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【WSJ社説】アルゼンチンが繰り返す左派政治

2019-10-30 21:27:04 | 南米

 【社説】アルゼンチンが繰り返す左派政治

 2019 年 10 月 29 日 14:41 JST  WSJ  By Editorial Board

 
 

 「民主主義はそれに値する政府を持つ」というのは言い古された言葉だ。だが、アルゼンチンが

27日に選んだ左派政府は選ばれるに値するのかどうか、私たちには分からない。有権者は現職の

マウリシオ・マクリ大統領を追い出したが、次の大統領にアルベルト・フェルナンデス元首相を、

副大統領にクリスティナ・フェルナンデス・デ・キルチネル氏を選んだということは、かつて経済を

崩壊させた正義党(ペロン党)を再び信頼するということだ。


 キルチネル氏は、4年間大統領だった夫(故人)に続き、2007~15年に大統領を務めた。

マクリ大統領が同氏から引き継いだのは混乱だった。インフレが猛威をふるい、キルチネル夫妻が

外国資産を没収するなか、法による支配は低下していた。夫妻は国内の敵を収監し、マスコミを

黙らせようとした。


 しかし、マクリ氏は経済を立て直せなかった。政治の調停役であろうとし、報復措置への関与を

拒んだ。為替相場を自由化し、資本規制を撤廃し、アルゼンチン国債の債務減額を拒否していた

国際債権団との長年にわたる係争を解決した。


 しかし、段階的な経済改革というマクリ氏の政策では根深い財政・構造問題を解決できなかった。

2015年には、政府歳出の対国内総生産(GDP)比率が、20世紀後半を通じた比率の2倍近くに拡大した。

だがマクリ氏は支出や硬直的な労働法と真剣に向き合わず、高い税金への圧力は残った。


 アルゼンチンが投資を呼び込むには通貨ペソの信頼回復が必要だった。しかし、マネタリーベースは

急拡大し、中央銀行は高金利でのペソてこ入れを強いられた。17年のインフレ率は約25%だった。


 官民ともに債務が増えるなか、物価水準の上昇が引き続き中間層の生活水準を圧迫した。

17~18年の夏に南半球が記録的干ばつに見舞われたことから、重要な農産物輸出が大打撃を受け、

追い打ちをかけた。

 

 18年5月、マクリ氏は国際通貨基金(IMF)から500億ドルの融資を取り付けたが、国内では

評判が悪く、外国勢を安心させることもなかった。ペソの価値は、同年9月には年初の半分に下落して

いた。今年8月の大統領選予備選でマクリ氏が敗れると、さらに下がった。国民がペソをドルに

換えるなか、インフレ率は跳ね上がった。マクリ氏は経済のドル化によってインフレを制御する

アドバイスがリスキーすぎるとして拒絶。今では権力を失い、アルゼンチンでは左派政治のリスクが

拡大している。


ペロン党支持者は主にマクリ氏の治政を批判して大統領選を戦ったが、彼らのトレードマークも

大差はない。支出・課税政策、煩わしい労働規制、金融緩和だ。フェルナンデス氏が十分な政治的

コントロールを維持できれば、同党にはキルチネル氏の左派より実際的な派閥がある。今回のもう

ひとつの違いは、フェルナンデス氏が債権者として当てにしているのがIMFではなく中国であることだ。

左派の同氏は反米だが、マレーシアなどの国が学んだように、中国が出す条件は甘いとは言いがたい。


 われわれはアルゼンチンの幸せを願っているが、「狂気とは同じことをしながら違う結果を期待

すること」と言った人はみな、一度は繁栄したこの国のことを考えていたのかもしれない。

 

 
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