【社説】最後の賭けに出た北朝鮮、近付く決定的な瞬間
2017/09/23 08:36 朝鮮日報
北朝鮮・朝鮮労働党の金正恩(キム・ジョンウン)委員長は22日、自らの名義で声明を発表し、その中で米国のトランプ大統領に
よる国連演説を念頭に「史上最高の超強硬な措置の断行を慎重に考慮する」「トランプが何を考えていても、それ以上の結果を
目の当たりにするだろう」などと述べた。
トランプ大統領は19日の国連演説で「北朝鮮を完全に破壊するしかない」などと語っていた。北朝鮮の故・金日成(キム・イルソン)
主席も故・金正日(キム・ジョンイル)総書記も自分名義の声明を発表したことがないため、今回の金正恩氏の声明は非常に異例だ。
北朝鮮のリ・ヨンホ外相は声明が発表された直後、国連で金正恩氏が語った「超強硬な措置」について「私見だが、おそらく
太平洋上での水爆実験ではないか」と述べた。この発言もおそらく周到に準備されていたはずだ。
今月3日に北朝鮮が6回目の核実験を行った直後、国内外の専門家の間から「北朝鮮は空中での核実験の誘惑に駆られるだろう」
という指摘が相次いでいた。弾道ミサイルに核弾頭を搭載し、これを空中で爆発させる実際の能力を示すことができれば、北朝鮮は
核武装が完全に完成したと考えるはずだ。もしこれが成功すれば、国際社会が認めるかどうかに関係なく、北朝鮮は完全な
核保有国になる。だとすれば北朝鮮がこのような挑発行為に走る可能性は十分にあり得るだろう。
ただし空中核実験はその危険性故に、1980年代以降はどこの国も行っていない。もし北朝鮮がこれを実行に移せば、
これまでとは比較にならないほど深刻な挑発行為になる。しかも北朝鮮が太平洋に核ミサイルを飛ばすには日本上空を通過
させねばならないし、これに対する日本国民の反応は想像に難くない。もしミサイルが故障を起こすとか、あるいは核弾頭が
予定された位置や高度以外の場所で爆発すれば、想像をはるかに超える事態が発生するだろう。
そのため太平洋上での水爆実験は今のところ恐喝にとどまっている可能性が高い。問題は北朝鮮が核のカードを完全に手にする
ため、実際にこの段階を越えようと考えていることだ。もし本当に挑発行為が強行されれば、それが成功するか失敗するかに関わり
なく、あまりにも大きな後遺症を残すことになる。成功すればもはや米国も国際社会も北朝鮮に対してどうすることもできず、
韓国の5000万人の国民は金正恩氏の核の人質になるだろう。一方で失敗すれば米国の軍事攻撃が現実的な問題になるはずだ。
トランプ大統領は北朝鮮と取引する第3国の企業や金融機関に対し、米国との取引を禁止する「セカンダリー・ボイコット」を命じる
行政命令に署名した。これは言うまでもなく中国を念頭に置いたものだが、これがこのまま実行に移されれば、中国・ロシアと
北朝鮮の通常の貿易取引は事実上中断する以外にない。しかしこれで金正恩氏が核・ミサイル開発をやめるとは考えられない。
金正恩氏は核によって北朝鮮体制の安全を保証させることにとどまらず、自ら韓国を支配するより攻撃的な考えをすでに明確にして
おり、しかもその目標はほぼ達成されたと考えている。
今や北朝鮮の核・ミサイル問題は最後の決定的な瞬間に近づいている。北朝鮮は最後まで目標を目指すことをすでに決めている。
その北朝鮮に対して米国は経済制裁や圧力による可能な措置はほぼやり尽くした。今や残っているのは北朝鮮による自らの生死を
かけた最後の賭けと、米国による追加の対応だ。その米国の対応には当然軍事攻撃も選択肢の1つに含まれている。
軍事攻撃は局地戦であれ全面戦であれ戦争につながるが、あるいは戦争を避けるためその直前の崖っぷちで米朝が妥協するかも
知れない。ただしこの妥協の中に韓国が食い込む余地はない。いずれにしても対立と緊張は極限にまで到達するだろうし、
それこそまさに超非常状態だ。韓国政府も徹底した現実認識に基づいて最善を尽くし、今のこの状況にうまく対処することを
願うばかりだ。