独外相、中国の「一帯一路」を批判
欧州の政治家が中国の「一帯一路構想」について、単に批判するだけではなく、その価値観、世界観と一致しないと
明確に指摘したのはガブリエル外相が初めてだ。
ドイツでメルケル首相が率いる与党「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)と第2党の社会民主党(SPD)の間で
新たな大連立発足が進められているが、ガブリエル外相は新政権下では外相を務めないので、ミュンヘンのMSCでの
演説が公式の演説の最後となった。
その最後の演説で欧州に覇権を伸ばす中国の外交攻勢に警告を発したのだ。中国の脅威に対して無関心の欧州を
目覚めさせる演説となったことは間違いない。なお、MSCには中国から共産党幹部が参加していた。
ガブリエル外相の演説内容を少し紹介する。
「中国はロシアと並び欧州の統合を崩そうと腐心し、欧州の個々の国の指導者を勧誘している。中国は欧米の価値観とは
異なる一帯一路プロジェクトのため5兆ドル相当のインフラ資金を投資している」
「中国はグローバルなリーダーシップを発揮し、民族主義、保護主義の復活を刺激し、世界の秩序に大きな影響力を
行使している」
「新シルクロードはマルコポーロの感傷的な思いではなく、中国の国益に奉仕する包括的なシステム開発に
寄与するものだ。もはや、単なる経済的エリアの問題ではない。欧米の価値体系、社会モデルと対抗する
包括的システムを構築してきている。そのシステムは自由、民主主義、人権を土台とはしていない」
「現代で中国だけが世界的、地政学的戦略を有している。一方、欧米諸国はそれに対抗できる新しいグローバルな
秩序構築のアイデアを提示していない」
「欧州連合(EU)は東欧から中央アジア、そしてアフリカを包摂するインフラ開発を欧州の資金と基準を投入して
独自のイ二シャアティブをスタートさせるべきだ。アフリカは問題であるより、チャンスを提供する。
例えば、中国は久しくアフリカに投入している。中国にはアフリカから難民が殺到する恐れは全くない」
欧州では中国の覇権攻勢について、2通りの対応が見られる。
<批判的、懐疑的なグループ>
ジャン=クロード・ユンケルユンカー欧州委員会委員長は昨年9月、「外国の国営企業が欧州の湾岸や
エネルギー・インフラ、国防関連施設や先端技術の企業を買収することを阻止する法的枠組みを施行すべきだ」と
提案している。
<積極的な支持グループ>
ハンガリーとギリシャの2カ国がまず挙げられる。ハンガリーは一帯一路に加盟した最初のEU加盟国だ。
オルバン首相は、「中欧諸国は一帯一路の理想的な拠点だ」と評価している。
ギリシャはハンガリーと同様、一帯一路に深く関与。ギリシャ政府は2016年4月、同国最大の湾岸都市ピレウスの
コンテナ権益を中国の国営海運会社コスコ(中国遠洋運輸公司)に売却している。
ドイツのシンクタンク、メルカートア中国問題研究所(Mercator Institute for China Studies )とベルリンの
グローバル・パブリック政策研究所(GPPi)は先月5日、欧州での中国の影響に関する最新報告書を発表したが、
その中で「欧州でのロシアの影響はフェイクニュース止まりだが、中国の場合、急速に発展する国民経済を背景に
欧州政治の意思決定機関に直接食い込んできた」と指摘し、「中国は欧州の戸を叩くだけではなく、既に入り、
EUの政策決定を操作してきた」と警告を発したばかりだ(「中国の覇権が欧州まで及んできた」)
ガブリエル外相の公式の場の最後の演説は、欧州の未来への懸念と共に、中国の挑戦に対する欧州の奮起を求める
アピールでもあったわけだ。
冷戦と比較して、はるかに複雑な世界は、進歩した民主主義と独裁主義の体系的な競争だと述べています。
欧州・米国・その他の民主国家が1つにならなければならないことを強く主張しています。
また、北朝鮮の核の脅威についても言及してます。