*** june typhoon tokyo ***

MISIA@さいたまスーパーアリーナ

Misia_jk_1024_768_2 OCN Presents “THE TOUR OF MISIA 2008 EIGHTH WORLD”@さいたまスーパーアリーナへ。さいたま新都心は寒かったですね。開演30分前に到着したのですが、すでに人でいっぱい。グッズ売り場も行列が続きます。タンブラーは代々木の時同様にオレンジと青のみが残っていて、他の色は完売。なんでこの2色は他の色に比べて人気がないんだろう?(笑)前回の代々木では(茶色と言ってしまった)オレンジを購入したので、今回はメロンパンとマフラータオルを買って(代々木ではFC東京のマフラータオルを振り回していたので…汗;)入場することに。座席は左側スタンドの前目で、代々木よりもステージが近い位置でした。ただ、サーチライトをもろに受ける位置でもあったので、見難い時もありましたが。
 座席について、さてメロンパンを…と思ったのですが、急にケンタッキーフライドチキンの和風かつバーガーセットに浮気してしまって、それらをモグモグと、開演が迫るなか冷や冷やドキッチョのモ~グタンとしていたら、18:15頃暗転してしまい、メロンパンは後回しになってしまいました。(ライヴ終了後、エクセシオールカフェでパスタ&ティーを食してしまったので、結局メロンパンダカフェタンブラーに紅茶を入れ、冷めたメロンパンを食いながらこれを書いてます…爆)。

 このライヴは、突如雷鳴がドドーン!と響いてスタートするのですが、周りには代々木や他の会場ですでに参加した人も多くいたのか、驚きの声が聞かれませんでした。代々木の時は、周りから“キャー”とか“ヒェ~ッ”(爆)という声が聞こえたので。
 いつも豪華なステージ・セットですが、今回はアルバム&ツアー・タイトルである“EIGHTH WORLD”の“WORLD”を意識した、球体をモチーフにした鉄骨が組まれていました。前方横の席では、そのセットの骨組みで観づらい部分もあったかもしれません(ステージ全体が前にせり出した感じではなかったので)。また、球体といっても、観客側は当然ながら空いているので、見方によっては、地球を包む大きな手のひらにも見えたかもしれません。愛で地球を、みんなをつつみ込む…というMISIAの思いもあったのかも。

