サウジ皇太子、王位継承に向け抵抗勢力排除か
「これまで経験してきた状況とは全く別」との声も
2017 年 9 月 15 日 16:55 JST THE WALL STREET JOURNAL By Margherita Stancati and Summer Said
活動家などによればサウジ当局がここ1週間で身柄を拘束した人数は30人を上回り、その約半分は聖職者だ。
サウジ政府は過去にも取り締まりを実施してきたが、今回は対象となる範囲を広げ、監視もこれまで以上に強化。著名人による
ソーシャルメディア(SNS)への投稿などにも目を光らせている。拘束された人物が訴追されたかどうかは明らかになっていない。
サウジから米国へ亡命した政治コメンテーターのジャマル・カショギ氏は、「サウジの人々がこれまで経験してきた状況とは全く
別のものだ」と述べ、「故郷での生活は息苦しくなりつつあり、私も自らの身に危険を感じ始めていた」と続けた。
サウジ政府関係者は今回の取り締まりについてコメントはしなかった。
サウジ王室に近い人物などによれば、複数の高位の王子たちもサウジ国外へ出ることを制限されている。その中には
サルマン国王の兄弟の1人も含まれているという。王子たちにはコメントを求めることができなかった。
ムハンマド皇太子は6月、年上のいとこを飛び越えて王位継承1位の座についた。サルマン国王も息子のムハンマド皇太子に
後を継がせるため退位を計画しているとされるが、そのタイミングはまだ明らかになっていない。
サウジ政府のあるアドバイザーは「ムハンマド・ビン・サルマンは王になる準備を確実に進めている」とし、「反体派に邪魔されながら
権力を固めるのではなく、自身の即位に異を唱える声に対処することを狙っている」と話す。
サウジ政府はサルマン国王が退位する予定はないとしているものの、王室に近い複数の関係者によれば、その準備はすでに
進んでいる。一部では今月にも王位が継承されると予測されていたが、今は年末から来年初め頃が有力だと関係者は話す。
中東に駐在するある西側の外交官は、抵抗勢力の排除は「考えられていたほど早く王位は継承されないようだが、その時が
近づいている前兆だ」と述べる。

排除された人物に共通するもの
ここ数週間で身柄を拘束された人たちの多くは、2つの共通点を持っている。SNSで大きな影響力を持っていることと、隣国カタールと衝突を続けるサウジ政府の姿勢を支持していないことだ。またその多くは、エジプトのムスリム同胞団と密接な関係にもある。
サウジ政府は今週、「国外の組織」を支援する素行を見せ国益を損ねたとして、複数の人の身柄を拘束したと発表した。
これら人物の名前などは明らかになっていないが、事情に詳しい関係者によれば、「国外の機関から強い要請を受けて
サウジアラビアに情勢不安をもたらす壮大な計画を練るネットワークの人物たち」が対象になったという。
拘束された中には15人のサウジ人聖職者が含まれ、その多くは1990年代の反政府運動に参加した元原理主義者たちだと
活動家などは話す。また彼らはサウジ国内では取り締まりの対象となっているムスリム同胞団ともつながりをもっている。
拘束された人の中には、ツイッターで1400万人のフォロワーがいる聖職者サルマン・アル・オダー氏も含まれる。
サウジ政府による聖職者の身柄拘束には、国際テロ組織アルカイダなどの過激派グループも反応を示している。アルカイダは
13日、王室に抵抗するようサウジ国内の宗教組織に呼びかけた。過激派の活動を監視する団体「SITEインテリジェンス」によれば、
「予言者やその教友たちの子孫が、なぜサウジ王室とその愚かな暴君たちの奴隷とならなければいけないのだ」とアルカイダは
主張している。
また石油に依存するサウジ経済を転換させようとムハンマド皇太子が指揮を執る中、その考えに異論を唱えた人の一部が身柄を
拘束されている。皇太子は国営石油公社サウジアラムコの株式5%の上場計画をすすめており、企業価値は少なくとも2兆ドル
(約220兆円)と見込んでいるが、この額に疑問を呈した人気コメンテーターのエッサム・アル・ザミル氏は拘束された。
ムハンマド皇太子が急激に頭角を現したことで、サウジ王室内にも亀裂が発生。ムハンマド・ビン・ナエフ氏が後継候補から
外されたことに反対する声もある。6月に継承順位が変更されて以降、ナエフ氏の活動は制限されていると王室に近い関係者は
話すが、政府はこれを否定している。