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【Verizonでの配信開始 = 2007年11月20日 ; ウェブ放送開始 = 2007年11月26日】※『Lost』のウェブ専用ミニ・エピソード・シリーズ『LOST: MISSING PIECES』の第3弾。ベン&ジャック編。
*『LOST: MISSING PIECES』はウェブ専用に新撮影された連作短編シリーズで、削除シーン集ではない。
*全13話。毎週、新エピソード(各2~3分)がアップされる予定。
*各ミニ・エピソードがメイン・ストーリーのどこに組み込まれるのかは鑑賞者の解釈次第。
*「PIECES」には複数の意味があるかも?
*以下、リンク先は基本的に、キャラクターの場合はLostpediaの当該ページ、それ以外は当ブログ内の当該エピソード。
Episode 101 "King of the Castle" (Ben & Jack編)
Directed by: Jack Bender
Written by: Brian K. Vaughan
Starring: Michael Emerson as Ben & Matthew Fox as Jack
Guest Starring: None
≪ノヴェライゼーション≫ (ト書き部分は勝手に付け足したもの)
アザーズ村。ベンの家の書斎。
本棚には書籍がぎっしりと並んでいる。ジャンルは古典小説、ミステリー、哲学書等、多岐にわたっている。
ベンは読書好きなのだ。
そのせいか、子どもの頃から眼鏡をかけていたが、この島が持つ不可思議な治癒作用により、やがて、それも必要でなくなった。
自分の視力が回復したとハッキリ感じたのは父を毒ガスで殺し、リチャードら「ホスタイルズ」こと「アザーズ」の一員となった日だ。それはダーマ計画が潰滅した日でもある。
視力回復は島がくれたご褒美だったのかもしれないし、あるいはベンが「俺はこれで一人前になった」と自覚したせいかもしれない。
ところで、いくら読書好きとはいえ、ジュリエットが主催する読書会だけはちょっと苦手だった。
自分1人で読みたいものを読む方が性に合っている。
ここしばらくはオーシャニック航空815便の生存者たちの件で多忙だったため、読書会も休みになっていたが、今朝から、また、再開されていた。
今日は天気が良いので、トムたちのように外でフットボールに興じる者もいれば、ゲームルームでビリヤードを楽しんでいる者もいる。
ともかく、一部の者を除き、皆、久しぶりに村に戻って来たので、一息入れているところだ。
この区域は電磁フェンスで囲ってあり、パスワードを知っている者しか入って来れないから安全である。
電磁フェンスは元々、ダーマ計画の技師たちが「モンスター」を寄せ付けないようにするために作った装置だったが、部外者や敵対者に対する有効な防御手段にもなっている。
もっとも、ベンは「オーシャニック航空便の生存者たちがこの場所を嗅ぎ付け、ジャックを探しに来るのも時間の問題だろう」と踏んでいた。
いや、ベン個人にとってはその方が都合が良い。
特に、ジョン・ロックという奴が来てくれて、潜水艦を壊してくれるようなことになれば、最高だ。
ベンは「アメリカに帰らせてあげる」という条件でジャックに腫瘍摘出手術をしてもらった。
それが、事の成り行きで、ジュリエットまで帰らせてあげることになってしまった。
こんなに簡単に、「帰りたい者は帰らせる」という弱腰を見せたら、部下たちに示しがつかなくなる。
かといって、自分の「約束」は信用できないと思われるのも困る。
だから、「不可抗力」によって道が閉ざされるような展開になるのが一番望ましいのである。
ベンはそんな思惑をジュリエットらに悟られないよう、「私はジャックとチェスをやる」と言い訳して、読書会をサボっていた。
チェスにはプレイヤーの性格がよく現れるから、ジャックの腹を探るのにもちょうど良い。
逆に、ジャックにこちらの本心を気取られる恐れはあまりないだろう。彼はジュリエットに比べて、遥かに甘ちゃんだからだ。
実際にチェスをプレイしてみて、ジャックの腕がなかなかのものである事がわかったが、案の定、正攻法しか使わない。
ベンは次の手を考えながら、「違和感があるんじゃないかね?」と水を向ける。
ジャックは「いや、そうでもない。しばらくプレイしてないが、子どもの頃に父親に教えてもらったからね」と応じる。
父親か...そういえば、ベンは自分の父に何かを教えてもらったり、一緒に遊んでもらった覚えがない。
ベンの母エミリーは彼を産み落とすと同時に死んでしまったのだが、父ロジャーはそれをベンのせいだと決め付け、冷たく当たっていた。
ロジャーはいつも、夜遅く帰宅すると、ビールを飲みながらTVを見て、そのまま寝てしまうのが日課だった。
食事もファストフードか冷凍食品ばかりで、いつも別々に食べていた。
玩具を買ってもらったこともなかったし、一緒に出かけた記憶もない。
誕生日さえ、一度も祝ってもらえなかった。
ロジャーはベンの顔を見ると、わけもなく叱りつけていた。
幼いベンにはよく理解できなかったが、ロジャーはベンの顔を見るたびにエミリーの死に際を思い出し、悲しみと怒りが込み上げて来たのだ。
だから、夜もわざと遅く帰宅し、ベンと顔をあわせないようにしていたのだった。