 一発目は「以心伝心」で、ここでは下から突き上げるような炎が連発で出ます。以前のツアーでは、「Don't Stop Music!」や「砂の城」でも炎が使われましたが、数という意味ではバーゲン・セール並みの連発大サーヴィスぶりでした。
 アルバム『EIGHTH WORLD』でも、ライヴでも、個人的な今回の目玉のうちの1つは、“仕事も恋も魔法も全部欲しい”「Royal Chocolate Flush」だったのですが、それを前半で早々と披露してしまうサーヴィスぶり。20代も後半、30も目の前という彼女が“女の子だって欲張りなんだもーん”的な歌詞を綴るのは、何だか今の季節にピッタリの“どんなことしても恋をして幸せになるんだも~ん”的な歌詞で一世を風靡した広瀬香美にちょっぴり似た感じにも思えなくもなく、ちょっと微妙~と感じることも正直ありましたが(苦笑)、クラブ・スタイル、R&B/ソウル、ブラック然とした彼女のサウンドが好みの自分は、詞が微妙なんてこともすっかり忘れ、そのサウンドで踊りまくっておりました。
 マイケル・ジャクソン「スリラー」を彷彿とさせる冒頭、あるいは「Escape」「Rhythm Reflection」の流れを汲んだスペクタクル系のフレーズ(アウトロなんて「Escape」の雰囲気そっくりじゃないですか…爆)から“Ladies and Gentlemen...Get set...OK...One for love!(Go Go Go Go...) Two for joy! Three for fun! All for you!…”でスタートするイントロ、多少下世話で派手やかながらボトムをしっかりキープするビート、オーケストラヒットを多用した90年代ブラコン風のシンセ・サウンド、“ダンクラ”好きにはたまらないマクファデン&ホワイトヘッド(McFadden & Whitehead) 「Ain't No Stoppin' Us Now」のフレーズが思わず思い浮かぶ“Ain't No Stoppin 最後はきっと~'”…など、クラブ/ハウス系やR&B/ソウル系のフィルターからMISIAに辿り着いた自身にとっては、この上なく心が躍るツボが満載のナンバーがこの「Royal Chocolate Flush」なんですよ。メガ・ヒット「Everything」以降、バラードの歌姫MISIAという認識はさらに高まったという感じがしますが、個人的にはこっち方面の曲をもっとバンバン歌って欲しいので。簡単にいえば、SAKOSHIN、“Mega Raiders”サウンドが好きだってことなんですけども。
 ただ、単なる嗜好だけじゃないという意味で言わせてもらえば、MISIAがデビュー・シングルから話題となって“ジャパニーズR&B女性シンガー”というカテゴリーを作り上げるまでになり、数々のヒットを積み重ね多くのファンを獲得したのは、クラブ・サウンドなしにはなかったということです。DJ WATARAIなどのクリエイターによるリミックスがなかったら、一介の女性シンガーであっただけかも知れません。幅広い年齢層を獲得している現在では、リミックスやハウス/クラブ・サウンド、ブラック調の楽曲は以前に比べて“ウケ”が良くないのかもしれませんが、それは悪いということではなくて、彼女は既に大衆を揺れ動かしうる確固たるポップ・サウンドとそれを見事に表現出来る歌唱力をしっかりと持っているという証拠でもあるのですから。
 ですが、やっぱりこのあたりを通ってきた人間としては、ブラックなテイストをもっとやり込めてもらいたいという気持ちもあるわけで。代々木のライヴでは(自分の周りや前方で)座ってしまった人が多かった「MISSING AUTUMN」などは、濃厚ではないですが、ソウルやファンクといったコンテンポラリーな要素を多分に含んだマイナー調のブラック・トラックで、このあたりは腰で聴くことが日常化しているR&B好きにはツボだったりするのです。「sweetness」もしかり。まぁ、人それぞれですからいいのですが、少しでも解かってもらえたらいいなぁ、と。ただそれだけなのですけれども。
 最近、リミックス・アルバムがリリースされてませんが、個人的にはそろそろ出してくれないかなと思ってたり。オリジナルをハウス調にアレンジを変えた…というだけではなく、オリジナルとリミックスを聴き比べたりすると、その関係性やシンプルなようで高いサウンド・ワークで作られている原曲に、改めて気づくかもしれません。単にノリをよくしたのがリミックス…と思っている人がいたら、是非試してみてください。(もちろん、やっつけ感の高いリミックスも存在しますが)

 ちょっと思い込み強く語ってしまいました。あはは。(汗;)
MISIAは、最初は元気な声で心配など微塵も感じさせませんでしたが、中盤からハイトーン・パートをロー・アレンジに変更したりしていて、予想していましたが、声がかすれて満足したヴォーカルのままでは、終われませんでした。声のかすれが、急性扁桃炎からくるものなのか、ツアー中盤で疲労からくるものなのかは解かりません。水も通常以上に摂っていたし、正直ラストは辛そうでした。アンコールのラスト、「太陽のマライカ」が終わった時には、“この後もう1曲はないな…”と思いましたし。ただ、ここぞという時にはしっかりとハイトーン・ヴォイスを決めてくれるところは、根性座っているというか、プロの気質を見た気がしました。
 
