南シナ海:中国譲歩せず 国内批判そらす狙い 日中首相会談
2016年7月16日 毎日新聞
【ウランバートル】南シナ海問題を巡る仲裁裁判所の判決でほぼ全面敗訴した中国が15日、安倍晋三首相との会談に踏み切った。
だが、 中国は判決の背後に日本や米国の存在があると不信感を募らせている。
日本側に直接、主権問題では一歩も譲歩しない立場を示すことが内政、外交の両面から得 策と判断したとみられる。
「今回の会談はハイレベルにおいて、日本側の(南シナ海を巡る)誤った行動を指摘する場になる」。中国外務省の陸慷(りくこう)報道
局長は同日、定例記 者会見でそう述べた。
中国指導部がこの会談を日本側の「誤った行動」をただす場と位置づけていることを示唆した。
判決が12日に出て以降、中国政府、メディアは連日、判決を非難して自国を正当化する政治宣伝を展開している。
特に、日本を「(判決を)背後で操作し た」などと名指しで批判。判決当日に在中国大使館の公使を呼び出して抗議した。
陸氏は15日の会見でも「日本側は判決に対し南シナ海の周辺国よりも感情的 に反応している」と不快感を表明した。
批判の矛先を日本に向け、指導部への不満をそらす思惑もうかがえる。
中国側が強い対応を取るのは、9月に中国・杭州市である主要20カ国・地域(G20)首脳会議が控えることも一因とみられている。
習近平国家主席が議長 国のトップとして臨む会議が南シナ海問題で台無しになることは許されない。
そこで、中国にとっては安倍首相との直接対話の場を設け、李克強首相を露払い役 とする狙いもあったと言えそうだ。
15日の会談では、李首相は日本との関係改善の必要性にも言及した。
日本との経済連携は習指導部にとっても必要であり、会談実現には南シナ海問題と他の実務的な関係の切り分けを図る意図もあると
みられる。
一方、日本はアジア欧州会議(ASEM)首脳会議を、「法の支配」の重要性を訴える好機と判断。
安倍首相は全体会合の演説で、北朝鮮の核・ミサイル開発、拉致問題と並び、南シナ海問題を解決すべきアジアの課題と訴えた。
ただ、日本政府内には日中の緊張感が急速に高まっていることへの懸念も強く、関係改善の場として李首相との会談を事前に働き
かけてきた。会談では両首相 がバングラデシュ・ダッカの人質テロ事件の日本人犠牲者と南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)
の中国派遣部隊隊員の犠牲にそれぞれ弔意を示し、双方 が率直な意見交換で理解が進んだと総括したという。
日本は当初、欧州連合(EU)のトゥスク欧州理事会常任議長(EU大統領)らとの会談などを通じ、
16日に出される議長声明に南シナ海問題を盛り込むよ う働きかける方針だったが、
李首相との会談実現を受け、明確には提起しなかった。
安倍首相は15日、中国と南シナ海で争うフィリピンの外相やベトナムの首 相とも相次いで会談。
日本としては中国をけん制しつつ、対話の継続も模索している。
「日本は干渉するな」 中国の李克強首相が首脳会談で要求
2016.7.15 22:34 産経新聞
中国の李克強首相は15日の安倍晋三首相との会談で、
南シナ海問題で「日本は当事国ではない。言動を慎み、騒ぎ立てたり干渉したりするな」と要求した。中国国営新華社通信が伝えた。
李氏は「南シナ海問題における中国の立場は国際法や(南シナ海問題の解決に向けた)『行動宣言』に完全に合致している」と主張。
沖縄県・尖閣諸島の周辺で 中国艦船の航行が相次いでいる東シナ海問題については「双方が意思疎通を図り、誤解や判断ミスを防
いでいくべきだ」と述べた。
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