特に、ベンの誕生日が一番辛かった。それはすなわち、エミリーの命日だったからである。
ベンはクラスメートの誕生パーティーに呼ばれたこともあるが、まともなプレゼントを買えるほどの小遣いはもらえなかったし、もちろん、こちらから、ありもしない誕生パーティーに友だちを招待することはできなかった。
その結果、友だちは減ることはあっても、増えることはあまりなかった。
だから、ベンは孤独を紛らわせるため、読書に耽るようになった。
本なら、図書館に行けばタダで読めるので、小遣いがなくても問題なかった。
ダーマ計画にリクルートされて、この島に来てからも、ロジャーとベンの生活パターンはほとんど変わらなかった。
食事もダーマ印の缶詰やインスタント食品がほとんどだった。
ここには一応、農場もあり、鶏や食用ウサギも飼われていたが、ロジャーは料理を一切しなかったので、ベンにとっては意味がなかったのである。
そんなある日、ベンはリチャードと出会ったのだ。
リチャードのグループはずっと以前からこの島に住んでおり、後から来たダーマ計画のメンバーたちと対立していた。
ベンはなぜか、リチャードたちに惹かれ、いつしか共感を覚えるようになった。
父に対する恨みも手伝っていたかもしれない。
ベンは自分が「アザーズ」に加わった時のことを思い出しながら、「違和感...というのは、この村に、こうして我々とともにいるという事に関してだよ」と言い直す。
ジャックは「俺は自分が望んでいたものを得ただけだ」と答える。
ベンは「まともにチェスができる相手とプレイするのは久しぶりだ。どうしたら、ずっとここにいてもらえるかなあ?」と探りを入れる。
ジャックは少し不安になる。こいつ、どういうつもりなんだろう?また、何か、企んでるんだろうか?
ベンは笑いながら、「そんな怖い顔をするな。ただ、訊いてみただけだよ。君と私は取引をした。私は約束を守るつもりだ」と付け足す。
「つもり...?」
「まあ、厳密には私の一存で決まるわけではないのだ。島が君を行かせたくないということになれば、君は帰れなくなる」
「なんだって!?島が潜水艦を沈めるとでも言うのか?」
ベンは内心ギョッとするが、顔には出さない。
こういうポーカー・フェイスはベンの得意とするところだ。
ベンは「いや、まさか。私は君が故郷に帰るのを邪魔したりはしないよ」と苦笑してみせてから、「だが、実際にここを去った後、また戻りたいと思う日が来るかもしれないよ」と謎めいたことを言う。
「それは絶対にないね」
「私なら、『絶対にない』などと断言したりはしない。そして、もし、その日が来たら、今の会話を覚えておきたまえ」
この時のジャックには思いも及ばなかったが、その日はやがて、本当に訪れることになるのである。
チェスのボード上ではジャックのクィーンがベンのキングに迫っていた。
次の手でチェックメイトになりそうだ。
しかし、ベンはキャスリングにより、キングを安全圏に逃がす。
「惜しかったねぇ」
ジャックはそこまで考えていなかった。
正義感が強いジャックにとって、キャスリングは卑怯とまではいかなくても、少なくとも裏技のようなものであり、自分では一度も使ったことがない。
だからといって、他のプレイヤーも使わないとは限らないのだが、久しぶりだったせいもあり、油断していた。
このあたりがジャックの弱点でもあり、かつ美点でもあった。
≪全セリフ≫
BEN: So this must be strange to you.
JACK: Not really. [It's] been a while, but my dad taught me to play when I was a kid.
BEN: Actually, I was talking about you being here... with us.
JACK: I got what I wanted.
BEN: It's been a long time since I had anybody with a little skill to play against. I don't suppose there is anything I could do to convince you to stick around...?
JACK: ....
BEN: Relax, Jack. Just an idle question. We have a deal. I fully intend to honor it.
JACK: Intend to... or you will?
BEN: Well, it's not entirely up to me. If the Island doesn't want you to leave, it won't let you.
JACK: What, the... the Island's gonna sink the sub?
BEN: No. No. I promise you, I won't do anything to prevent you from getting home. But if you do leave this place, the day may come when you want to return.
JACK: Never.
