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中国人の大金持ちが「中国製ワクチン」ではなく「外国製」を求めるワケ。 医薬品をめぐる不良、劣化、収賄問題。 福島香織

2020-05-21 18:37:27 | 医療・疾病・疫病・パンデミック・新型コロナウイルス

中国人の大金持ちが「中国製ワクチン」ではなく「外国製」を求めるワケ。医薬品をめぐる不良、劣化、収賄問題

2020/05/19  現代ビジネス   福島香織

 

コロナ「ワクチン開発競争」が激化!

新型コロナ肺炎の流行は一時的なものではなく数年にわたってくり返す恐れが指摘

されはじめている。その中で、ウイルスとの戦の勝者になり、いち早く経済回復を

果たすためにもワクチン開発がカギとなる。

 

とくに米中がワクチン開発にしのぎを削っているが、さきにワクチンを開発したほうが、

ポストコロナの世界で大きなアドバンテージをもつことになるだろう。

 

このワクチン競争、中国は国家最優先任務とされている。

 

中国は三種類のワクチンが臨床試験にはいっている。

康希諾生物(カンシノバイオロジクス)が解放軍のバイオ専門家の陳薇少将チーム

(軍事科学院軍事医学研究所バイオ研究所プロジェクト)ともに取り組むアデノ

ウイルスベクターを使ったワクチン、北京科興生物(シノバック・バイオテック)の

不活化ワクチン、武漢生物製品研究所の不活化ワクチンがそれ。9月に実用化を目指

しているという。

 

一方、米製薬大手のファイザーがドイツのバイオベンチャー・バイオNテックとともに

開発中のワクチン候補4種が5月4日、米国で臨床試験に入ったという。

 

9月に米食品医薬局から緊急使用許可を得て年末までに実用化を目指すという。ほかにも

米バイオベンチャーのモデルナが米国立アレルギー感染症研究所と協力して官民一体で

進めるRNAワクチン研究が3月に治験の第一段階を行い、近く治験の第二段階に入るという。

夏に第三段階を行い、すでにスイスの製薬会社ロンザとの協力契約を結び、生産準備に

入っているという。さらに、米イノビオ・ファーマシューティカルズのDNAワクチンが

4月に治験に入っている。

 

 

不良、劣化、収賄…中国の「根深い問題」

世界では、4月末の段階でおよそ80以上の研究チームがワクチン開発に参与している。

 

米中以外にも英国オックスフォードとアストラゼネカが合同開発中のアデノウイルス

ベクターワクチンが臨床試験にはいっている。世界の2大ワクチンメーカー、

仏サノフィと英グラクソ・スミスクラインが共同で今年下半期にもワクチン候補の

臨床試験を始め、2021年の提供を目指すという。

 

5月2日に知人華人男性に殺害された新型コロナウイルスの感染メカニズムを研究して

いた華人研究者のピッツバーグ大学医学部の劉賓助教授が所属する米ピッツバーグ

大学も「貼るタイプ」の新型コロナワクチン開発に王手をかけている。

劉賓教授の殺害はいまのところ“痴情のもつれ”が動機だとみられているが、時期が時期

だけに新型コロナの治療やワクチン研究の国際競争と関係あるのか、と思っている

人もいるのではないか。

 

ワクチン開発にしては米中とも異例の速さを競っているが、この急ぎすぎが、ワクチンの

質に影響するのかどうかが懸念されるところだ。通常、この種のワクチンは、安全性と

効果が確立されるまでに十年前後の時間がかかることもしばしばだ。

 

サノフィは、ワクチンの臨床実験には少なくとも三期にわたっておこなわねばならず、

また治験に参加するボランティアも数十人から数千人およぶ、という。一つのワクチンに

認可が下りるまではだいたい二年かかるものだ。

 

特に心配なのは中国の方だ。というのも、医薬品の不良問題、劣化ワクチン問題や

その背景にある収賄、不正問題は数十年前から最近に至るまで繰り返されている中国の

根深い社会問題なのだ。

 

劣化ワクチンや偽ワクチンの摘発は健康被害を引き起こしたものも含めて十数件は

起きている。

 

ニューヨークタイムズの「警告」

しかも中国のワクチン開発に参与する四社のうち武漢生物製品研究所、シノバックは

過去に欠陥ワクチン製造や収賄スキャンダルを引き起こした「前科持ち」なのだ。

そのあたりをニューヨークタイムズも報じて警告を鳴らしていた。

 

