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【WSJ社説】南北首脳会談の高揚感に惑わされるな

2018-04-30 09:49:48 | 朝鮮半島有事・非核・南北朝鮮

【社説】南北首脳会談の高揚感に惑わされるな

 北朝鮮と韓国の指導者は27日、板門店で会談し、新たな平和の時代の幕開けを宣言した。

トランプ米大統領は「そこでは今、こうしているあいだにも、多くの素晴らしいことが起きている」と述べた。

しかし、それが真実だとすれば、それは舞台裏で起きているに違いない。表立った外交交渉では大きな前進が何1つなかったからだ。


 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領はハグや乾杯をしながら、

両国が「朝鮮半島の非核化」を目指す共同宣言に署名した。しかし、重要な問題は正恩氏が非核化をどう考えているかである。

北朝鮮が言う朝鮮半島の非核化提案は、譲歩とは程遠く、核開発プログラムを廃棄せよという要求に抵抗するときに北朝鮮が

使ってきた常とう手段である。米国が核保有国であり続ける限り、自分たちも放棄しないというのが北朝鮮の言い分である。


 首脳会談後に出された共同宣言には具体的な文言がない。文大統領には非核化に向けた意欲をより具体的に示すように正恩氏に

促す機会があった。国際査察団による北朝鮮の核関連施設の視察を許可するといった具体的な第1歩を要請することもできただろう。

文大統領がそうした働きかけをしたという証拠はない。


 それどころか文大統領は正恩氏の言葉を額面取りに受け止め、正恩氏が誠実であると保証してしまったようだ。何度も合意を

破棄されてきた過去を踏まえると、理解し難い対応である。韓国政府は北朝鮮の巧言だと知りながら、その意味を世界に向けて

誇大宣伝することを選んだのだ。


 年内に朝鮮戦争を正式に終結させる目標を含めるため、文大統領が首脳会談のテーマを広げたことも問題だ。正恩氏はもはや

韓国からの米軍撤退を要求していないが、米韓同盟の弱体化、在韓米軍の削減といったその他の要求をする余地はまだ多く

残されている。独裁者からも平和は買うことができる。問題はそれにどれだけの対価を支払うかだ。


 今回の首脳会談には、2000年と2007年に行われた過去2回の南北首脳会談の二の舞になる恐れがある。北朝鮮に平和と兄弟愛を

約束する共同宣言に署名させるために、韓国は最大限の努力をした。

その2回の首脳会談後も北朝鮮は核開発プログラムと軍事的挑発を再開させた。

2002年には北朝鮮軍が韓国の哨戒艇を砲撃、6人の兵士が死亡した。

2010年には北朝鮮が別の哨戒艦と延坪島を砲撃する事件があり、韓国側に合わせて50人もの犠牲者が出た。


 制裁措置の効果や中国からの圧力もあり、正恩氏の考え方に大きな変化があったのではと期待する向きもある。

しかし、正恩氏は祖父や父以上に強硬姿勢を取り、核兵器開発を北朝鮮の神聖な義務としてきた。

5年前には1953年の朝鮮戦争休戦協定が無効だと宣言した。韓国の情報機関は2010年の攻撃を指揮したのも正恩氏だと考えている。


 ではなぜ、文大統領は米国が最大限の圧力をかけている北朝鮮に救済の手を差し伸べたのか。親北左派の盧武鉉(ノ・ムヒョン)

元大統領の秘書室長だった文氏は、盧氏と同様、米国と北朝鮮の間の「調整役」を務めたいと考えている。文大統領の秘書室長、

任鍾晳(イム・ジョンソク)氏は自叙伝によると、北朝鮮イデオロギーの信奉者で、2005年まで北朝鮮政権が保有する知的財産の

使用料をその代理人として韓国で徴収していたという。


 文大統領は北朝鮮の非核化よりも、支援や資金を利用して異なる体制を維持したまま南北両国を統一させることを重視して

いるのかもしれない。

文大統領はその目的のために、トランプ氏をクリントン元大統領、ジョージ・W・ブッシュ元大統領と同じ失敗に引き込もうとする

可能性がある。2人の元大統領は実現しなかった非核化の約束と引き換えに北朝鮮に見返りを与えてしまった。


 正恩氏との首脳会談に向けて動いているトランプ氏は、この独裁者が、完全かつ検証可能で不可逆的な非核化に真剣に

取り組んでいなければ、交渉の席を立つと述べた。これこそ正しい姿勢だ。

しかしトランプ氏は、南北首脳会談の高揚感に便乗することで、そうした平和を手にすることへの期待感を高めてしまっている。

数十年にわたって裏切られてきた米国の方針として望まれるのは、不信感を持ちながら検証していくことである。