BEN: I've learned never to say "never." And if that day comes, I hope you remember this conversation.
(Benがキャスリングを行う)
JACK: ....
BEN: It was a nice try though.
*『LOST: MISSING PIECES』はウェブ専用に新撮影された連作短編シリーズで、削除シーン集ではない。
*全13話。毎週、新エピソード(各2~3分)がアップされる予定。
*各ミニ・エピソードがメイン・ストーリーのどこに組み込まれるのかは鑑賞者の解釈次第。
*「PIECES」には複数の意味があるかも?
*以下、リンク先は基本的に、キャラクターの場合はLostpediaの当該ページ、それ以外は当ブログ内の当該エピソード。
Episode 101 "King of the Castle" (Ben & Jack編)
Directed by: Jack Bender
Written by: Brian K. Vaughan
Starring: Michael Emerson as Ben & Matthew Fox as Jack
Guest Starring: None
≪ノヴェライゼーション≫ (ト書き部分は勝手に付け足したもの)
アザーズ村。ベンの家の書斎。
本棚には書籍がぎっしりと並んでいる。ジャンルは古典小説、ミステリー、哲学書等、多岐にわたっている。
ベンは読書好きなのだ。
そのせいか、子どもの頃から眼鏡をかけていたが、この島が持つ不可思議な治癒作用により、やがて、それも必要でなくなった。
自分の視力が回復したとハッキリ感じたのは父を毒ガスで殺し、リチャードら「ホスタイルズ」こと「アザーズ」の一員となった日だ。それはダーマ計画が潰滅した日でもある。
視力回復は島がくれたご褒美だったのかもしれないし、あるいはベンが「俺はこれで一人前になった」と自覚したせいかもしれない。
ところで、いくら読書好きとはいえ、ジュリエットが主催する読書会だけはちょっと苦手だった。
自分1人で読みたいものを読む方が性に合っている。
ここしばらくはオーシャニック航空815便の生存者たちの件で多忙だったため、読書会も休みになっていたが、今朝から、また、再開されていた。
今日は天気が良いので、トムたちのように外でフットボールに興じる者もいれば、ゲームルームでビリヤードを楽しんでいる者もいる。
ともかく、一部の者を除き、皆、久しぶりに村に戻って来たので、一息入れているところだ。
この区域は電磁フェンスで囲ってあり、パスワードを知っている者しか入って来れないから安全である。
電磁フェンスは元々、ダーマ計画の技師たちが「モンスター」を寄せ付けないようにするために作った装置だったが、部外者や敵対者に対する有効な防御手段にもなっている。
もっとも、ベンは「オーシャニック航空便の生存者たちがこの場所を嗅ぎ付け、ジャックを探しに来るのも時間の問題だろう」と踏んでいた。
いや、ベン個人にとってはその方が都合が良い。
特に、ジョン・ロックという奴が来てくれて、潜水艦を壊してくれるようなことになれば、最高だ。
ベンは「アメリカに帰らせてあげる」という条件でジャックに腫瘍摘出手術をしてもらった。
それが、事の成り行きで、ジュリエットまで帰らせてあげることになってしまった。
こんなに簡単に、「帰りたい者は帰らせる」という弱腰を見せたら、部下たちに示しがつかなくなる。
かといって、自分の「約束」は信用できないと思われるのも困る。
だから、「不可抗力」によって道が閉ざされるような展開になるのが一番望ましいのである。
ベンはそんな思惑をジュリエットらに悟られないよう、「私はジャックとチェスをやる」と言い訳して、読書会をサボっていた。
チェスにはプレイヤーの性格がよく現れるから、ジャックの腹を探るのにもちょうど良い。
逆に、ジャックにこちらの本心を気取られる恐れはあまりないだろう。彼はジュリエットに比べて、遥かに甘ちゃんだからだ。
実際にチェスをプレイしてみて、ジャックの腕がなかなかのものである事がわかったが、案の定、正攻法しか使わない。
ベンは次の手を考えながら、「違和感があるんじゃないかね?」と水を向ける。
ジャックは「いや、そうでもない。しばらくプレイしてないが、子どもの頃に父親に教えてもらったからね」と応じる。
父親か...そういえば、ベンは自分の父に何かを教えてもらったり、一緒に遊んでもらった覚えがない。
ベンの母エミリーは彼を産み落とすと同時に死んでしまったのだが、父ロジャーはそれをベンのせいだと決め付け、冷たく当たっていた。
ロジャーはいつも、夜遅く帰宅すると、ビールを飲みながらTVを見て、そのまま寝てしまうのが日課だった。
食事もファストフードか冷凍食品ばかりで、いつも別々に食べていた。
玩具を買ってもらったこともなかったし、一緒に出かけた記憶もない。
誕生日さえ、一度も祝ってもらえなかった。
ロジャーはベンの顔を見ると、わけもなく叱りつけていた。
幼いベンにはよく理解できなかったが、ロジャーはベンの顔を見るたびにエミリーの死に際を思い出し、悲しみと怒りが込み上げて来たのだ。
だから、夜もわざと遅く帰宅し、ベンと顔をあわせないようにしていたのだった。
特に、ベンの誕生日が一番辛かった。それはすなわち、エミリーの命日だったからである。
