*** june typhoon tokyo ***

HALLCA,WAY WAVE @渋谷 RUIDO K2


 好相性のコラボレーションで楽しませた、リアルソウルシスターズのデビュー2周年公演。
 
 振り返ってみれば、HALLCAの2020年初ステージは1月のWAY WAVEの定期公演〈第25回部員集会〉(記事はこちら→「HALLCA,WAY WAVE @渋谷 RUIDO K2」)でのゲストだった。そして、WAY WAVEにとっても2020年の定期公演〈部員集会〉は、1月のHALLCAのゲストに始まり、12月のHALLCAのゲストで終わるという形に。WAY WAVEのデビュー2周年を記念したライヴは、彼女たちが愛情とリスペクトを注ぐHALLCAとのコラボレーションを組み込んでの笑い、喜び、そして涙のステージとなった。会場はWAY WAVEの根城といってもいい渋谷のRUIDO K2で、入場数制限、検温、事前調査票提出、消毒、場内換気などのコロナ禍対策を行なった上で開演となった。

 デビュー2周年とクリスマス・シーズンということもあり、サンタ帽と銀のコスチュームで登場したWAY WAVEの小池杏奈、優奈姉妹が冒頭で披露したのが「サンタが街にやってくる」の邦題でもおなじみのクリスマス・ソング「サンタ・クロース・イズ・カミング・トゥ・タウン」。笑顔満開で歌い踊るなか、曲中では後ろに控えるDJありんこもトナカイのカチューシャをつけてセンターステージに出てきて、ファンサーヴィスとばかりに3名並んでカメラポーズをとるなど、冒頭からこのステージへの待ち遠しさとステージで歌えるという愉しさを実感しながらのパフォーマンスとなった。

 続く「始まりの予感」からはオリジナル曲へ。イントロがSMAP「Peace!」風だったり(それも元ネタありそうだが → Char「Smoky」だった)、ジャクソン5「ABC」マナーのモータウン・グルーヴやディスコ・フレイヴァが散りばめられた心躍るソウル・ナンバーを、ハーモナイズを駆使しながらソウルフルに歌い上げる。「巨乳の女で再生数を稼ごうという(笑)」と語ったフィットネスジムの巨乳の女性に嫉妬する二人をコミカルに描いたミュージックヴィデオが楽しい「あいたいのあいたいのとんでいけ」は、ソウル歌謡に重心を寄せたソウル・ポップで、マイリーンや荻野目洋子もカヴァーしたアリソン・リメリック「メイク・イット・オン・マイ・オウン」をソウル歌謡調に仕立てたようなフックが耳を惹く。


 ところで、WAY WAVEのプロフィールの詳細については、前述した1月の定期公演の記事(「HALLCA,WAY WAVE @渋谷 RUIDO K2」)に譲るとして、デビュー2周年とはいえ、芸能活動は長い彼女たち。歌唱力もあり、ギターなども演奏。そして何よりも、天真爛漫で妹を溺愛する姉・杏奈と、その愛情を受けながら竹を割ったような実直さと勝気な面が垣間見える妹・優奈というスリムビューティなリアル姉妹ということで、当然ながら他のユニットとは一味異なる絶妙の呼吸がある。“SOUL&FUNK”を標榜していて、実際にソウルフルな楽曲が多い。たとえば、いわゆるアイドルや若手のグループに、大人が愛聴していたレトロな曲を歌わせるというような、演者がそれらを知らないことを逆手にとったギャップで楽しませる手法は今となっては珍しくもないが、WAY WAVEはそれとは異なり、しっかりとソウルやファンクへの思い入れが窺える。彼女らはそれぞれ作詞や作曲を行なうのだが、自作曲の作風からはソウルやファンク・ミュージックを好んでいることが分かるようなメロディやサウンドゆえ、伊達に“SOUL&FUNK”を掲げている訳ではないことも解かる。ギター・コーナーで披露した「ウィスキーコーク」などソウル・ブルース寄りの作風が多めなのは、彼女らの嗜好ともいえそうだ。

 その前には“アナ雪”ことディズニー映画『アナと雪の女王』の主題歌「レット・イット・ゴー」のカヴァーを披露したが、これはやや毛色が異なる楽曲だが、プロデューサーから「中途半端じゃなく全力で歌うなら」との条件で、“冬の歌”としてセレクト。姉妹共に伸びやかで実力派に偽りない歌唱を繰り出し、サビの突き抜けるようなハイトーンもしなやかに歌い切っていた。

