米CVSの保険大手買収案、本当の狙いは「打倒アマゾン」
2017 年 10 月 27 日 15:43 JST THE WALL STREET JOURNAL
米アマゾン・ドット・コムがまた攻勢に出ている。ただし今回その標的となっているのは、同社がまだ参入して
いない業界だ。
事情に詳しい関係者によると、ドラッグストアチェーン大手CVSヘルスが医療保険大手エトナに660億ドルの
買収提案を行った一因は、アマゾンが調剤業界に参入する構えを見せていることにある。CVSの経営陣が先ごろ
取締役会に示した戦略の1つが大手保険会社の買収だったという。
CVSなどドラッグストアチェーン各社は、アマゾンが調剤業界に参入した場合の対抗策を練る必要に迫られている。
今年5月、アマゾンが同業界への参入を検討していると伝わり、CVSや同業各社の株価は下落した。今週26日には、
アマゾンが複数の州で医薬品卸売業の許可を得たとの報道を受け、CVS株などが再び売られた。
事情に詳しい関係者によると、アマゾンが同社の法人向け通販サイトを通じて有資格者に医療機器を卸すには
免許が必要となる。それでも、事業拡大を続けるアマゾンは、調剤業界への参入を検討中だと別の関係者は述べた。
米独禁当局は6月、ドラッグストアチェーン最大手ウォルグリーンズ・ブーツ・アライアンスによる
同業ライト・エイド買収案に難色を示した。関係者によると、これを受けてCVSは思い切った措置に出るしかないと
判断した。この買収案が頓挫したことで、競争激化に対する解決策は従来とは違う経路に求めなければならないとの
見方が強まった。
CVSとウォルグリーンズは、化粧品や日用品といった小売り販売が総売上高に占める割合が低下し、
医療分野頼みの様相をますます強めている。両社とも近年は薬剤給付・医療事業が伸びている。
CVSの場合、小売り販売が総売上高に占める割合は2016年に46%となり、13年の52%から低下した。
ウォルグリーンズ(米国内の売上高)もこれが37%から33%に低下した。
CVSは昨年、調剤部門の売上高が1200億ドル、小売り部門は810億ドルだった(両部門の売上高は235億ドル
重複している)。小売り部門の正味の売上高のうち、処方薬売上高がおよそ約75%を占めた。
アナリストらは機会があるごとにCVSとウォルグリーンズの幹部に質問を浴びせ、アマゾンの脅威に
どう立ち向かうつもりなのか問いただした。アマゾンが高級スーパーマーケットチェーンのホールフーズ・マーケットを
買収してからは、特にその傾向が強まった。
ウォルグリーンズのステファノ・ペッシーナ最高経営責任者(CEO)は6月、アマゾンが調剤戦略担当者を
採用したことについて聞かれると、アマゾンが調剤業界に参入する可能性は低いと答えていた。
CVSのラリー・メーロCEOはその数カ月後、調剤業界は「新規参入者の挑戦を受けて立つ」と語っていた。
同業界に参入するハードルとして、医薬品のメールオーダーを好まない消費者が大半を占めること、
規制上の問題、医師・薬剤師・保険会社が複雑に絡み合っていることを挙げた。
アマゾンのIR(投資家向け広報)責任者、デーブ・フィルデス氏は26日、同社が医療分野にどのような関心を
抱いているか質問を受けると、主に法人向け通販サイト「アマゾン・ビジネス」を通じた病院、研究所、
政府機関へのサービス提供や、同社のクラウドサービス事業を通じた医療業界との交流に注力していると述べた。
リーリンク・パートナーズは最近の投資家向けリポートで、アマゾンが参入すれば、CVSやウォルグリーンズと
いった調剤薬局チェーンに直ちに影響が及ぶと指摘。実店舗の調剤薬局は客数が減少すれば処方薬売上高も
落ち込むため、特に打撃が大きいだろうとしている。