ベンはクラスメートの誕生パーティーに呼ばれたこともあるが、まともなプレゼントを買えるほどの小遣いはもらえなかったし、もちろん、こちらから、ありもしない誕生パーティーに友だちを招待することはできなかった。
その結果、友だちは減ることはあっても、増えることはあまりなかった。
だから、ベンは孤独を紛らわせるため、読書に耽るようになった。
本なら、図書館に行けばタダで読めるので、小遣いがなくても問題なかった。
ダーマ計画にリクルートされて、この島に来てからも、ロジャーとベンの生活パターンはほとんど変わらなかった。
食事もダーマ印の缶詰やインスタント食品がほとんどだった。
ここには一応、農場もあり、鶏や食用ウサギも飼われていたが、ロジャーは料理を一切しなかったので、ベンにとっては意味がなかったのである。
そんなある日、ベンはリチャードと出会ったのだ。
リチャードのグループはずっと以前からこの島に住んでおり、後から来たダーマ計画のメンバーたちと対立していた。
ベンはなぜか、リチャードたちに惹かれ、いつしか共感を覚えるようになった。
父に対する恨みも手伝っていたかもしれない。
ベンは自分が「アザーズ」に加わった時のことを思い出しながら、「違和感...というのは、この村に、こうして我々とともにいるという事に関してだよ」と言い直す。
ジャックは「俺は自分が望んでいたものを得ただけだ」と答える。
ベンは「まともにチェスができる相手とプレイするのは久しぶりだ。どうしたら、ずっとここにいてもらえるかなあ?」と探りを入れる。
ジャックは少し不安になる。こいつ、どういうつもりなんだろう?また、何か、企んでるんだろうか?
ベンは笑いながら、「そんな怖い顔をするな。ただ、訊いてみただけだよ。君と私は取引をした。私は約束を守るつもりだ」と付け足す。
「つもり...?」
「まあ、厳密には私の一存で決まるわけではないのだ。島が君を行かせたくないということになれば、君は帰れなくなる」
「なんだって!?島が潜水艦を沈めるとでも言うのか?」
ベンは内心ギョッとするが、顔には出さない。
こういうポーカー・フェイスはベンの得意とするところだ。
ベンは「いや、まさか。私は君が故郷に帰るのを邪魔したりはしないよ」と苦笑してみせてから、「だが、実際にここを去った後、また戻りたいと思う日が来るかもしれないよ」と謎めいたことを言う。
「それは絶対にないね」
「私なら、『絶対にない』などと断言したりはしない。そして、もし、その日が来たら、今の会話を覚えておきたまえ」
この時のジャックには思いも及ばなかったが、その日はやがて、本当に訪れることになるのである。
チェスのボード上ではジャックのクィーンがベンのキングに迫っていた。
次の手でチェックメイトになりそうだ。
しかし、ベンはキャスリングにより、キングを安全圏に逃がす。
「惜しかったねぇ」
ジャックはそこまで考えていなかった。
正義感が強いジャックにとって、キャスリングは卑怯とまではいかなくても、少なくとも裏技のようなものであり、自分では一度も使ったことがない。
だからといって、他のプレイヤーも使わないとは限らないのだが、久しぶりだったせいもあり、油断していた。
このあたりがジャックの弱点でもあり、かつ美点でもあった。
≪全セリフ≫
BEN: So this must be strange to you.
JACK: Not really. [It's] been a while, but my dad taught me to play when I was a kid.
BEN: Actually, I was talking about you being here... with us.
JACK: I got what I wanted.
BEN: It's been a long time since I had anybody with a little skill to play against. I don't suppose there is anything I could do to convince you to stick around...?
JACK: ....
BEN: Relax, Jack. Just an idle question. We have a deal. I fully intend to honor it.
JACK: Intend to... or you will?
BEN: Well, it's not entirely up to me. If the Island doesn't want you to leave, it won't let you.
JACK: What, the... the Island's gonna sink the sub?
BEN: No. No. I promise you, I won't do anything to prevent you from getting home. But if you do leave this place, the day may come when you want to return.
JACK: Never.
BEN: I've learned never to say "never." And if that day comes, I hope you remember this conversation.
(Benがキャスリングを行う)
JACK: ....
BEN: It was a nice try though.