 カヴァーということでは、後半にカヴァーコーナーとしてホイットニー・ヒューストン特集が配され、チャカ・カーンをカヴァーした「アイム・エヴリ・ウーマン」とホイットニー・ヒューストンの2ndアルバム『ホイットニーII』からのシングル「すてきなSomebody」を披露。どちらもリリース当時の煌めきを削がずに晴れやかなヴォーカルで歌い切る姿が痛快だが、個人的に思うところとしては、何か一つWAY WAVEらしさが加わると、よりカヴァー曲としてのステイタスも上がるのではないかということ。彼女たちは実力的にも優れた歌唱力の持ち主であることに疑いはないが、だからといって単にカヴァーしただけでは、注目に値するそれには近づけるとは限らない。ピッチの安定感や伸びやかなヴォーカルワーク、阿吽の呼吸によるハーモニーと秀抜なところは多くあるが、そこへ何か彼女たちらしさを明確に感じる“色”があると、単なるカヴァーが自分たちの楽曲へと染まっていく気がする。それはちょっとした表現の押し引きだったり、細やかな心象をヴォーカルに乗せるような声の表情だったりと、さまざまな要素がありそう。色香や艶は次第に経験が埋めてくれるだろうし、無理にそれらを出そうとせずに今の若さならではの歌唱で良いと思うが、やや実直過ぎるきらいもあるか(一概に実直な歌唱が悪い訳ではないが、個性という面で他を圧倒するほどの区別はつきづらい)。

 終盤はソウル・ロックな「焼酎Night」や80年代AOR~ニューミュージック調の「SUMMER GIRL」、ヴィンテージなリズム&ブルースと70年代ソウル・フレイヴァをごった煮にした「Hello New Wave」、ブルース・ロックとモータウンのグルーヴを融合させたような「Looking For Woman」で畳み掛けるソウル・メドレーへ。このあたりは歌い慣れていることもあるだろうが、実に楽しそうに歌っているのが好感。歌わされているのではなく、自ら好きな歌を歌っている感じがヒシヒシと伝わってくるパフォーマンスだった。


 さて、誤解を恐れずにいえば、彼女らは楽曲的嗜好も含めて“玄人好み”なのだろう。ただ、裏を返せば、ポテンシャルがありながらヒットに繋がるポピュラリティが少々足りないということにもなる。もちろん安易にキャッチーにすればいいということではない。ヒットという観点から言えば、たとえば、久保田利伸は「LA・LA・LA LOVE SONG」というポップな曲、MISIAは「Everything」というオーセンティックなバラードと、それまでのテイストから見るとキャッチー濃度の高い楽曲をヒットさせたことでシーンでの確固たるステイタスを確立したが、一方で、それまでのR&Bやファンク、ソウル路線で次第に支持を得た歌手が、タイアップを機にポップネス全開の楽曲へと鞍替えした結果、従来のファンが徐々に離れ、セールスが尻つぼみになったという例は枚挙にいとまがない。このポップネスのバランスがヒットするという点では非常に重要なカギとなると思うのだが、確かにそのバランスの支点を探り出すのは難しい。
 ただ、それを踏まえていえば、WAY WAVEには“玄人好み”ばかりに閉じこもることなく、フレキシブルに音楽性を吸収し、個性が光る楽曲やヴォーカルワークを多く描出することが出来れば、ワンステップ上のシーンへと飛躍する可能性は十二分にあると感じている。

 アンコールでのラスト・ソングとなった「ちっぽけな僕のでっかいラブソング」が終わりに近づくと、杏奈も優奈も目に光るものが。優奈は「スターになった気分で最後の曲ですといったら自分がカッコイイと思ってしまって泣けてきた」と笑いをとっていたが、やはりコロナ禍の影響もあって、思うようにステージにも立てず、悶々とした日々を過ごし不安が頭をもたげるなか、ファンの支えによって歌い踊れることへの感謝の念がこみ上げてきた様子。実力はトップシーンの中に入っても引けを取らないだろうから、あとはヒットが欲しい。リアルソウルシスターズという強みもあり、一つのきっかけで大化けするポテンシャルを秘めているだけに、柔軟にさまざまな要素を吸収、咀嚼してオリジナリティを高めていってもらいたいところだ。

◇◇◇

 スペシャルゲストとなったHALLCAは、中盤にソロで3曲、WAY WAVEとのコラボレーションで2曲、アンコール後に再度WAY WAVEと1曲共演し、6曲のパフォーマンス。waiaiに客演した「パーム&ラジオ」はステージでは初めて目にかかったか。HALLCAの明るく晴れやかな温暖系の声色にフィットしたラヴリーなポップスだ。続いて「パーム&ラジオ」同様にハッピーなヴァイブスと伸びやかなフックが印象的な「Twisted Rainbow」へ。キーボードを前に朗らかな表情で歌う姿が実に快く見える。個人的に彼女のバロメーターは“いかに楽しげに歌えているか”だと感じていて、小難しい顔をチラつかせてる時は歌唱も不安定な印象があるのだが、その意味ではこの日は終始表情が柔和で晴れやか。それが全てという訳ではないが、ピッチの安定などの技術的な微調整の必要はあっても、楽曲の訴求力という意味では、歌唱の際の気持ちの持ち方に左右されるタイプゆえ、この日の表情から推測するに、なかなか良い手ごたえを感じていたのではないだろうか。
 ソロ3曲目は、リズムに変化を持たせたクラップとともに演じた「guilty pleasure」のBlackstone village Remix版。ホーンによるオリエンタルなムードをアクセントにしたエキゾチックな作風とともに、HALLCAの華やかながらも甘美な薫りを漂わせるヴォーカルで楽しませてくれた。