 MISIAのパフォーマンスを見て毎回思うのですが、やっぱりミッキーとかミニーとかキティとかなんでもいいんですが、キュートでコミカルというか、ああいうキャラクターみたいな動きをするなぁ、と。ふざけてではなくて、素でやっているから余計に面白い(っていったら失礼か)。そういうのって内面からにじみ出るものだと思うんで、キャラクターのようなピュアでファンタジックなところがたくさんあるんだろうなぁと。あと昨季からヴィヴィッドなトランプマン@『なるほどザ・ワールド』ライクな衣装が多い気が。で、「Royal Chocolate Flush」の時にスクリーン・バックにトランプの映像が流れたもんだから、腰をシェイクシェイクして踊りながら、内心笑ってしまってました。
 あと、CX系『めざましテレビ』テーマ・ソングの「太陽の地図」のフレーズ、“ほらぁ~時計は~もぉう~8時~!!”の時に腕時計を見たら、(午後)8時過ぎだったのも、笑ってしまったな。

 MISIA自身のツアー・テーマであった、“幸せをみんなに届ける=Happy To you”(「太陽の地図」にもこのフレーズが出てきますね)というのは、成功だったと思います。MISIAが創る8番目の世界は、まだまだこれから無限の広がりを続けていくでしょう。


◇◇◇

Misia このツアーは2公演目の参加となった。構成やセット・リスト、MCはほぼ代々木の時(1/6の日記参照)と同じだが、この日のライヴは、代々木の時と異なることがいくつかあるのが解かっていたので、当初から参加を決めていたのだ(のちに横浜アリーナでの追加公演が発表されるだろうということをすっかり忘れてしまってたけれど…)。それは、

・ツアー・タイトルにもなっているアルバム『EIGHTH WORLD』発表後のライヴ

だということだ。今回はさらにハプニングで、

・発熱による急性扁桃炎でダウンした後のライヴ

ということも加わってしまったが。

 やはり、アルバムがリリースされてからのライヴは、いくらライヴに定評のあるMISIAだということがあったとしても、レスポンスが違う。観客それぞれが楽曲を聴き込み、それにさまざまな思いを馳せ、あるいはパフォーマンスを期待して会場へ足を運ぶからだ。当然、期待通り、予想以上のパフォーマンスに出会えた時は感動するし、一方で期待ほどではなかったり、調整不足などであれば、落胆もする。素晴らしい反応が返ってくる可能性もあれば、落胆度が高くなることもある。そういう意味では、非常にシビアな視線でのステージになるのだ。

 注目すべき点は、まず、すでに解かっている構成。
代々木のライヴ・レヴューでも記したが、冒頭のハウス・メドレーを配さなかったことがどうライヴに影響したか、だ。終盤の「Everything(Club Extended Mix)」~「INTO THE LIGHT」をハウス・メドレーとして捉えたが、既存の楽曲(『EIGHTH WORLD』収録曲ではない)のみによるもので、かつライヴ定番曲の連結ということで、新鮮味という意味ではやや欠けたものになったのではないか。特に「INTO THE LIGHT」はMISIAのライヴには欠かせない超鉄板曲だが、これを本編のラストでまとめあげるというのは、もう少し工夫があってもよかったのではないかと感じた。もちろん盛り上がらない訳は決してないが、毎回「INTO THE LIGHT」に頼るのはどうかと。演るのはいい、むしろこれを待ち望んでいる人たちが当然多くいるし、自身もそのうちの一人である。だが、ライヴに奥深さと“今”の風を吹き込むことが重要だと感じている自身にとっては、「INTO THE LIGHT」以外のライヴ・スタンダードが育たないのでは、と思ってしまうのだ。近年は、タオル回しで盛り上げる「TYO」がそれに比肩するものとなりつつあるが、まだ「INTO~」には及ばないだろう。だから、せめて本編ラストは『EIGHTH WORLD』の楽曲、あるいは意外性のあるナンバーで終えて欲しかったという気持ちはあった。
 あとは、個人的嗜好の問題。以前ハウス・メドレーで括られていたグルーヴィなナンバーを、単独でもっとやってくれたらと思っていたのだが、それはあまり見受けられなかった。それはMISIAの進化でもあるし、『EIGHTH WORLD』のメッセージ性を考えて、今回はパスしたのかもしれない。それでもハウス・アレンジで演奏することの多かった「sweetness」をオリジナル・ヴァージョンで披露したりしていることは、彼女なりのメッセージと受け止めるに相応しいだろう。

