ダライ・ラマ14世が講演 抑圧政策「役に立たない」認識広がる

チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世(83)が20日、超党派の「日本チベット国会議員連盟」
(会長・下村博文元文部科学相)が国会内で開いた会合で講演し、中国のチベット抑圧政策に関し
「中国政府の方で、そのような方針がまったく役に立たないと認識されはじめている時代に入っている」
と述べた。
ダライ・ラマ14世は「中国共産党はいろんな方法でチベット人を抑圧、殺戮(さつりく)、洗脳し、
お金も使ってチベット人の精神を抹殺しようと努力をしてきた。しかし、私たちチベット人の精神は
抑圧されればされるほど、ますます高まってきた」と強調した。
一方、中国の枠内でチベットの高度な自治を求める中道路線については中国知識人の間で賛同が
広がっているとし、「中国共産党幹部の態度は正しくないと考える漢族の数がますます増えている」と
指摘した。
チベット議連は、チベットの人権状況改善に向けた政府の取り組みを求める決議を採択した。
決議は「チベット人が真にチベット人らしく生きる権利、チベット仏教信仰の自由も含めて、
基本的人権の回復を強く願い、その非暴力の訴えに全面的かつ継続的な共感と連帯の意を表明する」と
明記した。
ダライ・ラマの国会内での講演は平成28年11月以来2年ぶり4回目。
https://www.sankei.com/politics/news/181120/plt1811200027-n1.html
日中融和の中…来日した「ダライ・ラマ」が講演 日本人へのメッセージと中国の今後

- ダライ・ラマ14世の民主主義と平和への思い
- 中国政府への懸念と期待の中、ダライ・ラマ14世の「4つの使命」
- 日中友好のウラで…“法王”から日本へのメッセージ
日本チベット議連がダライ・ラマ法王の講演会を開催
講演に先立って議員連盟会長の下村博文元文科相は「今、世界が混乱とさらなる分裂等々、調和とは
程遠い情勢の中で、これからますます、ダライ・ラマ法王の世界における指導者としての役割は大きな
ものがあるのではないかと、世界中の心ある方々が望んでいる」と述べ、ダライ・ラマ14世の訪日への
歓迎と感謝の意を示した。
「私は民主主義を信じている」

そして、自らの歩みについて「非常に幼いころから、民主主義というものに対する、深い尊敬の気持ちを
持っていた」と述べたうえで、これまで民主化に取り組んできたと強調、2011年には政治的指導者としての
立場を、民主主義で選ばれた指導者に完全に譲渡したとして、「私は民主主義を信じている」と訴えた。
その上で「中国がチベット地域に進攻してきて以来、約70年の月日がたっている。中国共産党の強硬派は、
色々な方法を使って、私たちチベット人を抑圧し、そして殺戮し、洗脳もお金も使い、チベット人
の精神を抹殺しようとしてきた」と指摘し、「それでも私たちチベット人の精神は、抑圧されればされるほど、
ますます高まっていくという事を見せてきた」と振り返った。
「私達はチベットの独立は求めていない」
また、ダライ・ラマ14世は、中国の強硬派によるチベット族に対しての、分離・独立を図るのでは
ないかと疑い、見下すような態度に強い懸念を示しつつも、次のように中国国内での穏健派の台頭に
期待を示した。
「最近、中国政府の方では、強硬的な政府の方針というものが全く役に立たないというようなことが、
認識されてくるような時代に入っており、私たちは現実に見合ったアプローチというものをしていく
ことが必要であるということが、広く認識されるようになってきています」
ダライ・ラマ14世が語った4つの使命と日本への期待
「より慈悲深い、より平和な世界を構築したいということが第一の使命」
「異なる宗教間の調和をはかることが第二の使命」
「チベット文化・仏教を保全し、地球全体の環境問題を改善していくのが第三の使命」
「古代インドにおける知恵や知識を今の時代において復興させたいのが第四の使命」
その上でダライ・ラマ14世は日本について、チベット仏教と同じ源流の「大乗仏教」の伝統を引き

日中友好との狭間で難しいかじ取りも・・・
日本チベット国会議員連盟は、この会合で、「チベット人への人権弾圧、独自の文化、教育、
言語への弾圧、民族のアイデンティティーの否定、宗教的自由の否定がますます酷くなっていることに
深刻な懸念を抱いている」「チベット仏教信仰の自由も含めて、基本的人権の回復を強く願い、
その非暴力の訴えに全面的かつ継続的な共感と連帯の意を表す」「政治的、宗教的信条により
収監されている多くのチベット人の釈放とこれらチベット人の人権団体へのアクセスを強く求める」と
訴えた決議文を採択した。
10月に安倍首相が日本の総理大臣として7年ぶりに中国を公式訪問し、「競争から協調へ」と訴え、
日中関係が改善しつつある中ではあるが、両国は様々な問題を抱えている。
特に民主主義をめぐる問題では両国に明確な違いがあり、日本としても人権問題には毅然とした姿勢で
取り組む必要があるだろう。それが本当の良き隣人として両国の関係を、共通の価値のもとで真に
発展させることにつながるのは言うまでもない。
安倍首相も李克強首相との首脳会談で「中国国内の人権状況について、日本を含む国際社会が注視している」
と伝えたという。
会合の最後に、ダライ・ラマ14世は次のように述べていた。
「皆様方のお立場としては、中国の方に真っ向から何か批判的なことをいうようなことは難しい状況に
あるかと思われますけれども、昔1954年、55年の段階におきまして、私が北京を訪問させていただき
ました時に、毛沢東主席にお目にかかったことがありました。
すると、毛沢東主席は私に『チベットの国旗というものありますか?』とお尋ねになられました。
そこで私が『あります』とお答えしたら、毛沢東主席が『中国の紅い国旗とともに、ぜひチベットの
国旗を維持して掲げるべきである』とおっしゃってくれたわけです。
ですから私自身は、毛沢東主席から直に、チベット国旗を掲げるという許可を頂いているわけです」