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【WSJ寄稿】ウイルス禍で習氏に集まる世界の注目。 中国の指導者は武漢の危機が自身の存在を脅かすものだと捉えている

2020-02-10 16:08:38 | 習近平国家主席

寄稿】ウイルス禍で習氏に集まる世界の注目

中国の指導者は武漢の危機が自身の存在を脅かすものだと捉えている

2020 年 2 月 10 日 14:09 JST    WSJ By Michael Auslin

――筆者のマイケル・オースリン氏は米スタンフォード大学フーバー研究所のリサーチフェロー

1911年に武漢で起きた「武昌蜂起」は清国を滅ぼした革命の幕開けとなった

 

 1911年10月、中国の武漢で政治的ウイルス感染が起きた。同国の鉄道を外国が支配

していることに抗議する革命勢力が軍の駐屯地を急襲し、清(しん)国軍を容易に撃破、

清王朝の弱体化を印象付けた。「武昌蜂起」として知られるこの政治的ウイルスは、

急速に拡散した。3カ月後、この中国の革命は満州の支配者を倒し、中華民国誕生の

前触れとなった。今日の武漢は新型コロナウイルス流行の中心地となっており、

このウイルスが中華人民共和国に及ぼす影響は、まさに革命勢力と同様かもしれない。

 

 1911年に武漢でウイルス感染が起きるまで、清は400年にわたって中国を支配してきた。

何十年にもわたって内戦に悩まされ、日本との戦争に敗れ、植民地主義にむしばまれては

いたものの、清は依然強大であり打倒されることはないと思われていた。

しかし、何週間かのうちに、清朝の最後の皇帝となった溥儀は退位させられた。

現在、新型コロナウイルスが中国政府を崩壊させると予想している者はだれもいない。

しかし、ウイルスの拡散は、共産党の権力基盤の弱点を明らかにした。今回の事態は、

中国の国際的イメージを根本から変えるかもしれない。

 

 新型コロナウイルスが拡散するスピードは驚異的だった。追い詰められた中国政府は、

患者を隔離するため武漢を含む主要都市を封鎖した。同ウイルスによる中国本土での

死者数は、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)による死者数を既に上回っている。

今回の流行で当局がとった対応にはソーシャルメディア上で不満の声が上がり、世界の

マスコミの大見出しになっている。ウイルスの拡散を警告しようとして当局の脅しを

受けた医師の李文亮氏が死亡したことは、多くの人々の怒りを招いた。

彼らは、一党が支配する国家では市民の健康よりも社会秩序維持が重視されると考えて

おり、今回の事態がそれを証明したと受け止めている。

 

 こうした全ての事態が中国の指導者、習近平国家主席を脅かしている。2012年からの

彼の統治は、彼の能力を崇拝させることに重点を置いてきた。彼の野心的な経済・

外交政策は、世界における米国のリーダーシップに疑問を投げかけた。

一方で中国政府は、影響力強化に向けた執拗(しつよう)な取り組みを行い、世界で

同国のマイナスイメージを払拭(ふっしょく)しようとしてきた。

 

 習氏は、まさに中国社会の安定が脅かされていると警告している。これは、武漢での

状況が新たな革命の要因になり得るという率直な認識を示している。彼は感染症に

打ち勝つことを最優先事項にした。彼は何週間にもわたって米疾病対策センター(CDC)

からの支援の申し出を無視してきたが、とうとう折れた。

 

 彼はまた、5000万人の人々の移動制限を命じた。これらは、習氏がこの危機を自身の

存在を脅かすものだと捉えている明確なサインだ。しかし、政府は中国市民の監視も

強化しており、マスクをしていない人がいないかや、人々が民家に集まっていないか

などを監視しているほか、インターネット上の反政府的な投稿の取り締まりを行っている。

加えて、不思議なことに習氏は最近メディアから姿を消しており、公の場では李克強

首相が責任を取らされる格好になっている。

 

 鄧小平氏の指導体制の下で1978年以降に実施された「改革開放」(国内体制の改革

および対外開放政策)とは対照的に、習氏の下での中国は今回の感染症の拡大以前から、

抑圧的・秘密主義的・、排外主義的な傾向を強めていた。中国はその富にもかかわらず、

国際的にはほとんど信頼されていない。多くの諸国はもはや、中国の興隆を管理可能な

問題とはとらえず、地域と国際的な秩序にとって主要な脅威とみている。

 

 科学は最終的に新型コロナウイルスを打ち負かすだろう。感染症は、世界の中国に

対する考え方を変えさせるものとして極めて重要なものだ。中国の国内的にみると、

感染症は、中国共産党の統治能力への失望感とともに、当局者の(危機対応の)

準備不足や情報公開の不足に対する怒りをもたらした。海外においては、中国での生活、

学業、ビジネス上の安全確保に対する不安を引き起こした。今回の感染症の最終的な

拡散の度合い次第では、中国がイメージを回復するには何年も要するかもしれない。

 

 中国の経済と社会の真の姿が明白になるにつれ、膨れ上がった習氏の評価が実態に

基づくものかどうかの検証が行われようとしている。新型コロナウイルスの悲劇とは、

中国の強さと弱さを明確に評価する上で必要なショックだったかもしれない。

しかし、もし検証が行われなかった場合、さらに恐ろしい展開が待っているはずだ。

新たな武漢革命が起きる可能性も否定できない。

 


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