アメリカに暮らす

アメリカのTV番組や日常生活等について綴ります。ニュースのネタバレ度は弱~中、エピガイのネタバレ度は強です。

『ぼんくら』(宮部みゆき著)

2006年06月14日 | 読書
『ぼんくら』(宮部みゆき著)を読み終えた。【以下、ネタバレ度=中】

構成を簡単に書くと、序盤は深川界隈の『鉄瓶長屋』に起こる事件を「ぼんくら」な同心の目を通して描くという読みきり連作形式だ。ただ、事件といっても刃傷沙汰はほとんどなく、賭場で負けた男の娘が女郎部屋に売られそうになったとか、新興宗教に凝った一家が夜逃げしたとかいう、あまり同心の出番が無さそうな事件がほとんどだ。

それがいつの間にか、「実は一連の事件は裏で繋がっていたらしい」ということになり、全部読み終わった時点で結果的に長編の捕物帳になってしまっているところが面白い。これは著者が最初からそう意図してたのか、途中から方向転換することになったのかは不明。解説者は前者だと思い込んでるらしいが、私は後者じゃないかと思う。どちらにしろ、宮部みゆきの「ワザ」を堪能できた。

主人公は「面倒くさいことは大嫌い」で、しかも「岡っ引きを信用しない」という、これまでの捕物帳にない珍しい同心だが、もしかすると、本物の同心の多くはそうだったのかもしれないな…と思わせる自然さがある。そして、その自然体(?)のおかげで、軽いタッチでサクサクと読ませてくれる。

脇役にも魅力的なキャラが多く、彼(彼女)らの続編(最近、出版されたらしい)での活躍も期待したい。

ところで、「深川」で「岡っ引き」といえば、宮部みゆきの別の読みきり連作シリーズで活躍した(している?)茂七親分が思い浮かぶが、『ぼんくら』にも名前だけ出て来る。もっとも、すでに隠居の身で、この話は一連の茂七シリーズの数十年後という設定らしい。ともかく、茂七親分が元気そうなのはファンとしては嬉しい。

なお、捕物帳や時代劇のファンなら一度は疑問に思ったことがあるはずの「岡っ引き」と「目明し」の違い、それから各種「同心」の役割や縄張り等も本文中でわかりやすく解説されてるので、捕物帳ガイドとしても役立つ。あと、宮部みゆきの時代小説にほぼ必ず登場する「差配」という職業(長屋の管理人のようなもの)についても詳しく説明されている。

あと、『ぼんくら』には食べ物がよく出て来るが、これはもしかすると、故・池波正太郎へのオマージュだろうか?

ともかく、宮部ファンでも、そうでない人でも楽しめるので、ぜひ御一読を。


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2 コメント

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偶然立ち寄ってみました (きりん)
2006-06-15 20:28:02
はじめまして。きりんです。続編「日暮し」も面白かったですよ。宮部みゆきの超能力ものでない時代劇が好きです。一番好きなのは「火車」でしょうか。今はぜんぜん関係ないですが、「池袋ウエストゲートパーク」を読み始めました。面白いです。
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宮部みゆき中毒 (ジョウ)
2006-06-16 01:21:42
きりんさん、はじめまして。ご来訪&コメント、ありがとうございます。私も実は『火車』で宮部みゆきにハマったんです。優れた作品ですよね。



『日暮し』も早く読んでみたいです。私は宮部みゆきの本をしばらく読まないと禁断症状が出るんです(笑)。



『池袋ウエストゲートパーク』というのは初耳でしたので、検索してみました。面白そうですね。今度、日系書店に行った時にチェックしてみます。ご推薦、ありがとうございます。
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