 次に、MISIAのライヴ・パフォーマンスと観客の反応。
アルバム・リリース後ということもあり、観客の反応は代々木に比べ格段に良かったと感じた。だがそれは代々木が悪いということではなく、むしろリリース前のコアなファン以外は楽曲を数多く聴いていないなかで、あれだけの観客を心酔させるステージングを披露していたという事実に、いまさらながら驚くということだ。そして、パフォーマンス、特にヴォーカルという点では、急病の影響もあったか、後半は殊に非常に辛いものとなってしまった。高く突き抜けるホイッスル・ヴォイスもほとんどなく、アレンジで凌ぐところもしばしば。ラストは声がかすれ、水を懸命に摂りながら、観客へ歌を届けなければという真摯過ぎる想いが垣間見られて、痛々しいと感じる場面もあったほどだ。
 
 残念ながら、ヴォーカルの質という意味では、満足たるものを評する訳にはいかない。だが、それ以上に苦しいながらでも、常に彼女が掲げているメッセージを届けるんだという気持ちは、溢れんばかりに伝わってきた。困難や苦難に遭い、もう道が閉ざされたと思っても仕方ない状況に陥っていても、自身を信じベストの限りを尽くせば想いは届き、道は拓ける……。それをてらいなく、感情のままに表現している姿は、感涙に値するものだった。それは、単に歌が好きで、歌うことが好きで、ライヴで歌うことが好きだという過去の彼女から、さまざまなメッセージを伝え、そして個々が持っているピュアなハートに働きかけて、少しずつでも幸せを共有出来る、そういう世界にしたいという想いを届けるメッセンジャーとして成長している姿でもあった。

 “EIGHTH WORLD”…それは、MISIAの8枚目のオリジナル・アルバムというだけではない。MISIAの新たなる可能性と創造性を築き上げる第一歩たる宣言だ。不可思議なことがあれば、“SEVENTH WONDER=七不思議”という捉え方で他人事で済ませてきてしまっていた過去から意識を変えて、さらなる苦悩が積まれた現代を“EIGHTH WONDER=八不思議”とするのではなく、七不思議からの脱却とそこからの第一歩である、愛と真摯な力強さで幸せを掴むための世界=“EIGHTH WORLD”を築き上げようという高らかな宣言なのだ。 パフォーマンスは充分では決してなかった。しかしながら、その意図と意志は、しっかりと確実にその根を観客の心に宿した。そんなライヴだったのではないかと感じた。


◇◇◇

<SET LIST>

01 以心伝心
02 Royal Chocolate Flush
03 Dance Dance
04 MISSING AUTUMN
05 sweetness
06 la la la
07 めくばせのブルース
~DJ TA-SHI&BAND SECTION~ including “Hybrid Breaks -interlude-”
08 君は草原に寝ころんで
09 ANY LOVE
10 そばにいて...
11 星の降る丘
12 To Be In Love
13 ~MEDLEY~
Everything(Club Extended Mix)
Color of Life
INTO THE LIGHT
≪ENCORE≫
14 TYO
15 Fly away
16 太陽の地図
17 太陽のマライカ


≪MEMBER≫
青山純 (Ds)
重実徹 (Key)
鈴木健治 (G)
種子田健 (B)
DJ TA-SHI (DJ)
須藤豪(Mani)

AKKO (Dancer)
HIRO (Dancer)
HYROSSI (Dancer)
MICHIE (Dancer)
MEDUSA (Dancer)
SUTEZO (Dancer)
TAKUYA (Dancer)
TATSUO (Dancer)
U-GE (Dancer)
YOSHIE (Dancer)
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