*** june typhoon tokyo ***

HALLCA @GARRET udagawa


 HALLCAとしての現在地も示した、ブリージンなメモリアル・ライヴ。

 確かに地下にあるフロアなのだが、渋谷・宇田川町のライヴハウス「GARRET udagawa」は、避暑地の夏を感じさせる爽やかな風に包まれていた。

 HALLCAが毎週日曜日の夜に配信しているYouTubeライヴの100回記念とソロ活動3周年を祝して開催された〈HALLCA YouTube LIVE #100 & 3rd annivessary -Best regards from now on-〉は、ハートウォーミング&リラクシンなムードを下地に、これまでのバンド・セットとはやや彩りを異にしたアレンジによる、ハッピーなヴァイブスが溢れるチルなステージとなった。

 個人的には、HALLCAのステージは5月末の代官山LOOPファイナルの企画イヴェント(記事→「〈HOME~Thank You “Daikanyama LOOP” Last Day~〉@ 代官山LOOP」)で観賞しているが、単独となると昨年11月の2ndフルバンド・ワンマンライヴ(記事→「HALLCA @六本木Varit.」)以来か。バンド・メンバーは、バンドマスターのクマガイユウヤは変わらないものの、キーボードに和久井沙良、パーカッションにさのみきひとという初コンビを配したフレッシュな陣容に。特に和久井の瑞々しくエレガントな鍵盤の音色が映えるアレンジが、ブリージンなムードを構築するのに奏功していた。


 さて、“ハッピーなヴァイブスが溢れるチルなステージ”と前述したが、とはいえ、よくある弾き語り中心としたアコースティック・ライヴとは質を異にしたものに。しっとりとした落ち着きした色合いというよりも、メロウ&チルなグルーヴを通底させているからか、シティポップ~ハウスボッサを意識した、喩えるならパトリック・ナゲルのイラストレーション(デュラン・デュラン『リオ』のジャケット・ヴィジュアルでもお馴染み)が似合うような、カラッとした夏風を心地よく感じるスタイリッシュなムードでフロアを盛り上げていく。“ミッドナイト・サマー”といった佇まいのひんやりとしたクールな熱情を帯びた「burning in blue」、リュクスなハウス・ボッサ的アプローチが光る「Precious Flight」、オリジナルよりも僅かにテンポとテンションを落としてトロピカルな煌めきを放った「熱帯のシトロナード」、キラキラと波が光る水面と静謐が満ちる深海とを瞬時に往来するような静から動、動から静への流れが美しい「Utopia」など、時計の針を自在に操るように優雅と軽妙を行き来した展開は、このバンドでのアレンジならではということだろう。

 アンコールには、Especia時代にHALLCAのヴォイストレーナーとしても活動し、EspeciaのほかPASSCODEや我儘ラキアらに楽曲を提供、現在はフューチャーソウル・アイドルのYORUWAKOREKARAの音楽を担当している作・編曲家、Rillsoulがスペシャルゲストとして登場。RillsoulがEspeciaへ提供した楽曲のなかから「Rittenhouse Square」をデュエットで披露するサプライズで、フロアに70年代ジャジィソウルなムードを横溢させてくれた。


 RillsoulとのMCの際には「HALLCAの歌唱が成長」についてトークをしたのだが、Rillsoulもそれをソロ活動以降特に実感していたそう。確かに、当初のメロディラインをなぞることに強い意識を傾けることから抜け出し、メロディラインに執着せず、楽曲の世界観をその時の感情で自らの表現しようとするチャレンジングな姿勢も窺える。フェイクやタメを入れたヴォーカルワークなどはその一つなのだろう。

 個人的には、HALLCAの歌唱は、一聴して強烈な印象を与えるような派手な“キメ”がある訳ではない一方で、さまざまな楽曲やアレンジに順応出来る自在性が“ウリ”だと感じている。そこから生まれるグルーヴの良さが強みであり、他と異なるポップネスを携えていることこそが、HALLCAをHALLCA足らしめているオリジナリティなのだと思う。その意味では、さまざまな素材を使った音色をプラスした面白い趣向もあったのだが、パーカッションが若干過剰気味に思えるところもあり、結果的にHALLCAのヴォーカル性質を活かす音の“間”を打ち消してしまっていたのは、やや残念なところではあった。

 些末なことに気になる部分はあったとはいえ、愉悦を覚えたヴォーカル&パフォーマンスが何よりHALLCAの充実を物語っていた。ファンとの交流を深める意味もあるYouTubeライヴの延長となるステージ版ということもあろうが、肩肘張らないナチュラルなアティテュードがリラクシンなアレンジともマッチ。趣を異にした新鮮なステージを体験したことで、これからの音楽性や表現力の振幅の広がりにも繋がっていくのではないだろうか。ただ眼前のことをこなすことばかりのグループでの時期を経て、自らHALLCAという看板を背負い、アーティストとしての航海へと旅立って3年。地道に継続してきたYouTubeライヴの回数の積み重ねが、新たなHALLCAを創出する種となっているのかもしれない。
 
◇◇◇

<SET LIST>
BGM before the show ~Medley of cover songs played on YouTube program
 二人セゾン(欅坂46)
 A Song for xx(浜崎あゆみ)
 Sunday Morning(Maroon 5)
 いい日 旅立ち(山口百恵)
 Prisoner Of Love(宇多田ヒカル)
 ロマンスの神様(広瀬香美)
 愛はおしゃれじゃない(岡村靖幸 w 小出祐介)

01 Sweet Pain
02 パーム&ラジオ(Original by waiai feat. HALLCA)
03 burning in blue
04 Precious Flight
05 熱帯のシトロナード(Original by はるかりまあこ)
06 Utopia
07 WANNA DANCE!
≪ENCORE #1≫
08 Rittenhouse Square(HALLCA with Rillsoul)(Original by Especia)
09 Milky Way
≪ENCORE #2≫
10 WANNA DANCE!

BGM after the show
 Tell Me Something Good(Rufus and Chaka Khan)
 I'll Take You There(The Staple Singers)
 Give Up the Funk(Tear the Roof off the Sucker)(Parliament)
 Hang Me Up To Dry(Cold War Kids)
 ...and so on

<MEMBER>
HALLCA(vo)

クマガイユウヤ(g/Band Master)
和久井沙良(key)
さのみきひと(perc)


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◇◇◇

【HALLCAに関する記事】
2018/08/04 HALLCA『Aperitif e.p』
2018/11/26 HALLCA@中目黒 楽屋
2019/08/30 HALLCA @Jicoo THE FLOATING BAR
2019/11/02 HALLCA @CHELSEA HOTEL
2020/01/19 HALLCA,WAY WAVE @渋谷 RUIDO K2
2020/01/25 〈FRESH!!〉 @六本木 VARIT.
2020/11/01 HALLCA @六本木Varit.
2020/12/13 HALLCA,WAY WAVE @渋谷 RUIDO K2
2021/05/31 〈HOME~Thank You “Daikanyama LOOP” Last Day~〉@ 代官山LOOP
2021/07/25 HALLCA @GARRET udagawa(本記事)


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