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ゆうちょ銀、預入限度額引き上げでトップ辞任が不可避になる事情

2018-12-27 08:16:21 | 産業・企業情報

ゆうちょ銀、預入限度額引き上げでトップ辞任が不可避になる事情

2018.12.27

 ゆうちょ銀行の預入限度額引き上げ問題を巡って、池田憲人社長(71歳)の辞任が不可避の情勢に

なってきた。経営を監督する金融庁は、すでに後任の人選作業に入っており調整を急ぐとみられるが、

意向に沿う人材を再び送り込めるかは不透明な状況にある。


 横浜銀行出身の池田氏は、2016年4月に東日本大震災事業者再生支援機構から、ゆうちょ銀の社長に就任。

金融庁の後押しを受けるかたちで、それまでの地域銀行との対立路線から協調路線へとかじを切り、

地銀と共同で地域活性化ファンドを設立するなど「民業補完」に心血を注いできた。


 潮目が変わったのは昨年10月。3年ごとに実施する郵政民営化の「総合的検証」が進む中で、

与党・自民党が衆院選の政策集に「限度額のさらなる見直し」を検討事項として盛り込んだのだ。


 これを好機と捉えたゆうちょ銀の親会社、日本郵政は現行1300万円の預入限度額の撤廃を政府に強力に

働きかけ始めた。


 2019年に統一地方選や参議院選を控える中で、有利に働くとみた議員連盟(郵活連)も同調することで

撤廃論が一気に高まり、政府の郵政民営化委員会は早々に撤廃で意見をまとめようと動いた。

 

これに対して、地銀をはじめ銀行業界は猛反発。政府が過半を出資する日本郵政の傘下銀行として

「暗黙の保証がある中で、限度額撤廃による肥大化はまかりならん」「協調と言いながらここにきて

はしごを外すのか」と憤り、ゆうちょ銀と再び火花を散らす関係に戻ってしまった。


 その後、撤廃は見送りになり、限度額の引き上げへと焦点が移っていったものの、地銀などの経営が

悪化した場合は、ゆうちょ銀への資金シフトが起きかねないとして、銀行業界の反発は全く収まる気配が

なかった。

 

池田社長と金融庁が“完敗”の深い霧

 そうした経緯の中で12月26日、政府の民営化委は預入限度額を、現状の2倍となる2600万円に

引き上げる意見書をまとめ、安倍晋三首相に提出した。当初から限度額撤廃という目一杯高い要求を掲げ、

最終的に限度額を大幅引き上げられれば御の字という算段だった日本郵政にとっては、満額回答に近い

内容だった。


「ゆうちょ銀行の持続的成長には、地域金融機関との協働・提携関係の構築、信頼関係の醸成が不可欠だ」


 一方で、事あるごとにそう説いて回ってきた池田氏と後ろ盾となってきた金融庁にとっては、民営化委に

協調路線を半ば否定され、政治家とそれに寄り添う総務省(旧郵政省)、日本郵政に“完全敗北”した

格好になる。


 そもそもゆうちょ銀は、国内最大となる180兆円もの預金量を誇りながら、50兆円近い資金を日銀の

当座預金にブタ積みし、マイナス金利の一部適用で損失を出している。


 そうした現状にもかかわらず、限度額の引き上げというバランスシートに拡大余地を与える施策が、

本当に必要なのかどうか。ゆうちょ銀内部からも噴出するそうした素朴な疑問に、説得力のある答えを

見つけられないまま、民営化委は「利用者の利便性向上のため」(民営化委の岩田一政委員長)という

理由で引き上げを押し切った。

 

 選挙の獲得票数を最優先の“経営指標”にさせられた巨大金融機関は、ときに聞こえる政治家たちの声に

導かれるようにして、今後も民営化という深い霧の中を彷徨い続けることになりそうだ。

https://diamond.jp/articles/-/189720


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