週に2,3回通っている官庁の支局長さん(60)から中学生の時使っていたBCLラジオの修理を依頼された。
私が無線やおもちゃドクターをやっていることをご存知で自宅から持参されたラジオ。もうすぐ退職なので昔やっていた短波のBCLを復活したいとおっしゃる。
【現状】
40年以上経過している。
スイッチを入れ、つまみを動かすと何となく音が出ている。ボリュームはガリガリ、バンド切り替えスイッチは効かない状況。
ロッドアンテナも固くて伸ばすのに苦労する。
全体に汚れがひどく、触ると少しベタベタする。
【修理1】ぐるぐる回す、カチカチ切り替え
経年劣化で接点不良の症状が激しい。
とりあえず音量ボリューム、高音、低音のボリューム、バンド切り替えスイッチ、短波の切り替えスイッチなどを30回~50回往復させて回したり切り替えたりする。
効果があり、音が出た。FM,SW,MWのバンド切り替えもできるようになった。短波のスイッチはだめ、音量ボリュームもガリガリで音の出る位置と出ない位置がある。
【修理2】分解
裏蓋に4本、電池ケース内に1本、ジャイロアンテナの後ろに1本のビスがあるのでこれを外す。とても長いネジだ。
基板側にはボリュームやスイッチが見えない。
前面はどうやって外れるのかなと思ったら裏蓋と共締めになっていてパネル面も外れそうだ。
全ての回転つまみ(ボリューム、高音、低音、バンド切り替え、短波切り替え、ゲイン)をブライヤーで引っ張って抜き取る。VUメータ下のシーソースイッチ、VFO下のスロースイッチも引っ張って抜けた。
VFOはマイナスドライバーで少しずつ抜き取る。左上のパワースイッチ等の3つは基板直付けなのでそのまま。
これで前面が外れるが、スピーカーのコードなどが邪魔をして半開き程度。これでも十分かと思う。
【修理3】内部クリーニングと接点洗浄
ホコリが目立つので裏面・前面ともにエアダスターのスプレーを吹く。飛んでいかないものは、歯ブラシや綿棒で取り除く。
ボリュームや切り替えスイッチ等に「接点洗浄剤」(サンハヤトRC-S201)を少しずつスプレーする。ボリュームは下ケースに小さい穴があるので、そこに細チューブで入れる。切り替えスイッチは接点部分が見えないので難しい。ここかなと思う部分に綿棒で貼付。「接点復活剤」は使わない。
基板のある裏蓋面から基板を外したいがビスは1個だけ。パッチンはめ込みと何かの固定のよう。諦める。
【修理4】外部クリーニング
ビス6本を戻して組み立てる。
ロッドアンテナには「シリコンスプレー」を接続部分に少しずつスプレーする。固くて伸ばせなかったが、かなりスムーズに伸縮できるようになった。
筐体の汚れは「シンプルグリーン」を吹き付け、古い歯ブラシで磨いてから布で拭き取る作業を繰り返す。この洗剤はパソコンや無線機などの汚れ、タバコのヤニ等がとても良く落ちる。
電池ケースのスポンジは劣化してボロボロなのでハイカーボンヘラで掻き落とす。
細かい部分は綿棒に洗剤をつけて洗浄。
【メンテナンス後】
スイッチやボリュームはスムーズに回ったり切り替えができるようになった。
パワーオンすると音が出た。MW,FMは地元の放送局、短波はラジオNIKKEI、6.055MHz(第1放送)、6.115MHz(第2放送)にチューニング。どれも受信できた。
ボリュームはガリがなくなったが、短波切り替えスイッチは微妙な接点不良が残った。
ベタベタしていた筐体もスベスベの触感になり艶が少し戻ったように思う。
支局長さんが喜んでくださったのは言うまでもありません。
左から「エアダスター」「シンプルグリーン」「シリコーンスプレー」「接点洗浄剤」