今から十数年前夫が突然見知らぬ人を連れてきました。
釣りをしに海に行ったらトンネルで寝起きしながら釣りをしていた人と知り合った
仲良くなったし着の身着のままなので風呂に入れて一晩泊めてあげたいとの事
私としては彼を見て、すぐには「うんいいよ!」とは言えない状態だった。
夫はお人よしと言えばいいのか私の考えの及ばない事をすることがある。
自分の意思を曲げない夫に押し切られその晩は見知らぬその人を泊めた。
福島から釣りをしに来ているという彼・・・
初めて会う人とは思えないほどの人懐っこさにびっくり・・・
「何で見知らぬ人を泊めているんだろうと」不思議な思いもありましたが忘れられない体験でした。
それから思い出したように突然訪ねて来る彼の気楽な性格にもなれ・・・
そんな関係が数年続いた時に
あの地震が・・・・
福島の〇〇さんとしか分からずケータイも持たない彼の唯一の連絡先は自宅の電話番号だったのですが
地震の前にケーターイを落としてしまって情報が消えてしまっていたので・・・
連絡を取ろうにもどうにもならずに消息が途絶えてしまいました。
家族ではニュースが出るたびの「福島の〇〇どうなあったかな~~」と
彼もこっちの連絡先知っているのだから連絡が来ないのは・・・><。・・と悪い方に考えてしまうばかりでした。
その彼が先日今までのように突然訪ねてきたのです。
「無事だったのですね」との私の第一声に・・・
「もうそろそろ落ち着いたので明日粟島に釣りに行くついでに寄ってみた」と・・・
地震で辛い思いをした人のようには思えないくらい飄々とした彼
話しを聞けば彼も電話番号を書いた紙を無くして連絡が出来なかったとか・・・
出会った時と全然変わらない彼は今まで連絡が途絶えていた人とは思えない再会でした。
震災の時には原発で仕事をしていて夜勤でそこに行く途中だったとか・・・
ただならない揺れに現場に電話するもつながらず引き返して自宅に戻った時は・・
津波の第一波が来て引いていく最中だったそうで・・・
その時は「大丈夫だ」と言う人とただならぬ事態にまずは高台にと意見が2通りあって・・・
そこで逃げた人はほとんど助かったがまだ大丈夫と思った人たちは第2波の大津波に持っていかれたそうです。
地獄を見たと飄々と語る彼ですがその時父親を亡くされたそうです。
いったん逃げたのに車に乗って様子を見に行った最中に流されたとか・・・
ニュースでは様々な事を見聞きしていますが実際体験した方の話しを聞くのはこれが初めて・・・
亡くなられた人が並べられ番号を振ってあって父親の番号が142番だったとか・・・
小学生が避難をしている時にダンプカーが通ってみんなを載せて逃げたので助かった話しとか・・
生々しい話しに只々頷くだけでした。
地震の後2年くらい原発の仕事をして今は除染の仕事をしているそうで
命がけの仕事をしているらしい・・・
ニュースでみた除染の話し・・・
獣があちこちに出没してきて荒れ放題の村を除染しているそうです。
一先ず落ち着いたので休みの間また好きな釣りの旅に出かけてきたと・・・
福島らか真っ先に新潟に来たのかと思ったら島根県の沖ノ島に行ってきた帰りだとか・・・
ふと粟島にも寄って行こうと思い途中で高速を降りたそうで・・
粟島にいくついで 寄ったと言う
「ついでかよ!」と夫は呆れていましたが・・
行き当たりばったりの彼の生活にはいつもおどろかされます。
彼にしてみれば臨機応変どこでも寝れるしと言う感じで人が思うほど深く考えていないのかも知れないと思いました。
危険な仕事をしながら釣りの旅に行く資金をためて思う存分釣りをする。
そんな浮世離れした生活をしている彼の夢は定年後には沖ノ島に移住して住みつくことだとか・・・
穏やかな気候に年中好きな釣りをしながら暮らしたいそうで・・・
彼ならきっと実現させるのではないかと思います。
生涯独り身で淋しくないのかなと思うけど身軽な事で生涯釣りが恋人なんだなと思わずにはいられない。
再会で連絡先も再び交換・・・
年賀状を出す事を約束しましたがきっとこっちからの一方通行になるのではと思っています(笑)
粟島汽船まで送った夫は・・・
前もってわかっていたら一緒に行きたかったみたい・・・
釣れたら帰り持ってくると言い残した彼ですが期待しないでいようと思う・・・
彼にとって約束って言葉は皆無に近いものだと思うから~~^^