 ここでWAY WAVEの二人を呼び込んでのコラボレーション・セクションへ。今ステージでは、アンコールでの「WANNA DANCE!」を含めて、ミディアム以降のノリの良い楽曲でコラボレーションを実現。「Catch your night」では優奈が歌詞を飛ばしてしまう(珍しい)ハプニングもあったが(歌い終わった後に「もう一回やりたい!悔しい!」と叫んだ後「これがライヴだ!」と切り替える諦めの良さ?も)、この3名による共演は、ハーモニー含めヴォーカルの声圧が高まって、楽曲の奥行きを深く広くさせるアクトとなるから、非常に爽快だ。

 続く「Pink Medicine」は、杏奈がエレキギター、優奈がカホンを手に取っての生演奏スタイルで披露。HALLCAの「この曲はギターとビートが重要になってくるから」の言葉に「凄いハードル上げてくる」「ヤバイ」と苦笑いする姉妹だったが、「でも、この曲やってて凄く楽しい」と発していたように、コラボレーションの楽しさがポジティヴに働き、それぞれの楽器演奏と歌唱から心地よいグルーヴが生まれていた。HALLCAもソロで披露するのとはまた違ったアプローチに新鮮味を感じていたようで、姉妹のコーラスに支えられての終盤のファルセットによるハイトーンのフェイクは、緊張のなかでもナチュラルな心持ちでエンジョイしながら歌えているようにも感じた。曲が終わり杏奈が思わず「あと5回やりたい!」と言ったのも、あながち嘘ではないのだろう(すぐに優奈から「それはお家でお願いします」というツッコミもアリ)。

 本編終了後、杏奈が「すぐに呼んでください」と催促してのアンコール1曲目は、WAY WAVE姉妹がHALLCAとDJありんこをステージに招いての「WANNA DANCE!」。姉妹がチラチラとDJありんこが踊っているのを確認して、さらに笑顔になっていくのが印象的だった。元来ノリの良いファンキーなテイストだが、前回の共演でもアンコールで披露しているだけあって、力みのないジョイフルなパフォーマンスに。フロアにも微笑みがこぼれる清々しいグルーヴが横溢していた。


◇◇◇

 演者同士の相性の良さも手伝って、WAY WAVEの定期公演のHALLCAゲスト回は(他の回が未経験ゆえ比較は出来ないが)、そのなかでも良いヴァイブスが伝わるステージなのではないか。コロナ禍ゆえ人数制限があるのは、現時点で致し方ないところだが、それが解除されたあかつきには、多くのファンで埋め尽くされたフロアを前に、この好相性のコラボレーションを実現してもらいたい。そう感じた120分のステージだった。

◇◇◇

<SET LIST>
≪WAY WAVE SECTION≫
00 INTRODUCTION
01 Santa Claus Is Coming to Town
02 始まりの予感
03 あいたいのあいたいのとんでいけ
04 マジカル恋愛体質
05 クリスマスパレード(Original by ANNA☆S)
06 Let It Go(Original by Idina Mentzel, song from Disney“Frozen”)
≪WAY WAVE Guitar SECTION≫
07 ウィスキーコーク(with 玉山留依)
08 白と神様(with 玉山留依)
09 僕らの旅(with 玉山留依)(New Song)
≪HALLCA SECTION≫
10 Diamond(Yohji Igarashi Remix)
11 パーム&ラジオ(Original by waiai feat. HALLCA)
12 Twisted Rainbow
13 guilty pleasure(Blackstone village Remix)
≪COLLABORATE SECTION≫
14 Catch your night(with WAY WAVE)(Original by HALLCA & yuca)
15 Pink Medicine(with WAY WAVE)
≪WAY WAVE Cover SECTION≫
16 I'm every woman(Whitney Houston Ver. / Original by Chaka Khan)
17 I Wanna Dance With Somebody(Original by Whitney Houston)
≪WAY WAVE Soul Medley SECTION≫
18 焼酎Night
19 SUMMER GIRL
20 Hello New Wave
21 Looking For Woman
≪ENCORE≫
22 WANNA DANCE!(WAY WAVE, HALLCA, DJ arinco / Original by HALLCA)
23 ちっぽけな僕のでっかいラブソング

<MEMBER>
WAY WAVE are:
小池杏奈(vo,g)
小池優奈(vo,g,cajon)


DJ arinco(DJ)
玉山留依(cajon)

Special Guest:
HALLCA(vo,key)


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