武漢生物は2018年夏に、品質基準を満たしておらず不良品とされた三種混合ワクチン

(ジフテリア、破傷風、百日咳)およびその他疾病のワクチンを40万本以上出荷し、

結果的に14万人の乳幼児に接種された“事故”を起こしている。

 

この「欠陥ワクチン」騒動は、吉林省長春市にある長春長生科技製造の狂犬病ワクチンが、

製造過程に記録の改ざんがあると内部告発があったことから起きた。

当局が調べた結果、狂犬病ワクチンだけでなく三種混合ワクチンにも問題があり、

長春長生製造の25万本が山東省などに出荷され21万本がすでに乳幼児に接種されていた

ことなど判明、当時は中国社会をゆるがす大問題となった。

 

このときの調査強化で、武漢生物の3種混合ワクチンにも問題があったことも発覚

したのだが、長春長生が矢面に立つ形で厳しい処罰が科され、武漢生物に対しては、

政府は、その出荷分の売り上げを違法所得として没収し、罰金を科して、9人の幹部を

処罰するにとどまった。

長春長生は、13億ドルの罰金が科されるほか、企業トップ幹部15人以上が逮捕されている。

 

ちなみに武漢生物のワクチンは不良反応を引き起こしたとして、被害者から二度ほど

賠償請求裁判をおこされ17・5万ドル相当の賠償金を支払ったこともある。

 

また、少なくとも三度にわたり地方の疾病予防コントロールセンターの官僚たちに、

ワクチン購入に対する謝礼と言うの名の賄賂を支払っていたことも暴かれている。

 

 

2010年にも狂犬病ワクチンの不良品問題が発覚するも、不良品回収率が20%に満たず、

使用されてしまったことがあった。

 

問題を起こしたのは一度ではないにもかからず、つぶれずに国家最優先任務のワクチン

研究開発プロジェクトに参与できるのは、この企業が国務院直属の中央企業・中国医薬

集団(シノファーム)傘下にあり強い政治的背景を持っているからに他ならない。

 

中国の金持ちが「海外生産のワクチン」を求めるワケ

また、シノバックは、2002年から2014年にかけて、医薬品認可担当の官僚に5万ドル

近い賄賂を贈り、不正に医薬品認可を受けていた。当時の北京科興生物科技の総経理は、

北京大学教授の伊衛東だが、処罰されることなく、現在の同企業のCEOに出世している。

この企業は北京科興ホールディングスと北京大学未名生物工程集団が合資で創ったバイオ

ハイテク企業で、伊衛東は中国バイオ研究の権威であり、国家863計画(中国のハイテク

発展計画)バイオ領域の審査委員でもある。

 

こうした国有企業は、中国のワクチン産業の40%の市場を独占しており、中国の監督

管理機関は問題がおきても見ないふりをしがちなのだった。だから、多くのワクチン

生産企業は、問題があっても企業がつぶされることはないとタカをくくっているところが

ある。

 

そんな中国のワクチン研究開発生産企業が、当然大衆の信用を得ているとはいいがたい。

この業界のブラックホールは中国人民が一番よく知っている。だから金持ちたちは

あえて、国産ではなく海外生産のワクチンを求めるのである。

 

人民日報など中国国内報道によれば、新型コロナ肺炎ワクチンに関する煩雑な手続きを

できるだけ削減して、すべての資源を製薬企業に投じているという。

 

その投資の規模と、中国的な規制の甘さで、これら企業のワクチン開発のスピード感は

米国や英国をすでに超えていると評価されている。

 

中国の「隠蔽体質」

だが、新型コロナウイルスの武漢の実験室からの漏洩説が米国やフランスから疑われて

いる背景も、SARSやエイズのワクチン開発のために使用したコロナウイルスの取り扱いの

ずさんさや実験室の管理の甘さが背景にある。

 

さらに、感染が拡大し世界に広がったのは中国当局の隠蔽体質だと世界の人々も中国人も

思っている。

 

こうした過去の劣化ワクチン禍を真摯に反省することもなく、管理や規制の緩さを

検証することもなく、隠蔽の問題を謝罪することもない中国が、かりに世界に先駆けて

ワクチン開発と実用化に成功したとすれば、国際社会はそれを受け入れていいのだろうか。

 

ワクチン市場は早い者勝ち、という気持ちを戒めて、中国製ワクチンに対しては、

慎重に向き合うのが懸命だと思うのだが、どうだろう。

 


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