パンチのあるソウルフルな歌唱に寄っていて、前ヴォーカルのドーン・ジョセフと比べるとオリジナル・ヴォーカリストのエンディア・ダヴェンポートに近い声質か。サイモンがグラス一杯飲み干してからスリーンの歌い出しと同時にスキャットを被せたりしても難なくスキャットで応えるなど、サイモンやアンドリューの“いたずら”っぷりにもこなれているところをみると、“ノリ”というか波長が合うのかもしれない。コール&レスポンスなどフロアとの掛け合いにも積極的で、非常に目力と存在感のあるヴォーカリストといえる。ソウルフルだが情熱的な艶やかさを含んでいるヴォーカルワークは、シトラス・サンで観た時の印象と重なるか。もしかしたら、ハウスなどのクラブ作風のアレンジにはやや疾走感に欠くところも窺えるかもしれないが、それは細かい点を洗い出せばというくらいの話だ。
 ヤンに代わるドラムのルーク・ハリスは、英・ブリストル出身のエイドリアン・サウスことトリッキーのバンドで活躍し、近年にはそのトリッキーによるバンド・プロジェクト、スキルド・メカニクス・フィーチャリング・DJミロ&ルーク・ハリスに参加。ドラミング自体は図抜けたパフォーマンスやテクニックを押し出してきた訳ではないが、元来ヤンがそれほどテクニカルではないため、バンドの音鳴りとしての違和感はなし。スリーンの歌唱が映えるビートとリズムを安定して刻んでいたという印象だ。ただ、ヤンには近年でいえば「ヘヴン」などのヴォーカル曲があり、それがヘヴィーズのアクセントとして効果的だったのも事実で、それがない口寂しさは否めないところではある。

 しかしながら、やはり、ファンク・バンドにはつきもののホーン隊が加わると音色も輝き、華やぐ。バンド・メンバーにはそれぞれソロ・パートが用意されているのだが、トランペットのブライアンは被っていたハットをミュート代わりにして吹いてみたり、ドラムのルーク・ハリスはドラム・ソロの後半でマット・スティールがリズムに合わせて鍵盤に手を掛けようとするところをわざとリズムをずらしてソロ・パートを伸ばしていくなど、ヘヴィーズのジョイフルなノリが浸透している様子。特に圧巻だったのが、バック・ヴォーカル&パーカッションのリリー。ラストの「ドリーム・カム・トゥルー」でラテンなイントロダクションが鳴り出すと、ステージ中央へせり出て、フラメンコさながらの情熱的な踊りを披露。やおらスリムで背の高い黒人のウェイター(?)を呼び込んでのデュエット・ダンスに連続ターンも繰り出すなど、フロアのヴォルテージをさらに高めるのに充分なパフォーマンスで魅了した。

 これまで幾多のヴォーカリストを迎え、歌の発色を替えてきたヘヴィーズだが、元来はインスト曲が主だったこともあり、ヴォーカルやバンドなどメンバーの多様な変化に柔軟に対することで曲構成上のマンネリを打ち崩してきたともいえる。そして、彼ら自身がパーティ・ピープルとしてファンキーなステージを楽しむことに専念しているのが、ヘヴィーズのライヴに躍動と興奮をもたらしているといえる。長きに渡り根強い支持を獲得しているのは、このあたりに理由があるのかもしれない。


◇◇◇
 
<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 Diamond Light
02 Never Stop
03 Sometimes
04 ( )
05 Dream On Dreamer
06 Midnight At The Oasis
07 B・N・H
08 Brother Sister
09 (Slow Jam)
10 Sweet Freeek
11 Spend Some Time(including phrase of“Shake Your Body(Down To The Ground)”by The Jacksons)
12 Stay This Way
13 You Are The Universe
14 Dream Come True

<MEMBER>
Simon Bartholomew(g)
Andrew Levy(b)
Sulene Fleming(vo)

Bryan Corbett(tp)
Richard Beesley(sax)
Matt Steele(key)
Lily Gonzalez(back vo, perc)
Luke Harris(ds)


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